宮内庁の西村長官が6月24日の定例記者会見で、天皇陛下が名誉総裁を務める東京オリンピック・パラリンピックについて「国民の間に不安の声がある中、陛下は開催が感染拡大につながらないか、ご懸念であると拝察している」と述べた。さらに長官は、組織委員会をはじめ関係機関に対して「連携して感染防止に万全を期していただきたい」と注文をつけた。

宮内庁長官の拝察なので、天皇陛下が直接おっしゃったわけではないが、これが天皇陛下のお気持ちであることは誰も疑わないだろう。

宮内庁ではこの"拝察"をよく使う。最近、話題になったのは、秋篠宮同妃両殿下のお気持ちを拝察した件である。4月8日に小室圭さんが金銭トラブルに関して説明した文書を発表したが、その翌日、皇嗣職大夫が定例会見で"秋篠宮皇嗣同妃両殿下は、このたびの発表について、小室家側がこの問題を解決するために行ってきたいろいろな対応が見える形になるように努力したものという風に受け止めておられるようにお見受けした"と発言した。あくまでも皇嗣職大夫が拝察したことであって、両殿下がそうおっしゃっていたわけではないということになるが、よくここまで拝察できたものだと思うのは私だけではないだろう。

オリパラの名誉総裁就任や会場への臨席は、憲法に定められた天皇の国事行為ではなく公的行為なので、天皇の意思も尊重されるが、"政府で決めたことには従いましょう"、というのが天皇の基本的なスタンスである。しかし、天皇自身が好ましくないと思うことも当然ある。そんなときでも、天皇が直接、反対を表明したり、苦言を呈したりすることはなく、水面下で宮内庁が相手側と交渉するのが常道だ。

今回の長官発言は、天皇陛下としては政府の方針に従うにしても、不安に思う国民に自分の気持ちを伝えたかったのではないだろうか。マスコミが天皇陛下のご発言として「 」で使えるものではないが、長官の拝察ということでも十分お気持ちは伝わったと思う。

推測だが、長官は今回の発言について、事前に官邸の了承を得ていたのではないだろうか。政府、関係機関としては、天皇陛下のご発言ではなく、宮内庁長官の個人的な考えと位置付ければいいし、感染対策においても、今までどおり「感染拡大防止に万全を期してまいります」と言えば済む話だからである。

ただ、多くの情報が集まる天皇陛下が感染拡大を懸念されているということは、現在の対策では不十分だと思っておられるからであり、陛下のこの不安が国民の不安をより大きくする可能性はある。

あとは、開催賛成派・反対派双方が、今回の長官発言を恣意的に利用しないことを祈るばかりである。