筆者の自宅も50時間停電 「マイカー避難」で感じた4つの重要ポイント

突然の停電でクーラーも止まり信号機も消える、マイカー避難で気をつけたいポイントは(写真:ロイター/アフロ)

 猛烈な勢いで関東を直撃した台風15号。

 風雨による被害もさることながら、その後に襲いかかった停電、断水は、多くの人々を苦しめることになりました。

 じつは、千葉県大網白里市の戸建てで暮らしている私もその一人です。

 9日午前4時頃、台風が吹き荒れる中、突然電気がストップし、その後、11日の午前6時過ぎまで、約50時間にわたる停電と断水を経験しました。

千葉テレビの画面より(2019年9月11日、台風から2日後、20時の状況)
千葉テレビの画面より(2019年9月11日、台風から2日後、20時の状況)

 それでも、50時間ならまだましなほうです。

 同じ市内では、今も約5100軒のお宅で停電が続いています(13日1時現在)。

 この原稿を書いている時点で停電はすでに90時間を超えており、猛暑の中、多くの方が体力的にも、精神的にも限界を迎えておられるのではないかと大変心配しています。

■猛暑の中、クーラーが効かない過酷さに耐えられず、マイカーに「避難」

 それにしても、日中の気温が35度に迫る中、クーラーがまったく効かないというのは「辛い」を通り越して「危険」です。

 台風で飛び散ったものを片付けているだけでも汗が吹き出しクラクラしてくるのに、作業の後、身体を冷やすことができず、冷たい水を飲むこともできないのです。

 結局、私は猛暑となった9日の日中、同居している私の母(84)と室内犬のミニチュアダックス2匹と共に、とりあえずマイカーの中に「避難」しました。

 そして、エンジンをかけクーラーを効かせて、遊牧民のように近場を走ったり、日の当たらない駐車場に車を停めて、アイドリングさせたまま休憩したりするなど、夫が夜に帰宅するまでずっと車中で過ごしました。

 その後はなんとか自宅の寝室で睡眠をとるつもりでしたが、いくら水を浴びても、団扇であおいでみても熱帯夜には勝てず、結局、ほとんど眠れないまま、汗だくで朝を迎えました。

 愛犬たちも、舌を出しながらハアハアと荒い息をしていたのでとても心配でしたが、停電が解消する気配は一向にありません。

■停電していない地区の情報をつかみ、車で脱出

 そこで、『このままでは熱中症になってしまうかもしれない!』という危険を感じた私は、停電エリアからの脱出を決意しました。

 浦安市に住む娘からの情報によると、同じ千葉県でもあちらはかろうじて停電のエリアに入っていないことを知ったからです。

 また、自宅にいると電話もインターネットも思うようにつながらないため、このままでは仕事の連絡も取れず、最低限の情報すら入手できません。

 幸い、上りの高速道路の通行止めが朝になって解除されたとのこと。

 そこで、私はすぐに必要な荷物を車に積み込み、約50キロ離れた浦安市内の娘の家へと避難したのです。

 おかげさまで愛犬たちは元気を取り戻し、高齢の母も熱中症にはならず、体調を崩すことなく過ごすことができました。

我が家から大網駅に向かう途中の道路わきの電線には、家屋から飛んできた大きな屋根の残骸がぶら下がっていました(筆者撮影)
我が家から大網駅に向かう途中の道路わきの電線には、家屋から飛んできた大きな屋根の残骸がぶら下がっていました(筆者撮影)

■停電・猛暑の中のマイカーはもっとも優れた「避難場所」だった

 今回、台風&停電の被害に遭った私たち家族にとって、マイカーは間違いなくもっとも身近で優れた「避難場所」となりました。

 そして、大切な「移動手段」として、熱中症から家族とペットを守ってくれました。

 そこで、大規模停電時に「マイカー避難」をするにあたって、私自身が感じたこと、皆さんにぜひお伝えしたいことをピックアップしておきたいと思います。

1) 停電時は信号もストップ。交差点は要注意

 大規模停電が起こると、信号機も消えてしまいます。

 一帯の交差点では同じことが起こっているので、警察官が交通整理をしてくれることもありません。

 また、今回は台風による激しい風の影響を受けて、信号機自体が曲がってしまったり、全く別の方を向いてしまったりという箇所がいくつもありました。

 下の写真を見てください。灯りが消えているだけでなく、手前の信号が完全に裏返ってしまっています。

 非常に危険な状態です。

台風の影響で裏返ってしまった信号機(筆者撮影)
台風の影響で裏返ってしまった信号機(筆者撮影)

 実際に、信号が消えている交差点で交通事故が発生している現場に何度も遭遇しました。

 おそらく、双方とも「自分の方が優先だ」と思い込んで、停止や徐行をせずに進んだ結果なのでしょう。

 とにかく、信号の消えた交差点に差し掛かったら、必ず停止して左右を確認し、互いにアイコンタクトをしながら、譲り合いの精神で慎重に進んでください

 また、災害直後はいつもより緊急車両の通行も多くなります。

 音が聞こえたらすぐに止まることを心がけましょう。

2) 車中にスマホ・携帯充電用の「シガーソケット電源」を完備しておく

 9月11日の朝、我が家では50時間ぶりに停電が解消され、ようやく落ち着いてテレビのニュースを目にすることができました。

 そこに映っていたのは、各地に残る台風の爪痕の映像はもちろん、スマホや携帯電話の電源が切れ、充電できる場所を求めて車で右往左往する人たちの姿でした。

 それを見て、私が不思議に思ったのは、

『なぜマイカーがあるのに、携帯の充電ができないの……?』

 ということです。

 車の車種によっても異なりますが、シガーライターの穴に電源用のソケットを差し込み、いつも使っているコードをつなげば、問題なく充電できるからです。

 私は運転中、常に充電ができるようUSB用のシガーソケットを装備しているので、今回のような長時間の停電に見舞われても、車のエンジンがかかる限り、バッテリーが空になる心配はまったくありませんでした。

私が車内に常備しているシガーソケット電源(筆者撮影)
私が車内に常備しているシガーソケット電源(筆者撮影)

 また、12Vの電源も取れるよう、もう何年も前から上の写真のようなシガーソケット電源も積んであります。

 これがあればパソコンやミニ冷蔵庫を動かすことだってできるのです。

 一人ひとりがマイカーの中にこの備えをしておけば、避難所などで長い順番待ちをしながら充電をする必要はなくなるはずです。

 電器店、ネット通販などで簡単に、安価で買えますので、まだ持っていない方はぜひ入手されることをお勧めします。

3) ガソリンを携行缶に備蓄しておく

 8年前、東日本大震災が発生したとき、私は被災地で取材をし、多くの方にお話を聞きました。

 その中で痛感したのは、「車が初期の避難生活にいかに役立ったか」ということと同時に、「車があっても、ガソリンがなければ何もできない」ということです。

 あのときには凍えるような寒さの中、車のヒーターが多くの命を守り、カーラジオから流れてくる放送が唯一の情報源だったと伺いました。

 今回もスマホに入れてあったデジタルラジオのアプリは全く使い物にはならず、結局、一番役に立ったのはカーラジオでした。

 しかし、ガソリンが枯渇すると、当然エンジンはかかりません。

「ガソリンが空になってエンジンがかからず、車を動かすことができなかった」

 東日本大震災の被災地では、こうした悔しい体験談を数多く耳にしました。

 被災地ではガソリンを入手することは極めて困難なのです。

我が家のすぐそばにあるガソリンスタンド。台風の影響で屋根が飛ばされ、現在は営業を停止しています(筆者撮影)
我が家のすぐそばにあるガソリンスタンド。台風の影響で屋根が飛ばされ、現在は営業を停止しています(筆者撮影)

 それ以来、私は20リットルの携行缶3本分、つまり計60リットルのガソリンを、2か所に分散して保管しています(ガソリンは40リットルまでなら届け出は必要ありません)。

 これさえあれば、たとえガソリンが空であっても、とりあえず親族の住む関西まではいっきに走ることができるからです。

 また、そこまで多くなくても、小さな単位で「ガソリンの缶詰」という商品も販売されていますので、ぜひ調べてみてください。

 台風15号の後も、ガソリンスタンドの前には長蛇の列ができていました。

 中には、何時間も並んだ挙句、目の前で品切れになってしまったという方も……。

 もちろん、ガソリンは危険物なので保管には細心の注意が必要ですが、たとえ20リットルだけでも備蓄してあれば、心の余裕が全く違うはずです(ガソリン専用の赤い携行缶は、ホームセンターなどで販売されています)。

4) 車のトランクには飲料水と保存食を

 台風から3日後の9月11日、私はようやく営業を再開した近所のスーパーを覗いてみたのですが、この通り、冷凍食品の棚は見事に空っぽでした。

台風から3日後、スーパーの冷凍食品棚は空っぽに(筆者撮影)
台風から3日後、スーパーの冷凍食品棚は空っぽに(筆者撮影)

 私はこうした事態に備えて、車のトランクにペットボトルの水と、アルファ化米(水を注ぐだけで食べられる)を家族の人数分入れています。

 こうした保存食は場所を取りませんし、とりあえず入れておけばいざというとき安心です。

 とにかくマイカーは、災害発生直後には大変貴重な“避難場所”になります。普段から備えておかれるとよいでしょう。

 ただし、車の中でじっとしていると、エコノミークラス症候群(静脈血栓からの肺動脈塞栓)が起こる可能性が高まると言われています。

 定期的に車の外へ出て、適度な運動を心がけることが大切です。

■マイカーを所有していない世帯の方々に最大限の配慮を

 ただ、心配なのはマイカーを持っていない世帯の方々です。

 昨今の高齢ドライバーによる事故の報道を見て免許を返納し、車を手放された方もおられるでしょう。

 しかし、そうした方々は、暑い夏や、寒い冬の時期に今回のような長期の停電に見舞われた場合、どうやって発災直後の厳しい時間をしのげばよいのでしょうか……。

 遠い避難所まで、車なしでどうやって移動すべきなのか?

 配水車まで歩いて行って、重い水をどうやって運ぶのか?

 マイカーを持つ人と持たざる人の間では、大げさかもしれませんが、災害時における「命の危険度」に大きな差が出かねないのです。

『自宅にマイカーを有しているか否か?』

 行政の方には、有事の際にこの情報をいち早くキャッチし、マイカーを所有していない世帯の方々にはこちらから訪ねて行ってでも優先的に救済の手を差し伸べるなど、具体的な対策が必要ではないでしょうか。

 台風15号による長時間の停電、断水を経験して、そのことを強く感じている次第です。