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5月末から6月初旬の京都のお勧め散策エリア

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
詩仙堂の入口、竹林が見た目にも涼し気 ※以下の写真も全て筆者が撮影したもの

 5月末~6月初旬のこの時期にお勧めしたい散策コースは一乗寺界隈だ。

 中心となるのは詩仙堂石川丈山が終の棲家として59歳で建てた住宅で、90歳まで風雅を愛して悠々自適の生活を送った。

 この庭園も丈山が作庭したものだが、サツキの刈込が特徴。これは遠景の楓の木々と手前の砂地の庭園の接着剤的な役割を果たしており、新緑の時期や紅葉の手前の時期などは、遠近感がつかみにくくなっており、より奥行きを感じやすい。

サツキの満開時期は、通年なら5月末~6月初旬
サツキの満開時期は、通年なら5月末~6月初旬

 詩仙堂の東側の山手には八大神社もあり、ぜひ足を延ばしたい。永仁2(1294)年に創建され、古くから「北天王」(北の祇園)と称された。本殿西側には宮本武蔵が吉岡一門と決闘した当時の「下り松(さがりまつ)」の古木が保存されている。

本殿横には宮本武蔵の銅像も立っている
本殿横には宮本武蔵の銅像も立っている

 続いて立ち寄りたいのは、同じくサツキの刈込の庭園が美しい金福寺。この金福寺に行く途中の道には西本願寺の北山別院があり、親鸞聖人が六角堂に百日参篭した際に、息継ぎの水を求めた井戸が今も残されている。隣の保育園の名前は、その逸話から聖水保育園と名がついているのも面白い。

北山別院の境内左奥へ進むと山際に保存されている
北山別院の境内左奥へ進むと山際に保存されている

金福寺は安恵僧都によって貞観6(864)年に創建され、江戸中期に鉄舟和尚が再興した。鉄舟と親しかった松尾芭蕉がこちら訪れたことから名がついた芭蕉庵は荒廃し、のちに芭蕉を慕う与謝蕪村らによって復興した。

 また、NHK大河ドラマ『花の生涯』のヒロインであった村山たか女が晩年を過ごした寺院としても知られている。

 入口から入ってすぐの庭園にサツキの刈込が広がり、奥には芭蕉庵の屋根が見え、その先には墓地があって、与謝蕪村や四条派の祖となった松村呉春の墓もある。

サツキの満開時期は詩仙堂とほぼ同様、市内よりも少し遅め
サツキの満開時期は詩仙堂とほぼ同様、市内よりも少し遅め

 詩仙堂や金福寺の西側には一乗寺下り松の子孫が現在もその姿を伝えており、宮本武蔵の決闘の現場であったことを示す碑も立っている。

 この前の道は雲母坂(きららざか)といって、都から比叡山に登る正式なルートで、勅使もこの道を通ったため勅使坂とも呼ばれた。途中の茶店風のお店にはきらら漬けといって、この店でしか買えない逸品が伝わる。白みそと小茄子をあえた独特の風味を楽しんでほしい。

平成26年から5代目の松となった
平成26年から5代目の松となった

 最後に立ち寄りたいのは一乗寺中谷。でっちようかんが名物の老舗和菓子店だが、近年は、ご主人が和菓子、パティシエである奥様が洋菓子を担当し、二人のコラボレーションによる和洋折衷の商品が人気。

 筆者の一押しは、「絹ごし緑茶てぃらみす」、ふわっとした絹ごしのような上層部の下には、緑茶のケーキが重層構造で配置。上にのっている黒大豆、うぐいす豆、小豆が独特の外観に彩りを添えている。

この撮影時は2008年、すでにその頃から大人気だった
この撮影時は2008年、すでにその頃から大人気だった

 5月末~6月初旬のこのお勧めのコース、ぜひ巡ってみてほしい。

※サツキの見頃は年によって異なり、今年は早めに推移しているのでご注意を。

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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