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涙を誘った天皇陛下の誕生日記者会見

山下晋司皇室解説者
昨年 84歳の誕生日に際し記者会見された天皇陛下 写真:毎日新聞社/アフロ

 天皇陛下は本日12月23日に85歳のお誕生日を迎えられた。天皇として迎えられる最後のお誕生日になる。例年どおり、宮殿石橋の間で事前(12月20日)に記者会見が行われた。

 今回の記者会見での記者からの質問は1問のみで、関連質問は無しと決められていた。質問内容は事前に宮内記者会から宮内庁に提出されている。関連質問とは、ご回答に関して記者会見場で新たに出る質問のことで、事前には陛下も宮内庁も質問内容はわからない。

 平成27年以降は今回のような形式になったが、ご高齢に伴うご負担軽減のため、徐々に記者会見での質問数、関連質問を減らしてきた結果である。

 平成25年以降は次のような質問だった。(ひとつの質問の中にいくつかの質問が含まれている場合がある)

平成25年の質問

 問1

  「80年の道のりを振り返って特に印象に残っている出来事」

  「傘寿を迎えられたご感想」

  「これからの人生をどのように歩もうとされているのか」

 問2

  「現在のご体調と、公務の引き継ぎについてどのようにお考えか」

 問3

  「皇室の立場と活動について、どのようにお考えか」

 関連質問1

  「インド公式訪問の御感想」

  「国際友好親善に際して陛下が心掛けていらっしゃること」

平成26年の質問

 問1

  「この1年を振り返り、印象に残った出来事」

  「来年に向けてのお考え」

  「先の戦争や平和に対するお考え」

 問2

  「『昭和天皇実録』に関してのご感想」

  「昭和天皇についての思い出や、天皇としてのお姿から学び生かされていること」

平成27年の質問

  「この1年を振り返るとともに,来年へのお考え」

平成28年の質問

  「この1年を振り返って感じられたこと」

平成29年の質問

  「この1年を振り返りながら、退位の日までのお過ごしについてのお考え」

そして今回の質問は

  「現在のご心境とともに、いま国民に伝えたいこと」

 ご回答で陛下が触れられたのは、自然災害、象徴天皇の在り方、第二次世界大戦後の国際情勢、戦後日本の歩み、沖縄、慰霊の旅、障害者、外国への移民、皇后陛下との結婚、皇后陛下と国民に感謝、譲位と新しい時代、などだが、内容はいままで記者会見などで語ってこられたことのまとめと言っていいものだった。

 しかし、今回の記者会見はいままでの記者会見とは様相が違っていた。

 陛下は回答をご自分でお考えになって、事前に用意されている。記者会見場ではそれをお読みになっているが、ひとつひとつの言葉に込めた思いや出来事が脳裏に去来されたようだ。こみ上げるものをぐっと我慢され、声が上ずりながらも話すべきことを最後までしっかりと話された。

 陛下を信頼し、敬愛している人間なら、涙なしでは拝見できない。記者会見場では泣いている記者もいたらしい。記者として好ましくないと思う人もいるだろうが、記者もまた人である。普段から陛下の近くで取材している記者は、その真摯なお人柄に触れる機会も多いので、感情移入しても不思議ではないし、当然だとも思える。

 今回の会見映像をテレビ各局はノーカットで放送するだろう。本記事を書いている者がいうのもおかしいが、活字の会見録や解説よりも是非ノーカットの映像をご覧いただきたい。そしてそれぞれの人が、陛下のこと、平成時代のことを振り返り、考えていただきたい。

 会見全文は宮内庁ホームページに掲載される。

皇室解説者

昭和31年 大阪市生まれ、関西大学卒。20数年の宮内庁勤務後、平成13年に退職。宮内庁では昭和63年~平成7年まで長官官房総務課で報道を担当。昭和天皇の崩御・大喪の礼、平成の即位の礼・大嘗祭、秋篠宮殿下の結婚、皇太子(現在の天皇陛下)の結婚などの諸行事を報道担当として経験。平成時代の天皇皇后の中国訪問、米国訪問及び皇太子(現在の天皇陛下)のモロッコ・英国訪問に報道担当として同行。宮内庁退職後は出版社役員を経たのち独立。独立後は、BSテレ東・テレビ東京「皇室の窓スペシャル」の監修のほか、週刊誌・テレビなど各メディアでの解説、記者勉強会の講師、書籍・テレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている。

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