【インタビュー前編】新世代ギター・ミュージックを牽引 ポリフィアが新作と来日公演を語る

Polyphia / courtesy of Sony Music Japan

新世代ギター・ミュージック・シーンを牽引するバンド、ポリフィアがニュー・アルバム『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』を完成させた。

高度なテクニックとエモーションあふれるギター・インストゥルメンタルで大躍進を遂げてきたポリフィアだが、ティム・ヘンソンとスコット・ルペイジのツイン・ギターは新作でも冴え渡っている。

また、アルバムにはジェイソン・リチャードソン、ichika、マテウス・アサト、CHONのマリオ・カマレナ&エリック・ハンゼル、コヴェットのイヴェット・ヤングなど、同時代を進むギタリスト達が集結。当世屈指の個性を持ったプレイヤー達のぶつかり合いは鮮烈で刺激的だ。

2018年11月には来日公演も決定。ギター・ミュージックの未来への扉を開くライヴは、時代を揺るがすターニング・ポイントとなる。

全2回のインタビュー、前編では2016年9月、2017年7月に続いて3年連続の日本上陸を果たすポリフィアのツイン・ギターの一角であるティムが『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』と来たるジャパン・ツアーを語る。

<2018年のギタリスト・ムーヴメントを切り取ったアルバム>

●3年連続で来日というのは、ポリフィアの日本での人気を窺わせますね。

うん、日本に来るたびに愛を感じるし、俺たちも同じぐらいの愛を日本のファンに贈るよ。これまでの日本公演は、しばらくライヴから離れていたオフ明けの状態から行っていたけど、今回はアメリカをツアーしてから日本に向かうんだ。十分身体が温まった状態でプレイするから、これまでで最高のショーになるだろうな。

●2017年5月にはフィリピン、香港、台湾、シンガポールでアイバニーズ提供のギター・クリニックを行うなど、アジア圏でかなりの人気なのでしょうか?

そうだね。アジアのファンはアメリカやヨーロッパと同じか、それ以上に熱狂的にポリフィアの音楽を受け入れてくれる。インストゥルメンタル音楽をやっているから、言語の壁がないというのがプラスに働いているかも知れない。それにアジアのファン達はギターに対してすごく熱意を持っているんだ。クリニックで感じるんだけど、俺たち以上にポリフィアの曲をうまく演奏できるほどだよ(笑)。日本や中国、韓国のギター・キッズのテクニックには毎回驚かされる。俺の母親が台湾出身だから、アジアで支持を得ているのは嬉しいね。台北でショーをやったときは、家族が総出で見に来てくれた。漢字は読めないけど、俺の魂の故郷だと考えているよ。俺の中にアジア的なメロディの要素があって、それが呼応しあうのかも知れない。

●新作『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』ではさまざまなスタイルの音楽を、さまざまなミュージシャン達と共演していますが、アルバムの音楽をどのように説明しますか?

『New Levels New Devils』ジャケット / courtesy of Sony Music Japan 10月24日発売
『New Levels New Devils』ジャケット / courtesy of Sony Music Japan 10月24日発売

『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』というタイトルの通り、明暗のコントラストを強調したアルバムだ。半分はダークでヘヴィな曲なんだ。これほどダークなアプローチをしたのは初めてだけど、それはミュージシャンとしての成長だと思う。ただ“ヘヴィ”といってもメタル的なヘヴィネスではないんだ。ディストーションは抑えめで、意図的にメタルっぽくならないように気を付けた。ドラム・ビートもメタル的ではなく、むしろトラップのビートに近い。そしてもう半分は遊び心のある楽しい曲だよ。どちらも俺たちにとって新しい挑戦だったし、アルバムにスリルと興奮をもたらしていると思う。

●ポリフィアの作品であるのと同時に、新世代ギタリスト達が一丸となって連合軍を組んだアルバムですね。参加アーティスト達とひとつのムーヴメント、ひとつのコミュニティを形成している意識はありますか?

“連合軍”というほど大袈裟には考えていないよ(笑)。でも、みんなお互いのことを知っているし、刺激を与え、受け合いながら、ギター・ミュージックの新しい可能性を模索している。彼らがいることで、俺たちも成長することが出来るんだ。そういう意味で、『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』は2018年のムーヴメントを切り取ったアルバムと言えるかもね。

●「ナスティ」にゲスト参加しているジェイソン・リチャードソンとは「エヴィエイター」でも共演、2017年の来日公演にも同行しましたが、彼のスペシャルなところは?彼とはどのように知り合ったのですか?

俺とスコット(ルペイジ/ギター)がジェイソンのライヴを見に行って、声をかけたんだよ。彼は当時19歳か20歳で、俺は16歳の高校生だった。彼のギター・プレイに畏怖を感じたけど、彼は控えめな性格で、あまり絶賛すると少し嫌そうな顔をしていたのを覚えている。それから数年後、『ミューズ』(2014)を作っているとき、「エヴィエイター」を書いたんだ。ジェイソンが弾いたらピッタリのギター・パートがあったんで、Facebook経由でコンタクトしてみた。俺はけっこうマイナス思考だから「きっと断られるだろうなあ」と考えていたけど、快諾してくれたよ。ジェイソンは最高にクレイジーなギター・ソロを弾いてくれた。彼はシュレッドの鬼だ。現代のジョン・ペトルーシという感じだよ。「エヴィエイター」以上に気に入ってもらえると確信している。

●「デス・ノート」に参加している日本のichikaとはどういう接点があったのですか?

インスタグラムで彼が「エヴィエイター」をカヴァーしているのをたまたま見つけたんだ。それで連絡を取り合うようになって、東京でのライヴにも来てもらった。彼の音楽は素晴らしいインスピレーションに満ちているし、刺激を得ることが出来る。今回のアルバムには、ぜひ参加して欲しかったんだ。当初ichikaには「O.D.」で弾いてもらうつもりだったんだ。実際、彼が弾いたヴァージョンも存在するんだよ。すごくクールな仕上がりだったけど、俺は異なったヴァイブを求めていた。それで彼に「良いアイディアはない?」と訊いたら、新しいリフを送ってくれたよ。それを元にして、曲を創り上げていったのが「デス・ノート」なんだ。クレイジーなichikaスタイルの曲で、アルバムに収録することが出来て嬉しいよ!

●「デス・ノート」というタイトルは日本の漫画『DEATH NOTE デスノート』から得たものですか?

確かこのタイトルは俺のアイディアだったと思う。曲を書いていたとき、ちょうどアニメ版を見ていたんだ。必ずしもアニメの世界観やムードを反映してはいないけど、イマジネーションをかき立てるようなタイトルだろ?ichikaが日本人アーティストだということもあるし、ピッタリだと思ったんだよ。

●日本のアニメはお好きなのですか?

音楽で忙しいし、なかなかシリーズ全編を見る時間がないから、マニアというわけではないけどね。一番好きなのは『ベルセルク』かな。それから『ワンパンマン』も良かったし、今更だけど『カウボーイ・ビバップ』を見ている。まだ見ていない傑作がたくさんあるだろうし、日本でいろいろチェックしてみたいね。

●マテウス・アサトが参加した「ドラウン」について教えて下さい。

マテウスは日本でもライヴをやったことがあるよね。彼は素晴らしいギタリストだし、このビューティフルな曲で味わい深いギターを弾いてくれた。

●「ヤス」に参加したCHONのマリオ・カマレナ&エリック・ハンゼルは?

彼らは長い友達だし、同じ世代のミュージシャンだ。音楽的にはかなり異なったことをやっていると思うけど、CHONの音楽は大好きで、共演することで新しい要素が生まれるんだ。『ミューズ』でも共演したけど、今回はさらにお互いを高め合うことが出来たね。

●「ソー・ストレンジ」は唯一のヴォーカル入りナンバーで、Cucoがヴォーカルを取っていますが、普段のインストゥルメンタルと、歌詞のある音楽をプレイするのは、どのように異なるでしょうか?

ヴォーカル入りの曲をやるのは興味深いチャレンジだったね。ギターがバッキングのみだと、インストの場合スカスカな音になってしまうけど、ヴォーカルがいれば空間を埋めてくれるし、脳内のイマジネーションも埋めてくれる。やって楽しかったし、今後ももしかしたらやるかも知れないよ。Cucoはアメリカですごく注目されているアーティストなんだ。ほとんどメインストリームと言っていい。彼はチカーノ(メキシコ系アメリカ人)で、ロマンチックな、ほとんどインディ・ポップに近い音楽をやっている。今、20歳ぐらいかな?16歳の頃からポリフィアのファンだったと言っていたよ(笑)。彼は5曲のデモを送ってくれて、そのうち2曲を合体させたのが「ソー・ストレンジ」だった。

●今回の日本公演でオープニング・アクトを務めるコヴェットのイヴェット・ヤングが「リッチ・キッズ」でプレイしていますが、彼女とはどれぐらい交流があるのですか?

イヴェットとはポリフィア結成当初、2013年か2014年から友達だよ。そろそろ一緒にやってもいいんじゃないかと思ったんだ。「リッチ・キッズ」は前半がスコットと俺、後半がイヴェットという感じで、彼女にコード進行を伝えて、自由に弾いてもらった。彼女が持ち込んだ要素には悲しくてメランコリックな部分もあって、初めて聴いたとき驚いたよ。

Polyphia / courtesy of Sony Music Japan
Polyphia / courtesy of Sony Music Japan

<とにかく音数が多い。音のオーヴァードーズだ>

●ポリフィアで曲作りはどのようにして行っていますか?

曲作りに一定のルールはないんだ。誰かが良いアイディアを持ってくれば、それを基にして曲にしていく。最も多いパターンは俺がリフを書いて、それをスコットと何度か行ったり来たりしながら完成させていくというものだ。さらにプロデューサーに聴かせたりして、幾つものアイディアから最もクールな部分を抽出して、フランケンシュタインの怪物みたいにツギハギにするんだ。さらにクレイ・ゴバー(ベース)とクレイ・アシュリマン(ドラムス)のリズム・セクション“ザ・クレイズ”が自分たちのアイディアを加えたりもする。このアルバムのハイライトはリズム・セクションだ。ミックスでもスーパー・ラウドにしているし、低音パートが最高だよ。当初エレクトロニック・ビートで書いた曲も、本物の楽器に差し替えた。すべてのパートを人間がプレイしているんだよ。

●アルバムに先駆けて「G.O.A.T.」と「O.D.」がリリースされましたが、その2曲はアルバムの一部として書かれたのですか?それとも単独の楽曲だったのでしょうか?

俺たちはアルバム単位で音楽を考えているし、どちらの曲もアルバムに収録することを前提にしていた。「G.O.A.T.」を最初に発表したのは単純に、最初に完成したからだよ。この曲にはヒップホップに通じるビートがある。このアプローチはEP『ザ・モスト・ヘイテッド』(2017)の延長線上にあるんだ。あのEPは当初『The Most Hated Of All Time』にしようと考えていた。ヒップホップの要素を入れたら、絶対嫌われるだろうと思ってね。でも予想外に、あのEPはすごく好評だった。それで今回は「Greatest Of All Time」というタイトルにしたんだ。ただ、“史上最高”なんて自分で主張するのもダサいと思って、略して「G.O.A.T.」となったんだよ。

●「O.D.」のタイトルは“オーヴァードーズ”のことでしょうか?

薬物などのオーヴァードーズも意味しているけど、この曲をニューヨークで書いたことも理由なんだ。アメリカ西海岸では“マジ凄い”ことを“hella”と言うけど、ニューヨークでは“O.D.”を使う。“O.D. dopeだ!”とか“O.D. whackだ!”とかね。あと「O.D.」はとにかく音数が多い。音のオーヴァードーズなんだよ。ミュージックビデオにはたくさんのいろんなものが登場する。たくさんの植物、テレビ、赤ちゃんの頭とかね。「O.D.」はアルバム用に書き始めた最初の曲だった。完成したのはやや遅れたけど、時間をかけて良い曲になったと思うし、アルバムの音楽性を代表する曲のひとつに仕上がったよ。

後編では現代の音楽シーンにおけるポリフィアの位置について、ティムにさらに深く掘り下げてもらおう。

【New Levels New Devils / ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ】

Sony Music Entertainment / RED Project Room

2018年10月24日発売

【NEW LEVELS NEW DEVILS TOUR Japan / POLYPHIA & COVET】

- 2018/11/18(日) 心斎橋SOMA

OPEN 17:00 / START 18:00

- 2018/11/19(月) 名古屋ell. FITS ALL

OPEN 18:00 / START 19:00

- 2018/11/21(水) 渋谷TSUTAYA O-EAST

OPEN 18:00 / START 19:00

公演特設サイト

https://www.creativeman.co.jp/event/polyphia2018/