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京都の隠れた紅葉エリア・上高野

山村純也京都の魅力を発信する「らくたび」代表
上高野・蓮華寺の山門内の落葉/筆者撮影

 京都の東山を走る京阪電車から、鞍馬、八瀬に伸びる叡山電車に乗り換え、八瀬方面の終着地点である「八瀬比叡山口」駅で下車すると、今や紅葉の人気エリアとなった八瀬歩きが楽しめる。「2000円の拝観料」でも話題になっている瑠璃光院を横目に進むと、下鴨神社とゆかりの深い御蔭神社が山深くに鎮座し、さらに高野川沿いに閑静な居住地を下るとお目当ての「上高野」というエリアに到着する。このエリアは古代豪族小野氏が拠点を置いた歴史的エリアであり、中心となる寺院としては「蓮華寺」、神社としては「三宅八幡宮」が挙げられる。直接最短ルートで上高野を目指すなら、三宅八幡駅か八幡前駅で下車すると便利だ。

 蓮華寺は天台宗の寺院で、石川丈山作とされる池泉式の庭園が美しい。副住職のユーモアあふれる解説に耳を傾けていると、蓬莱、鶴島、亀島、灯籠など計算し尽くされて配置された石と自然が織りなす世界が、まさに「悟りの境地」を現す様に感じられる。本堂前には笠の形が独特の「蓮華寺型灯籠」も見ることができる。

蓮華寺の池泉庭園 /筆者撮影
蓮華寺の池泉庭園 /筆者撮影

 時間的余裕があれば、蓮華寺の東隣の崇道神社にも立ち寄って参拝したい。長岡京で謀反の疑いをかけられて抗議のために食を断って亡くなったという早良親王を祀っているとともに、境内には小野氏ゆかりの小野神社と小野毛人(小野妹子の子)の墓もある。続いてのんびりとした山沿いの道を西へ歩くと、10分ほどでまさに知られざる寺院である三明院へ到着する。明治になって山形県から移転してきた比較的新しい寺院であるが、フォトジェニックな多宝塔はすっかり上高野を代表する風景となっている。境内は山門の扉が開かれ、少し階段を上ると多宝塔の横からは、上高野の長閑な風景が見下ろせる。

三明院の紅葉/筆者撮影
三明院の紅葉/筆者撮影

 最後は「疳の虫封じ」のご利益である三宅八幡宮へ。こちらは境内のいたる所が神使(しんし)である「鳩」だらけなのが面白い。極めつけは門前名物までが鳩餅。小野妹子が宇佐八幡宮から勧請したというこの古社では、三明院同様に紅葉を独り占めできる可能性大。かつて至るところに水車が回っていたという水の流れも美しい上高野エリア。ぜひ紅葉以外の時期でもゆっくり訪れてほしい場所だ。

三宅八幡宮境内の紅葉/筆者撮影
三宅八幡宮境内の紅葉/筆者撮影
京都の魅力を発信する「らくたび」代表

1973年、京都生まれ。立命館大学在学中にプロの観光ガイドとして京都・奈良を案内。卒業後は大手旅行会社に勤務。2006年4月、京都観光を総合的にプロデュースする「(株)らくたび」を創立。以後、ツアープロデューサー、ツアー講師として活躍。2007年3月に「らくたび文庫」を創刊。現在、NHK文化センター、大阪シティーアカデミー、ウェーブ産経、サンケイリビング新聞社の講師、京都商工会議所の京都検定講師も務める。著書・執筆に『幕末 龍馬の京都案内』、『京都・国宝の美』、『見る 歩く 学ぶ 京都御所』(コトコト)など。京都検定1級取得。

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