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3年ぶり開催!山科の義士まつりと赤穂義士ゆかりの地へ

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
岩屋寺前に並ぶ赤穂義士の行列(※以下の写真も全て筆者が撮影)

 まずは京都における赤穂義士の聖地とも言える岩屋寺大石神社を紹介したい。

 そもそも歴史上「赤穂事件」と呼ばれる討ち入りを含む一連の事件は、元禄14(1701)年3月14日、江戸城松之大廊下で、赤穂藩主浅野長矩吉良上野介に斬りかかった責めを受けて即日切腹、お家取り潰しが決まったことに端を発する。

 この悲報を受け取った国元の家老大石内蔵助は、赤穂城に籠城して江戸幕府に対抗するか、城を明け渡して恭順するかの選択に迫られたわけだが、浅野家の再興を目指すことを大前提に城を明け渡し、位の低い家臣に分配金を手厚くするなどして、藩論を見事にまとめ上げ、戦いを回避することに成功した。

 その結果、大石らは赤穂を去ることになり、この時に移り住んだのが京都の山科であり、岩屋寺の前に新しく住居を建て、1年あまり過ごすこととなった。ここでは浅野家のお家再興を画策するとともに、江戸の急進派をなだめながら時を過ごしている。しかし最終的にはお家再興の希望が断たれたために、吉良上野介討ち入りに舵を切り、この地を離れることとなった。

 討ち入り後に大石の邸宅や土地は岩屋寺に寄進され、岩屋寺の前には大石の邸宅跡が残り、岩屋寺堂内では、大石が残した赤穂義士の位牌大石の遺品、少なくとも幕末には造られていたという四十七士の木像を拝観できる。また明日12月14日から1月28日の初不動の日までは、本尊の大聖不動明王が御開帳される。

秋は紅葉、春は枝垂れ桜が美しい
秋は紅葉、春は枝垂れ桜が美しい

 岩屋寺のすぐ北側に鎮座する大石神社は、昭和10年に浪曲師の吉田奈良丸が発起人となって創建された。祭神は大石内蔵助のため、大願成就のご利益をもとめて今でも多くの参拝者が訪れる。境内に植えられた大石桜は早咲きの枝垂れ桜で、本殿横には天野利兵衛が祭神となっている義人社もある。

春は隠れた桜の名所となる
春は隠れた桜の名所となる

 大石神社の北西に位置する花山稲荷神社は大石が度々訪れたと考えられており、大石が沈思黙考したとされる断食石や、仲間の血判を押したとされる血判石も残り、本殿裏側には大石が寄進した鳥居も立てかけられている。

 近年の調査で本殿の屋根裏から、討ち入りの前年の日付の入った進藤源四郎が寄進したことが示された棟札が発見されており、大石の親戚であり、大石を世話した進藤家がこの神社に深くかかわっていたことが証明され、大石ゆかりの伝承も確定的となった。

大石内蔵助が食を断って座ったとされる石
大石内蔵助が食を断って座ったとされる石

 明日12月14日の義士まつりの行列は、午前10時に毘沙門堂前を出発、浅野家の菩提寺である瑞光院の前を通り、旧三条通から外環状線を南下し、東部文化会館でパフォーマンスや踊りが披露される。その後、山科区役所を経て、岩屋寺と大石神社に14時30分~15時に到着する予定となっている。ぜひ3年ぶりに開催される山科をあげての義士まつり、行ってみて欲しい。

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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