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選挙が終わって改めて考える「日本を変える」ためのたった一つの方法

山田順作家、ジャーナリスト
与党勝利、改選過半数で「想定通り」の結果に(写真:つのだよしお/アフロ)

 史上2番目に低い投票率48.80%を記録した参議院選挙が終わった。この「超」がつく低投票率は予想されていたものの、さすがに50%を切ると衝撃である。なにしろ、半分以上の人が選挙に行かない。つまり、半分以下の人の意向で日本という国が動くことになるからだ。

 ここまで、投票率を下げたのは、やはり若い世代である。18~19歳世代、20~29歳世代は40%を切り、30〜39歳世代も40%台がやっと。つまり、若い世代はほぼ3人に1人しか投票に行っていない。

 そのため、毎回のように若者批判が起こる。「若者は選挙に行け」と、いう苦言オヤジが登場する。しかし、若者たちに言わせると、「入れたい人がいない」「行ったところでなにも変わらない」となる。この無関心が毎回繰り返されるのが、日本の選挙ではないだろうか。

 今回、若者の無関心に挑戦するように、『若者よ、選挙に行くな』と題した動画が話題になった。しかし、話題になっただけで終わった。

 若い世代を批判するのは簡単だ。しかし、彼らが言う「行ったところでなにも変わらない」は事実である。

 ひろゆき氏が「若者が選挙に行けば政治が変わると言ってる人は全て嘘つき。2〜30代の投票率が100%になっても40代以上が40%投票するだけで同数。40代以上の投票率は常に50%近い。これは僕の考えとかじゃなくて単に事実」とツイートしたが、まさにその通りだ。

 

 高齢社会になり、構成人口比を見れば、若い世代は高齢世代に人口でかなわない。よって、いまの若者は、無関心というより、経済的には極めて合理的な行動をしていることになる。しかし、この合理的な行動が、この国をダメにしていく。

 今回の選挙は、争点がなかった。なかったというより、メディアが争点を国民に示さなかった。そのためか、与党はアベノミクスも消費税もスルーし、安倍首相は「改憲について議論する政党か、議論しない政党かを選ぶ選挙」と言い続けた。

 世論調査によると、現在、憲法改正は国民の関心事ではない。関心があるのは、やはり日々の暮らしだ。

 ところが、暮らしとなると、与野党ともすべて社会主義政党と化すので、どこを選んでも同じだ。与野党の掲げた政策を、年金対策に絞って比較すると次のようになる。

自民党:「10月から収入の少ない年金生活者に年間最大6万円の福祉給付金を支給する」「低年金者への福祉的な措置として最大月額5000円を支給」

立憲民主党:「安心して医療や介護が受けられるよう年金の最低保障機能を強化」

国民民主党:「低所得の年金生活者に対して最低でも月に5000円を給付」

共産党:「基礎年金額が満額以下の年金生活者に一律で月額5000円を上乗せ」

 

 ようするにバラマキ。国民から徴収した税金を、ある一定の層にだけ分配とするという政策である。これ以外にも、最低賃金の引き上げ、教育無償化の促進など、すべて社会主義的政策であり、言葉を換えれば「怠け者保護政策」だ。

 日本のほとんどの政治家がやろうとしているのは、自分の金ではない国民の金を使い、怠け者を大量に増やそうとしていることだ。その「とばっちり」をもっとも受けているのが、若い世代である。とくに、年金などは、若者たちが必死に働いて稼いだ金の一部を、老人たちが奪っているにすぎない。

 年金を充実させ、なんで老人の暮らしを安定させなければならないのか? 2000万円不足のままでいいではないか? なんで、「人生100年」に無理やり引き延ばしてしまうのか? 長生きは本当にいいことなのか?と問う政治家は、この日本に1人もいない。

 老人が長生きして、死ぬまで楽をして暮らそうとすれば、社会はいずれ立ちゆかなくなる。一生懸命働く若者に報いないで、老人を手厚く保護する社会はやがて滅亡するだろう。

 そこで、若者がそんなに選挙に行かないなら、全有権者がやるべきなのが、50歳以上、少なくとも60歳以上の候補者に投票しないことだ。そうしないと、この“老害ニッポン”は変わらない。

 安倍首相もこの9月で65歳になり、高齢者の仲間入りをする。共産党の志位委員長はもっと早く、今月で高齢者の仲間入りだ。

 政党、政策などどうでもいいとは言わない。ただ、それより優先するのが若いこと。政治家は1人でも多く、若い世代にしなければならない。政治家に定年制を導入するのは、年齢差別とされて無理があるので、この方法しかない。

 私はすでに高齢者だが、ここ10数年、候補者のなかでもっとも若い人、それも女性に票を入れている。与野党、無所属、諸派など一切無視してそうしている。

 

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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