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【インタビュー前編】2018年4月来日。プードルズが語るハード・ロック・ドリーム

山崎智之音楽ライター
The Poodles / photo by Par Olsson

スウェーデンのハード・ロック・バンド、プードルズが2018年4月、初の日本上陸を果たす。

ハードなサウンドと歌えるキャッチーなメロディを兼ね備えた音楽性で母国のナショナル・チャート常連であり、日本でも熱心なファンの多い彼らだが、通算7作目となる新作『プリズマ』は全曲が他アーティストのカヴァーという変則的アルバム。はたして日本でどんな構成のショーを見せてくれるのか、期待が高まる。

「今まで何度かジャパン・ツアーの話が持ち上がっては、立ち消えになっていたんだ。遂に実現して、本当に嬉しいよ!」と語るのは、シンガーのヤコブ・サミュエル。全2回のインタビューで、まず前編はヤコブが『プリズマ』について語ってくれた。

メインストリーム・ポップの曲を解釈するのがコンセプトだった

●何故『プリズマ』をカヴァー・アルバムにしようと考えたのですか?

オリジナル・アルバムをもう6枚も作ってきたし、そろそろ“外伝”的なアルバムを作ろうって話し合っていたんだ。カヴァー・アルバムかアコースティック・アルバムのどちらかにしようと思ったけど、たまにライヴで他のアーティストの曲をプレイすると盛り上がるから、カヴァー・アルバムに決めた。エルトン・ジョンの「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」とかフリートウッド・マックの「オウン・ウェイ」をライヴでプレイすると、ファンのみんなが驚いた表情を見せて、次に会場がスマイルでいっぱいになるんだ。バンドみんなで話し合って、今こそがベストなタイミングだという結論に至った。

●カヴァー曲はどのような基準で選びましたか?

いろんな時代の、いろんなタイプの曲があった方が楽しいと思ったんだ。俺は1969年生まれだから、自分が聴いて育った曲もあるし、比較的最近の曲もある。アデルの「セット・ファイア・トゥ・ザ・レイン」やデヴィッド・ゲッタの「ラヴ・イズ・ゴーン」は、現代でも優れたポップ・ミュージックが生まれ続けていることを証明する曲だよ。もうひとつ、ハード・ロックやヘヴィ・メタルの曲は選ぶつもりはなかった。ハードな曲はいつもプレイしているからね。それよりもメインストリーム・ポップの曲を我々なりに解釈するのがコンセプトだった。

●カヴァーする曲は誰が選んだのですか?

The Poodles: Prisma(現在発売中)
The Poodles: Prisma(現在発売中)

バンド全員でいろいろ候補を出し合ったけど、俺のアイディアが多く採用されたかな(笑)。俺はずっと1970年代の音楽のファンだった。エルトン・ジョンとバーニー・トーピンのコンビは、名曲の宝庫だよ。「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」と「オウン・ウェイ」はスペインでやった“ヒストリー・オブ・ロック”コンサートでも歌ったんだ。フェア・ウォーニングのトミー・ハートやミート・ローフのパティ・ルッソーとロック・クラシックスをプレイするライヴだ。オズモンズの「クレイジー・ホース」も俺の好きな曲で、ハード・ロック・ヴァージョンをやりたいと考えた。最近の曲でも「セット・ファイア・トゥ・ザ・レイン」「ラヴ・イズ・ゴーン」は俺のアイディアだったし...俺はカヴァー曲というものが好きなんだ。オリジナルが名曲だと何度も何度も聴くだろ?さすがに飽きてきて、同じ曲でも別のアーティストがやるカヴァーを聴きたくなるんだ。

●デペッシュ・モードの「イッツ・ノー・グッド」はほぼ同時期にイン・フレイムスもカヴァーしましたが、そちらは聴きましたか?

うん、彼ら流にアレンジされていて興味深かった。オリジナルとも俺たちのヴァージョンとも異なっていたよ。この曲をやるのはヘンリック(ベルクヴィスト/ギター)の提案だったんだ。まさか同じスウェーデンのヘヴィ・メタル・バンドと“競作”になるとは考えもしなかったよ(笑)。

●ファースト・アルバム『メタル・ウィル・スタンド・トール』(2006)ではウルトラヴォックスの「ダンシング・ウィズ・ティアーズ・イン・ユア・アイズ」をカヴァーしていましたね。

うん、ウルトラヴォックスを初めて聴いたとき、俺はまだ子供だったけど、兄が聴いていたんだ。「ヴィエナ」とかね。1980年代イギリスのエレクトロ・ポップが好きだったんだ。ハワード・ジョーンズ、あとユーリズミックスとかね。「ミッショナリー・マン」や「ソーン・イン・マイ・サイド」が大好きだった。彼らはシンセ・ポップと呼ばれていたけど、ギターも入っていたし、ロックっぽかったよね。俺の嫁さんと出会ったのは1985年だったけど、彼女もそういうアーティストが好きだったし、俺が持っていないレコードも持っていた。エイティーズは俺の青春時代だよ。

●『プリズマ』でカヴァー候補に挙がったけれど最終的に収録されなかった曲はありますか?

ユーリズミックスの「ミッショナリー・マン」、それからエルトン・ジョンの「アイム・スティル・スタンディング」も考えていた。プロデューサーのディーノ・メダノジッチと話し合って、カヴァーの出来映えやアルバムとしてのトータルなまとまりを考えて選曲していったんだ。あと6枚ぐらいアルバムを出したら、『プリズマ2』をやっても面白いかもね。4月に日本に行くとき、日本の音楽を吸収したいと考えているんだ。オススメのアーティストがいたら、ぜひ教えて欲しいね!プロデューサーのディーノとの作業はとても新鮮なものだった。もちろんマッツ・ヴァレンティンも素晴らしいプロデューサーだけど、アルバム4作を一緒に作ったし、今回は新しいプロデューサーと、新しいスタジオでやってみたかったんだ。

●スウェーデンのポップ・バンド、例えばアバの曲などをやろうとは考えませんでしたか?

アバは数々の名曲を生んできたし、もちろん考えたけど、彼らの曲は映画などでさんざん使われたり、いろんなバンドがカヴァーしているから、スウェーデン出身の俺たちがやったら“いかにもありがち”に思われる気がしたんだ。少しばかりのサプライズがあった方が良いと思った。プードルズは高い技術を持ったミュージシャンの集団だし、俺自身もシンガーとしての幅は狭くないと思う。いろんなスタイルに挑戦してみたかったんだ。

●『メタル・ウィル・スタンド・トール』でも外部ソングライターの曲を取り上げるなどしてきましたが、今回『プリズマ』を作るにあたって、その経験は役に立ちましたか?

俺はプードルズを結成する前からいろんなソングライターが書いた曲をプレイしてきたし、共作も行ってきた。最も重要なのは、どれだけ優れた音楽をやるかなんだ。誰が書いたかなんて、さほど重要ではない。メンバーが書いた曲しかレコーディングしない!というこだわりはないんだ。ただ、誰が書いた曲よりも良い曲を書くようにハートのすべてを注いでいるよ。俺はどのアルバムでも25曲から30曲を書くんだ。その中から11曲から12曲をレコーディングする。ツアーをしていない時はいつも曲を書いているよ。1人で書いたり、誰かと共作したり...それが俺のプロとしての人生なんだ。バンドのメンバーはもちろんだけど、いろんな人と共作することで刺激を得ることが出来る。俺はドメスティックなソングライターではないけれど、それは決して“浮気”ではないよ(笑)。メンバーも理解してくれるし、問題はない。

The Poodles / photo by Par Olsson
The Poodles / photo by Par Olsson

プードルだからってナメたら酷い目に遭うぞ!

●まだ『プリズマ』が発売となったばかりですが、2015年の『デヴィル・イン・ザ・ディテイルズ』以来となるオリジナル・アルバムの予定はありますか?

もちろん!既に新曲を書き始めているところだ。スウェーデンでのゲイン/ソニーミュージックとの契約が『プリズマ』でいったん終了するんだ。これから延長するか、それとも新しいレーベルを探すか、話し合いするところだよ。ビジネスのことが決まったら、すぐに新しいアルバムに取りかかる。次のアルバムまで3年はかからないようにするよ。約束だ。

●ところでプードルズは元々ヨーロッパのポップ・コンテストである“ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト”に出場するために結成されたといわれていますが、そのときに書いた曲が「メタル・ウィル・スタンド・トール」だったというのは、ある部分キワモノ的な面を狙っていたのでしょうか?

いや、決してジョークではないよ。メタルに対する情熱は本物だ。あのときソングライター/プロデューサー・チームのマッティ・アルフォンゼッティとヨハン・リアンダーと作業していたんだ。“ユーロヴィジョン”予選への出場を提案してきたのは彼らだった。クールなアイディアだと思ってエントリーしてみたら、通過してしまったんだ。レコード会社は俺がソロ・シンガーとしてやるよりも、バンドでやった方が良いと提案してきた。それで古い仲間たちに声をかけることにした。クリスチャン(ルドクヴィスト/ドラムス)とは他のプロジェクトでも一緒にやってきたし、メンバーだった2人のポンタス(ノルグレン/ギター、エグベリ/ベース)とも音楽的な付き合いが長かった。彼らとバンドを結成するのが最もナチュラルな過程だったんだ。そうして始まったのがプードルズだった。

●プードルズというバンド名について教えて下さい。

いかにもメタル・バンドみたいなバンド名にはしたくなかったんだ。ガンズ&ローゼズなんてダサいバンド名だと思っていたし、ディープ・パープルとかドッケンみたいなワケが判らない名前にもしたくなかった。かわいいプードル犬とヘヴィなハード・ロックというコントラストが面白いと考えたんだ。「何だよこのバンド名は」と思われるかも知れないけど、少なくとも一度聞いたら忘れないだろ?それにプードルといっても小さな愛玩犬に限ったわけではなく、大型のキングプードルもいる。第一次世界大戦のドイツ軍で軍用犬として活躍したんだ。体力があって、頭が良くて調教しやすかったそうだね。だからプードルだからってナメたら酷い目に遭うぞ!というメッセージもあるんだ(笑)。

インタビュー後編では2018年4月の日本公演に向けて、抱負と展望を語ってもらおう。

【THE POODLES Japan Tour 2018 〜 Melodic Power Metal Night Vol.23 〜 】

- 4月4日(水)渋谷クラブクアトロ 開場18:00/開演19:00

問い合わせ: M&Iカンパニー 03-5453-8899

- 4月5日(木)梅田クラブクアトロ 開場18:00/開演19:00

問い合わせ: 梅田クラブクアトロ 06-6311-8111

チケット発売中

来日公演特設サイト

【最新アルバム】

- プードルズ『プリズマ』

マーキー・インコーポレイテッド株式会社 MICP-11394

現在発売中

レーベル公式サイト

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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