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【インタビュー後編】超技巧デュオ、ザ・レゾナンス・プロジェクトがデビュー作で実力派プレイヤー達と合体

山崎智之音楽ライター
The Resonance Project / P-Vine Records

超技巧インストゥルメンタル・デュオ、ザ・レゾナンス・プロジェクトへのインタビュー後編。

前編記事に続いて、Yas Nomura(ギター、ベース)とLang Zhao(ドラムス、オーケストレーション)がアルバム『ザ・レゾナンス・プロジェクト』での実力派ゲスト・アーティスト陣との共演、そして今後の活動について語った。

<ゲスト達は友人。LAのシーンは広いようで案外狭いんだ>

●アルバムに参加したゲスト・ミュージシャン達について教えて下さい。マテウス・アサトは「ネオ・タンカ」でプレイしていますが、Yasさんは2019年5月、彼の日本公演にベーシストとして参加しましたね。

『The Resonance Project』ジャケット(P-Vine Records / 現在発売中)
『The Resonance Project』ジャケット(P-Vine Records / 現在発売中)

Yas:マテウスはMI出身で、親友なんだ。いつもつるんだり、ジャムをやっている。「ネオ・タンカ」のソロはマテウスの部屋に行って、俺のアンプは洋服のクロゼットの中、マテウスのアンプはベッドの上に置いて、リビングルームで2人でプレイしたんだ。

Lang:マテウスが弾いたパートは、まるで彼のために書かれたようだったね。ニュー・ジャズ的なアプローチで、完璧にフィットしていた。

●同じく「ネオ・タンカ」には16弦ギターの名手フェリックス・マーティンが参加していますが、彼とも交流があるのですか?

Yas:LAのシーンは広いようで案外狭いんだよ。フェリックスも友達だよ。「ネオ・タンカ」はLangが書いたけど、ギターで弾くのは不可能なパートがあった。これはキーボードを使うしかないかな、と考えていたとき、フェリックスのことを思い出した。彼の16弦ギターは曲に完璧にマッチしているよ。

Lang:この曲でベースを弾いているのはYuki "Lin" Hayashiなんだ。彼はYasのルームメイトでもあるけど、R&Bのグルーヴを持ったベーシストで、この曲ではスタジオ・ライヴ形式で弾いてくれたよ。

●「ア・プログレッション・トゥ・インフィニティ」でベースを弾いているオニ(ONI)のチェイス・ブライアントは?

Yas:チェイスもMI出身で、スクールメイトだったんだ。彼とも友達で、よく一緒にドリーム・シアターやアニマルズ・アズ・リーダーズのカヴァーをジャムしたりした。「ア・プログレッション・トゥ・インフィニティ」はもう5、6年前に原型となる曲を書いたんだ。その頃からチェイスが弾くことになっていた。彼は曲をさらに肉厚にしてくれたよ。

Lang:チェイスは過小評価されているベーシストだよ。この曲でのプレイを聴けば、彼のテクニックが伝わってくると思う。

●「ジ・アンセム」には4人のゲストが参加していますが、それぞれについて教えて下さい。

Yas:ギター・ソロを弾いているYo Onityanはリング・オブ・サターンのギタリストで友人なんだ。彼はツアーのオフ日に来てくれて、ソロを録ってくれたよ。

Lang:ちょっとメシュガーっぽいノリのソロかもね。すごく気に入っているよ。

Yas:Ziyin Zhaoはクラシックのピアノ奏者で、ザ・レゾナンス・プロジェクトのマネージャーでもある。タソ・コマネスクのクラシック・ギターとのコンビネーションは完璧だね。タソはチェイスのルームメイトで、俺たちも友達なんだ。

●ベース・ソロを弾いているバビー・ルイスは?

Yas:バビーとはInstagram経由で知り合ったんだ。最初はコメントを付け合ったりして、数回会ったことがあったけど、NAMM楽器ショーで久しぶりに再会して、参加してもらうことにしたんだ。

Lang:当初はYasがベース・ソロを弾く予定だったけど、バビーに頼むことにしたんだ。それから2週間ぐらいして、2テイクを録った。ファースト・テイクも最高だったけど、セカンド・テイクが完璧だった。バビーは「アラビックあるいはパキスタン音楽っぽいアプローチを取っていいか」と提案してきて、ヒップホップやR&B的なノリも取り入れてくれた。まさに “共振”が起こった例だね。

●「エンジェルズ・ラダー」はアルバムで唯一のヴォーカル入りの曲で、ナイラ・マクダニエルが歌っています。

Lang:ナイラは素晴らしいシンガーで、親友のヘンリー・マクダニエルの奥さんでもある。ヘンリーはビッグ・ショーンやスタンリー・クラーク、ジョージ・デュークなどと一緒にやっているドラマーなんだ。「ナイラに歌ってもらったら?」とマネージャーが提案してきて、それはグッド・アイディアだ!と思った。ナイラはビューティフルな仕事をしてくれたよ。

The Resonance Project / courtesy P-Vine Records
The Resonance Project / courtesy P-Vine Records

<2020年はザ・レゾナンス・プロジェクトとしてツアーをやりたい>

●しかし数多くのゲストやオーケストレーションがあると、ライヴで再現するのが難しそうですね。

Lang:そうだね(苦笑)。でも、そのぶんやりがいがあるよ。このバンドとしての次のステップが、ライヴをやることだと考えている。基本的に2人でライヴをやるから、曲の骨子を生かしながら、再構成することになる。俺がドラムス、Yasがギターとベースを弾いて、Abletonデバイスをトリガーとして使って、一部バッキング・トラックも使う。「ネオ・タンカ」のライヴ・アレンジをしていたけど、最高の出来映えだよ。アルバムと同じことをやるつもりはない。インプロヴィゼーションを交えながら、ライヴの瞬間を捉えたいんだ。俺たちにとって、ジャズやフュージョンが原点のひとつだからね。

●ザ・レゾナンス・プロジェクトとしての初のライヴは2019年8月、ドラム・スティック・メイカーの“ヴィック・ファース”が主催する“VFジャムズ”だったそうですが、2020年にはツアーなども期待出来るでしょうか?

Yas:うん、ぜひやりたいね。“VFジャムズ”では「リフレクション」をプレイしたんだ。手応えを感じたし、これからも続けていきたい。

●ザ・レゾナンス・プロジェクト以外での活動は予定していますか?

Yas:マテウス・アサトのバンドや、アル・ジョセフがやっているハイヴマイン(Hyvemine)でベースを弾いているんだ。それとhydeの北米ツアーでギターを弾くことも決まっているし、さまざまなアーティストと一緒にやるのを楽しんでいるよ。ただ、2020年にはザ・レゾナンス・プロジェクトとしての活動が増えることになるだろう。

Lang:俺は音楽活動と並行して、ドラムスに関する研究書を書いているんだ。1冊目は『An Analytical Approach To Linear Applications Integrating Gospel Drumming Into Your Grooves And Chops』という本で、アメリカと中国で刊行された。今書いているのは2冊目だよ。ドラム・クリニックもやっているし、けっこう忙しいね。でもYasと音楽をやるのは楽しいし、これからさらに機会を増やすつもりだよ。2人でジャズ/フュージョン・プロジェクトをやろうとも話しているんだ。ザ・レゾナンス・プロジェクトとは異なる音楽性だから、別名義を使う可能性もある。2020年はザ・レゾナンス・プロジェクトにとってビッグな1年になるし、それをみんなと共有出来ることを嬉しく思うね。

The Resonance Project / courtesy P-Vine Records
The Resonance Project / courtesy P-Vine Records

●ザ・レゾナンス・プロジェクト

『ザ・レゾナンス・プロジェクト』

P-Vine Records PCD-24881

現在発売中

日本レーベル公式サイト

http://p-vine.jp/news/20190828-120000-3

バンド公式Facebook

https://www.facebook.com/theresonanceprojectmusic/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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