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今日1月13日は「サッカーゴール等固定チェックの日」 サッカーゴール等の転倒事故を防ぐ ~その2~

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
(写真:アフロ)

 前回、サッカーゴールやハンドボールゴールの転倒時の危険性について明らかにした経緯を紹介した(2018年1月5日配信「サッカーゴール等の転倒事故を防ぐ~その1~」)。しかし、危険性を指摘するだけでは「予防」のスタートラインに立っただけで、実際の予防にはつながらない。ゴールの固定が不十分であれば、今日にもまた転倒事故が起こる可能性がある。身近にあるゴールの固定状況を、すぐにチェックすることが必要だ。

◆サッカーゴール等固定チェックの日

 そこで、二人の子どもが亡くなった今日1月13日を「サッカーゴール等固定チェックの日」に制定し、その日を中心にゴールの固定状況をチェックしてもらうことを広く社会に呼びかけることにした。教員の方は自分の勤務校で、中高生なら自分が通っている学校で、市民の方は近所の運動場のゴールのチェックをお願いする、という具合だ。幸いなことに、関連諸機関のご協力をいただける見込みである。固定具を製造しているメーカー二社(下記参照)にも協賛をいただくことになった。この場をお借りしてお礼を申し上げたい。

 Safe Kids Japanのウェブサイトに「サッカーゴール等固定チェックの日」特設サイトを設置したので、ぜひこのサイトをご覧いただきたい。サッカーゴール等を固定する活動の輪を広げるために、ゴールを固定している様子を撮影し、その写真をSafe Kids Japanのウェブサイト上で共有する「フォト・シェアリング」という活動を開始した。固定チェックの様子を撮影し、Safe Kids Japanに送っていただきたい。

◆こんなふうに呼びかけてみよう

 自分の学校や、いつも使っている運動場で、サッカーゴールやハンドボールのゴールをチェックしてみよう。

□ サッカーゴール・ハンドボールゴールは、倒れると大きな衝撃力が発生します。

□ 倒れたゴールに当たると、頭蓋骨骨折や、腹部外傷を負います。

□ ゴールがきちんと固定されているか調べます。

□ 固定されていないゴールは、固定するよう管理者にお願いします。

□ ゴールに飛びつくと、一人が飛びついただけでも簡単に倒れます。

□ ゴールに飛びつこうとしている友達を見かけたら、やめるように言います。

□ ゴールを運ぶときは、10人以上で運びます。

◆ゴールを固定するための具体的な製品

株式会社 ルイ高  

有限会社 太悦鉄工 

◆皆に役割がある

 教員:予防につながるデータをとる。調査に協力する。ゴールの固定をチェックする。児童・生徒に指導する。

 日本スポーツ振興センター:データをまとめる。提供する。経年変化を見る。

 工学者・医師:データを分析する。実験などで発生メカニズムを解明する。

 弁護士:法的な問題を考える。

 企業:安全な製品を作る。

 安全基準の担当機関(レギュレータ):軽量なゴールの基準など、取り扱いやすく、安全な製品のための安全基準を作る。

 メディア:危険性とその予防法を合わせて広報する。

 スポーツ庁:全体をマネージする(例:専門家による分析委員会や継続的な評価の仕組みを作る)。

 これまで、事故が起これば、教育委員会や文科省から「通知」が出されるだけであった。よく考えてみれば、ひとりの人ができることは非常に限られている。教育委員会や行政官を非難しても、彼らだけでできることはほとんどないといってよい。それぞれの人が自分の役割を認識し、皆が共通のゴールに向かって協働して取り組む(コレクティブ・インパクト)ことが不可欠である。

 前回紹介したように、昨年夏にはこれらすべての人をつなぐ活動を展開することができた。事故の予防活動として良いモデルを作ることができたと考えている。ただ、残された課題もある。ひとつは、現場でゴールの固定状況をチェックするシステムがうまくいくかどうか、もうひとつは、この活動でゴールの転倒事故が減るのかどうかである。

 固定状況のチェックは「フォト・シェアリング」の応募内容、特に写真でチェックすることができるはずで、その結果はまた報告したい。ゴールの転倒事故が減ったかどうかは、日本スポーツ振興センターの災害共済給付のデータを追っていけば確認でき、正確に評価することができる。

 今日、「フォト・シェアリング」という新しいタイプの傷害予防活動をスタートさせた。今後は、PDCA(Plan-Do-Check-Action)に沿って活動をし、その経緯は定期的に報告していく予定である。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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