延期されていた眞子内親王殿下と小室圭氏の結婚が、10月26日の婚姻届の提出によって成就する。

 2017年9月に婚約が内定し、11月には「翌年11月に結婚」と宮内庁の発表があったが、その後、小室家の金銭トラブルを週刊誌が報じたことから、18年2月に「結婚の延期」が発表された。

 婚約内定から今日までの4年あまりの間、週刊誌やネットの世界では小室家への批判の嵐が吹き荒れ、眞子内親王殿下は複雑性PTSDと診断されるまでに至った。いまだ批判の声も上がる中での結婚となったが、改めて皇族女子の結婚の法的位置づけ等について述べておきたい。

■皇族女子の結婚には特別な規定がない

 皇室に関しての法律は皇室典範が中心になるが、皇族男子の結婚については同法10条に「皇室会議の議を経ることを要する」との規定がある。皇室会議は三権の長や皇族代表など10名で構成され、皇室の重要事項を決定する機関である。一方、皇族女子の結婚については「天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは皇族の身分を離れる」(同法12条)と規定されているだけで、皇室会議の議は必要ない。

 法律に特別な規定がない場合は、天皇や皇族も一般国民と同じ法令が適用される。よって、眞子内親王殿下の結婚に関しては、秋篠宮殿下が昨年の記者会見で仰ったとおり、一般国民と同様に「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」(憲法24条)が適用される。市区町村の役場に婚姻届を提出し、受理されれば、その段階で眞子内親王殿下は皇室を離れることになる。

■敬称について、皇室典範24条では

「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は陛下、それ以外の皇族の敬称は殿下」と規定されているため、皇族ではなくなる今後は、殿下ではなく、「さん」や「さま」といった一般的な敬称になる。併せて、内親王という皇族としてのお立場を表す称号も使えなくなる。

■結婚に伴う儀式

 皇室の様々な儀式は明治以降、前例を参考にしながら整備されてきた。しかし、それらを規定した皇室令(天皇の命令)は、 1947年5月3日の新憲法施行に合わせて廃止された。それにより、皇族の身分や儀式等に関してはほとんどが法的根拠を失った。

 ただ、当時の宮内府は、新憲法下で新たに決めたことは別として、法令に違反しない範囲でそれまで行われてきたことを踏襲するようにした。皇族女子の結婚に伴う儀式もそのひとつだ。具体的には以下のとおりである。

A)納采の儀(結納にあたる)

A)告期の儀(結婚の期日を告げる)

B)賢所皇霊殿神殿に謁するの儀(天照大神などが祀られている宮中三殿で拝礼される)

B)朝見の儀(天皇皇后両陛下に謝恩の辞を申し上げる)

A)入第の儀(結婚式当日のお迎え)

 ここで注意すべきことは、儀式は二つに分類されるということである。ひとつは「結婚に伴う儀式」(A)、もうひとつは「結婚による皇籍離脱に伴う儀式」(B)である。(A)はその家の当主が決め、(B)は天皇が決める。ただ、これらの儀式をすべて行わなくとも法的には問題ない。

 今回、国民感情を踏まえて、これらの儀式をすべて行わないことになった。ただし、賢所、皇霊殿、神殿には儀式としてではなかったが拝礼された。また、「朝見の儀」という儀式ではないが、天皇皇后両陛下に私的に挨拶もされた。

■裁可も必須条件ではない

 天皇の承認を意味する「裁可」という言葉を婚約内定時にはよく聞かれたが、この行為も結婚するための必須条件ではない。現に高円宮家の典子女王、絢子女王の結婚については天皇の裁可はなかった。旧皇室典範では皇族の結婚には天皇の勅許が必要となっていたが、現皇室典範ではこの規定もなくなった。ただ、皇室内部の私的な決め事として、天皇の直系の場合は天皇の裁可という手続きを踏むことにしたのである。よって、平成時代に天皇の直系ではなかった典子女王、絢子女王の時は裁可がなく、平成時代に婚約が内定した眞子内親王殿下は当時、天皇の直系の孫だったため、天皇の裁可を経た。

 現時点で佳子内親王殿下は今上陛下の姪であり、直系ではないので、前例どおりだと結婚の際の裁可はない。ただ、皇太子と同等の皇嗣家の内親王なので、天皇の裁可を経る可能性もあるが、これは天皇家内部でお決めになればいいことで、何が正しいといえるものではない。

■一時金の算出について

 今回、一時金にも注目が集まった。一時金とは「皇族であった者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範の定めるところによりその身分を離れる際に支出」(皇室経済法6条)されるもので、非課税(所得税法9条1項)である。離脱する皇族の身位によってそれぞれ上限額が規定されており、支給額は皇室経済会議で決める。現在、内親王の上限額は1億5250万円、女王の場合はその7割の1億675万円である。

 一時金は皇籍離脱に伴い支給されるもので、結婚以外の理由による離脱であっても支給される。結婚の祝い金ではない。戦後の現制度になって以降、一時金が支給されなかった例が一度だけある。1947年10月に51人の皇族が皇籍を離脱したが、その際に開かれた皇室経済会議で、軍籍にあった皇族には一時金を支給しないと決定した。これ以降、結婚以外の理由で皇籍を離脱した皇族はなく、一時金が支給されなかった例もない。

 1947年5月3日以降で、結婚によって皇籍を離脱した皇族女子は8人いる。

  昭和天皇の子ども(内親王)が3例

  上皇陛下の子ども(内親王)が1例

  大正天皇の孫(内親王)が2例

  大正天皇のひ孫(女王)が2例

 天皇の子どもも孫も内親王ではあるが、天皇との関係では一親等と二親等という違いがある。このことから、大正天皇の孫にあたる内親王の一時金を決める皇室経済会議で、1割ご遠慮いただくことにした。この前例によって、天皇の孫にあたる眞子内親王殿下の場合は1億5250万円の9割にあたる1億3725万円になるだろうと予想されていた。

 ただし、眞子内親王殿下が一時金の受け取りを辞退されたことで、内閣総理大臣や衆議院議長など、立法府、行政府の代表8名で構成されている皇室経済会議を開催せずに一時金を支給しないことを宮内庁が決定した。この決定に至るまでの法解釈が正しいのかどうかは今後、国会で議論されるだろう。

■今後の渡米に向けて

 眞子内親王殿下と小室圭氏は10月26日に婚姻届を提出し、その日の午後にお二人で記者会見に臨まれる予定だ。婚姻届をどこの市区町村に提出するのかはわからないが、前例どおり、皇嗣職職員が代理で提出すると思われる。

 婚姻が成立すれば、宮内庁は天皇と皇族の戸籍にあたる皇統譜から眞子内親王殿下を除籍する。一方、役場では新しい戸籍を編製する。この二つは同時並行的に行われる。

 新しい戸籍が編製されれば、小室眞子さんは戸籍謄本を交付してもらい、パスポート交付の申請をする。パスポートができると、米国大使館にビザの申請をする。米国のビザの種類は複雑だが、何らかのビザを取得された後、米国に渡る。順調に手続きが進めば11月の中旬には渡米できるだろう。

■法令と国民感情

 以上、説明したことは法令や前例に基づいたものであり、国民感情はまた別の話である。

 憲法で象徴天皇制度を定めているが、この制度が名実ともに成立するためには国民の支持が重要であり、天皇や皇族と国民との相互の信頼関係、敬愛関係は不可欠である。皇族は象徴ではないが天皇の一族である。国民との精神的な結びつきは天皇と一体で捉えるべきだろう。

 眞子内親王殿下の結婚は私的なことであり、今回のような形であっても前述のとおり法的には問題はない。しかし、納得していない国民も一定数いることを皇室、宮内庁はどう捉えるのか。

 また、結婚に限らず、天皇や皇族の公と私のバランスはどうあるべきなのか。我々国民もこの問題に真摯に向き合っていく必要がある。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】