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猛暑で疲れたらひんやり「ぬる湯」で癒す あのドラマで横浜流星も入った露天風呂も!【ひとり温泉3選】

山崎まゆみ観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)
『着飾る恋には理由があって』の撮影で使われた「明賀屋本館」の露天風呂(筆者撮影)

今年の夏は過酷だ。この気候では体を温める温泉のイメージはわかないだろう。しかし温泉を紹介してはや20年以上になる私が、四季を通じて最も入浴の効果を感じるのは実は夏なのである。夏バテした身体には温泉が効くのだ。

ここ数年は、「夏こそ、温泉」と呪文のように唱えてきたが、その身体を整える夏のお勧め温泉「ぬる湯」と入浴法をご案内しよう。

栃尾又温泉「したの湯」にて(筆者撮影)
栃尾又温泉「したの湯」にて(筆者撮影)

「ぬる湯」とは体温か、それより低い温度の温泉を指す。冷たいと感じる25度以下は「冷泉」のくくりに入るから、「ぬる湯」は少しひんやりする温泉と認識して欲しい。

この時期の「ぬる湯」は快感だ。

身体がお湯に触れた瞬間、少し「ぬるいな」と感じつつ、するりと滑り込むようにお湯の中に入っていく。徐々に、お湯に身体を慣らしていこう。

入浴中は窓越しに緑があればそこに目をやり、それから瞼を閉じる。

そして静かに呼吸する。そのまま時が経つ。

人にもよるが、私の場合は入浴から30分ほど経つと、身体に変化が訪れる。凝りが取れるというよりも、凝りが流れていくという表現の方が適しているが、身体にあった違和感が解けていくのだ。

浴衣を着て、客室に戻る。

長湯するとカロリー消費をするから、まずはお茶やお菓子で水分とエネルギーを補給する。

畳の上でごろんと横になる。

ぬる湯に入ったはずなのに、身体がホカホカしてきて心地よく、眠気がやってきた。

そのままうたた寝に入れば、この上ない多幸感が得られる。

そう、身体をほどくことを目的とするなら、自分のペースで入浴し、誰にも気兼ねなく、昼寝ができる「ひとり温泉」に越したことはない。

私の好きな「ぬる湯」3選

話題のドラマロケ地に【栃木県塩原温泉郷塩の湯温泉】

テレビドラマ『着飾る恋には理由があって』の撮影で使われた「明賀屋本館」の川岸露天風呂(筆者撮影)
テレビドラマ『着飾る恋には理由があって』の撮影で使われた「明賀屋本館」の川岸露天風呂(筆者撮影)

渓谷の川岸に露天風呂があり、目の前に翡翠色の川が流れ、いつまでもその景色を眺めていたくなる絶好のロケーションだ。

横浜流星さんや川口春奈さんが出演したテレビドラマ『着飾る恋には理由があって』の撮影で使われた露天風呂(「明賀屋本館」)として人気を集めている。

『金色夜叉』の作者・尾崎紅葉が湯治をし、病んだ身体をこの湯で回復させて、『続金色夜叉』を書いたことでも知られる名湯。塩の湯温泉という名の通り、ナトリウム濃度が高く、いわば温まりの湯だ。

子宝温泉としても知られる【新潟県栃尾又温泉】

栃尾又温泉「したの湯」にて(筆者撮影)
栃尾又温泉「したの湯」にて(筆者撮影)

新潟最古の湯と伝えられる、開湯1300年の子宝温泉だ。

樹齢400年の杉や欅の木がそびえたち、「子持杉をまたぎ、夫婦欅をくぐると、子供に授かる」と謂れもある。その横に栃尾又薬師堂があるが、お礼参りにやってきた人がキュービー人形を備えるのが恒例で、奉納された人形の数が栃尾又の湯の効果を何よりも伝える。

子宝温泉の由縁は、身体を整えて自然治癒力をあげると言われるラジウムの含有量が多いから。さらに、ぬる湯で身体を芯から温めることも影響を及ぼすだろう。

共同浴場「したの湯」でぬる湯を楽しめる。

実は、私の両親が栃尾又温泉に通い、私が授かったそう。霊験あらたかな温泉である。

栃尾又温泉「自在館」にて(筆者撮影)
栃尾又温泉「自在館」にて(筆者撮影)

枕草子に出てくる【三重県榊原温泉】

長く愛されてきた温泉には、それだけの理由があるものだ。

「湯は七栗の湯、有馬の湯、玉造の湯」と『枕草子』で七栗の湯として出てくるのが三重県榊原温泉。榊原温泉は伊勢神宮献上の榊を清めるために使われ、伊勢神宮に参拝する人々の身を清めるための「湯垢離場」として栄えてきた歴史がある。

創業100年を超えた「湯元榊原館」は敷地内に自家源泉を有し、毎晩、湯船からお湯を抜き、清掃し、また湯を張る。温泉の鮮度を意識したお湯の管理が徹底している。

「ぬる湯」と記された湯船には31度の源泉が注がれている。アルカリ性単純温泉の湯はじんわりと身体に寄り添い、長く入っていると身体がとけてしまいそうだ。飲泉処もある。

観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)

新潟県長岡市生まれ。世界32か国の温泉を訪ね、日本の温泉文化の魅力を国内外に伝えている。NHKラジオ深夜便等テレビラジオにも多数出演。国や地方自治体の観光政策会議にも多数参画。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)としてインバウンドを推進。「高齢者や身体の不自由な人にこそ温泉」を提唱しバリアフリー温泉を積極的に取材・紹介。著書は『おひとり温泉の愉しみ』(光文社新書)『行ってみようよ!親孝行温泉』(昭文社)『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)2023年4月6日発売の『温泉ごはん 旅はおいしい!』(河出文庫)は温泉にまつわる豊かな「食」体験をまとめた初の食べ物エッセイ。

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