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【インタビュー前編】超技巧インストゥルメンタル・デュオ、ザ・レゾナンス・プロジェクトが日本デビュー

山崎智之音楽ライター
The Resonance Project / P-Vine Records

超技巧インストゥルメンタル・デュオ、ザ・レゾナンス・プロジェクトが2019年10月、アルバム『ザ・レゾナンス・プロジェクト』で日本デビューする。

日本人ギタリスト/ベーシストのYas Nomuraと中国人ドラマーのLang Zhaoという、米国ロサンゼルスに活動拠点を置く2人のミュージシャンが結成したこのバンド。プログレッシヴ・メタルからジャズ/フュージョン、壮大なオーケストレーションなどを融合させた唯一無二の音楽性は、新時代の扉を切り開くものだ。

自らの活動と並行してhydeやマテウス・アサトとの共演も行うYas、クラシック音楽の素養を持ち、ドラムスに関する著書もあるLangという2人の異才が“レゾナンス=共振”しあって生み出す音楽について、全2回のインタビューで語ってもらった。

まず前編では、ザ・レゾナンス・プロジェクトの音楽性の原点について訊いてみよう。

<最も愛するスタイル。/音楽に境界線を設けない。>

●ザ・レゾナンス・プロジェクトの音楽性をどのように説明しますか?

『The Resonance Project』ジャケット(P-Vine Records / 2019年10月16日発売)
『The Resonance Project』ジャケット(P-Vine Records / 2019年10月16日発売)

Yas:俺とLangの2人が愛する音楽のすべてを込めたバンドがザ・レゾナンス・プロジェクトなんだ。プログレッシヴ・ロックやジャズ、フュージョンにクラシック音楽のオーケストレーションを加えている。俺たちはさまざまな音楽を聴いているけど、その中で最も愛しているスタイルの集大成だよ。

Lang:俺はクラシック音楽も学んできて、オーケストレーションも担当しているけど、2人の目指す音楽は共通しているし、同じ音楽の血が流れている。俺たちは音楽に境界線を設けず、ジャンルを超えて、自分たちがやりたい音楽をやるんだ。

●『ザ・レゾナンス・プロジェクト』はフルレンス・アルバムとして発表されますが近年、ヒップホップやEDMではアルバム単位でなく、曲単位で発表していくことが増えています。2019年という時代にあえてアルバムを出したのは何故でしょうか?

Lang:アルバムというフォーマットに疑いを抱いたことはないよ。ザ・レゾナンス・プロジェクトとして作品を発表するなら、アルバムだと考えていた。

Yas:音楽を聴くときはシングル1曲だけを聴くのではなく、アルバムを通して聴くのが好きなんだ。アルバムの流れやコンセプトが好きなんだよ。

Lang:「ジ・アンセム」では他のアルバム収録曲のフレーズを取り入れたりして、最後に「ア・プログレッション・トゥ・インフィニティ」のフレーズも挿入されている。そういう構成は、アルバムだからこそ出来るんだ。アルバム『ザ・レゾナンス・プロジェクト』は全体がひとつの流れを持つように、曲順にもこだわった。このアルバムを聴く人は、最初から最後まで通して聴いて欲しいね。

●お二人の経歴を教えて下さい。

Lang:1989年、中国の北西部、砂漠の地域にある金昌生まれだ。10歳の頃に両親の地元の北東部の大連に引っ越して、2007年まで中国で育った。それからアメリカで勉強と仕事をすることになって、まずオハイオ州に引っ越したんだ。それから4年して、2011年にロサンゼルスに移った。音楽は4歳の頃にクラシック・ピアノを始めて、中学に入ってドリーム・シアターを聴いてロックを聴くようになった。それからチック・コリアやハービー・ハンコックなどのジャズ/フュージョンを聴くようになったんだ。

Yas:1992年、埼玉県富士見市生まれだ。14歳のときにギターを始めて、先生が1980年代のバンドを教えてくれたんだ。メタリカ、エクストリーム、ホワイトスネイク、デフ・レパードとかね。それで音楽を専門的に学ぶことにして、東京自由学院に進学することにした。それからアーチ・エネミーやチルドレン・オブ・ボドムなどのエクストリーム・メタルを聴くようになったけど、あるとき友達にドリーム・シアターの「エロトマニア」を聴かされて、何だこれは!って(笑)。それから1、2年のあいだ、ドリーム・シアターをコピーするようになった。「アナザー・デイ」「メトロポリス」「オクタヴァリウム」とかね。その後にジャズ/フュージョンも聴くようになった。パット・メセニー、スコット・ヘンダーソン、アラン・ホールズワース、マイケル・ランドウ...「リフレクション」を聴けば、ホールズワースの影響を聴き取れるんじゃないかな。2012年、19歳のときに渡米して、MI(ミュージシャンズ・インスティテュート)で1年9ヶ月学んだ。

●2人はどのようにして出会ったのですか?

Yas:MIに入ってすぐに知り合ったんだ。

Lang:ドリーム・シアターの『オクタヴァリウム』が2人とも好きで、意気投合したんだ。『ザ・レゾナンス・プロジェクト』を聴けば、影響があるのが判るよね。一種のトリビュートといえる部分もあるぐらいだ。

Yas Nomura / courtesy P-Vine Records
Yas Nomura / courtesy P-Vine Records

<チャートに入らなくても、最高の音楽はいくらでもある>

●“ザ・レゾナンス・プロジェクト”というバンド名はいつ、どのようにして考えたのですか?

Yas:バンド名はかなり悩んだね。幾つも候補があって、決まるまで半年かかった。ザ・レゾナンス・プロジェクトというのは俺たちのマネージャーの提案だったんだ。2人のバンドで、異なった個性がレゾナンス(=共振)しあうという意味でね。そしてもうひとつ、バンドとゲスト・ミュージシャンの共振も意味していた。

Lang:うん、ゲスト達はただやってきて何小節かプレイするのではなく、それぞれの個性をバンドの音楽性にインプットしてくれた。そうすることで、彼らのスタイルが俺たちと共鳴して、新しいサウンドが生まれたんだ。

●アルバムの4曲は2019年11月に来日公演を行うアーチ・エコーのギタリスト、アダム・ベントレイがミックスを担当していますが、彼とは長い付き合いなのですか?

Yas:アダムとはネットを介して知り合ったんだ。決して長い付き合いではないけど、Langと俺が以前やっていたバンド、スレイルキル(Thrailkill)のミックスもしてもらった。すごくヘヴィでタイトなサウンドを作ってくれたし、彼に頼んで本当に良かったね。

●「プレリュード」や「ジ・アンセム」など、クラシカルなオーケストレーションがフィーチュアされていますが、同時にシネマチックな要素も感じますね。映画音楽からインスピレーションを受けることはありますか?

Lang:もちろん!ハンス・ジマーやジョン・ウィリアムスからは多大なインスピレーションを受けてきたよ。彼らの音楽は映画をさらに盛り上げるし、 音楽作品として聴いても素晴らしい。彼らの曲を聴くと、いつか俺も映画音楽をやってみたくなるよ。

●現代ギター・ミュージックの状況について、どう考えますか?メインストリームのヒット・チャートにおいてギターの占める割合は決して高くありませんが、優れたギタリストはたくさん登場していますね。

Yas:確かに1970年代や1980年代みたいな、ギター音楽が溢れかえる時代に生まれたかったと思うこともあるけど、現代も良いギタリストはたくさんいるよ。ニューヨークのジャズ・シーンにはとてつもなくクレイジーなギタリストがいるし、西海岸にもマテウスのような凄いヤツがいる。チャートに入らなくても、最高のミュージシャンが演奏する最高の音楽はいくらでもあるよ。

Lang:うん、俺たちにとって大事なのは、チャートに入ることよりも、常に新鮮でスリルのある音楽をやることなんだ。ザ・レゾナンス・プロジェクトで活動することはすごくエキサイティングだよ。

後編記事ではアルバム『ザ・レゾナンス・プロジェクト』の実力派ゲスト・プレイヤー陣、そしてバンドの今後の展望などについて2人が語る。

Lang Zhao / courtesy P-Vine Records
Lang Zhao / courtesy P-Vine Records

●ザ・レゾナンス・プロジェクト

『ザ・レゾナンス・プロジェクト』

P-Vine Records PCD-24881

2019年10月16日(水)発売

日本レーベル公式サイト

http://p-vine.jp/news/20190828-120000-3

バンド公式Facebook

https://www.facebook.com/theresonanceprojectmusic/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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