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「京の冬の旅」で特別公開中の東本願寺 御影堂門を訪ねて

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
御影堂門は木造の山門として国内最大級(※以下の写真も全て著者が撮影)

 京都の冬の恒例イベントとなっている「京の冬の旅」。今回はこの企画に初参加となった東本願寺の御影堂門を2月5日(土)に訪ねた。

 そこに至るまでのお勧めの散策コースを紹介しよう。2月に入って梅の開花状況も気になるので、スタートはJR梅小路京都西駅から。もちろんお目当ては梅小路公園の梅林だ。加えて今、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも話題の平清盛の屋敷跡も見学できる。

 この日はたまたま「手作り市」も開催中であった。賑わいを抜けて駅から東へと進むとやがて右手に清盛の屋敷跡の掲示板が登場する。

 鴨川の東に位置する六波羅に拠点を置いた平家一門であったが、清盛は西国経営を睨んでこの一帯にも拠点を作っており、子の重盛や異母弟の頼盛も屋敷を構えていたという。しかし清盛は熱病に冒されて没し、さらに平家一門の「都落ち」によって焼失してしまったという。

清盛の栄華を伝える掲示板。梅小路公園の南半分は屋敷跡と推定
清盛の栄華を伝える掲示板。梅小路公園の南半分は屋敷跡と推定

 気になる梅林は、紅梅が早くも2分から3分咲きといったところか。白梅はこれからなので、今月いっぱいは充分に楽しめそうだ。

公園の南東部に広がる梅林。現時点では少し早めに開花が進んでいる
公園の南東部に広がる梅林。現時点では少し早めに開花が進んでいる

 その後、塩小路通を東へ進むと、「人形供養の寺」として知られる宗徳寺へ。粟嶋堂とも呼ばれ、女性の病気平癒でも信仰を集めてきた庶民的な寺院だ。江戸後期には、与謝蕪村も娘の病気平癒祈願で訪れており、句碑が残っていた。

花街で賑わった島原も徒歩圏内。多くの女性が通ったという
花街で賑わった島原も徒歩圏内。多くの女性が通ったという

 さらに東へ進み、堀川通との交差点南西角、リーガロイヤルホテル京都の前には新選組の不動堂村屯所跡の石碑が建つ。壬生、西本願寺と屯所を移してきた新選組の最後の屯所場所として知られている。

 その後、歩道橋を使って北西方面へ渡り、油小路通を北へ向かうと、幕末に「油小路の変」の現場となった本光寺の前に到着する。こちらは新選組の参謀であった伊東甲子太郎が非業の死を遂げた場所だ。現在も新選組ファンが多く訪れる。

北辰一刀の使い手であった伊東甲子太郎も、新選組の突然の襲撃に命を落とした
北辰一刀の使い手であった伊東甲子太郎も、新選組の突然の襲撃に命を落とした

 七条通に出て再び堀川通に向かうと、北西角に見える大寺院が興正寺だ。浄土真宗の興正寺派の大本山で、明治9年に西本願寺から独立した。門を潜ったところに植えられている2本の梅は、向かって左が白梅、向かって右が紅梅で、紅梅はすでに咲き始めていた。

 その北側に広大な境内を持つのが西本願寺、浄土真宗本願寺派の大本山だ。安土桃山時代から江戸時代にかけての国宝建築の宝庫で、御影堂と阿弥陀堂は常時参拝が可能。

 圧巻は「水吹きの銀杏」と呼ばれる樹齢300年を超える巨木だ。御影堂前に大きく枝を広げており、火災からお堂を守ってきたという伝承が残る。

今は冬枯れの季節だが、やがて新緑から黄葉へ。葉がつくとますますスケールアップする
今は冬枯れの季節だが、やがて新緑から黄葉へ。葉がつくとますますスケールアップする

 寺院を出て正面通を通って東本願寺へ向かう。この辺りは西本願寺のかつての寺内町の雰囲気をよく残しており、仏壇仏具の店が軒を連ねている。

 その中でひと際目立つ建物が伝道院。明治45年に真宗信徒生命保険株式会社の社屋として、伊東忠太氏の設計によって造られ、現在は西本願寺の研修施設となっている。イスラム式ドーム屋根、イギリス風の六角塔屋、和風の千鳥破風をあしらった壁面など、多くの建築様式を融合させた外観は見ごたえ充分だ。

建物周りのユニークな霊獣を乗せた石柱も見どころ
建物周りのユニークな霊獣を乗せた石柱も見どころ

 最後に到着した東本願寺では、特別公開中の御影堂門へ。明治44年の再建で、高さ27メートルあり、木造の山門では国内最大級。二階の内部は釈迦如来を中心に弥勒菩薩と阿難尊者が脇侍として祀られている。今回は幻の天井画となった竹内栖鳳の下絵も、一部がパネル展示で紹介されていた。

 そして一番の見所はなんといっても抜群の眺望。正面には比叡山から始まる東山三十六峰が綺麗に見渡せ、北西方向には愛宕山、裏側にはこれも国内最大級の木造建築である御影堂を正面に見下ろし、175967枚の屋根瓦が整然とならぶ様子も一目で見ることができる。南側には「お東さんの蝋燭」という呼び名がぴったりの京都タワーの絶景も。

門前は、手前の道路を廃止して公園にするための拡張整備が進んでいる
門前は、手前の道路を廃止して公園にするための拡張整備が進んでいる

 最後にこの門の柱には、柱を保護するために金具が巻かれていて、そこに16頭の獅子が描かれている。寺院を守るべくらんらんと目を見開いているが、この中に、日光東照宮の「眠り猫」ならぬ「眠り獅子」がいる。これも「満つれば欠くる世の習い」のひとつなのか。最後にぜひ見つけてみてほしい。

門の正面に向かって一番左側の柱の裏側を探すのがポイント
門の正面に向かって一番左側の柱の裏側を探すのがポイント

京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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