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「スマホ学校持ち込み禁止」の見直しで議論沸騰。このままでは日本の子供たちに将来はない!

山田順作家、ジャーナリスト
スマホは教師よりよほど有能ではないのか?(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

 2月19日、柴山昌彦文部科学相が、公立の小中学校に通う子供が、学校に携帯電話やスマートフォンを持ち込むことを「原則禁止」としてきた指針について「見直す」と表明した。これを聞いて、耳を疑った人も多かったのではないのか?

 なぜなら、小学生から高校生まで、いまやスマホを使っているのは当たり前、日常生活の一部になっているからだ。

 

 ところが、教育現場は違う。文科省は、2009年に「小中学校は持ち込みを原則禁止」「高校は校内での使用を禁止」という指針を出し、これまで、それが守られてきのである。だから、子供たちは、学校ではスマホを隠し持っていた。このことは、多くの教師も知っていて黙認してきた。

 しかし、今回、事実上の解禁が宣言されたことで、テレビなどではさっそく識者や保護者などに、賛否を問うことになった。その結果は、さらに耳を疑うものだった。なぜなら、賛否がほぼ拮抗していたからだ。

 こんなことがあっていいのだろうか?

 正直、議論をしている識者も親たちも、今後、時代がどうなっていくのか?が、まったくわかっていないと思わざるをえなかった。失礼だが、賛成者も反対者も、アタマのなかは完全に石器時代ではないだろうか。

 スマホ解禁は、災害時に子供と連絡を取り合うために必要だという。しかし、解禁すると子供たちはSNSやゲームに夢中になり勉強がおろそかになる。また、学校での管理責任はどうするのかということで、ルールづくりが必要だという。

 議論はだいたい、このようなところに落ち着いた。聞いていて、ただあきれて、絶句するほかなかった。

 

 今後、私たちはAI時代を生きていく。つまり、人知を超えたコンピュータと共生していくことになる。したがって、これからの子供たちにいちばん必要なのは、コンピュータを理解すること、そしてそれをいかに使いこなすかということだ。それを真っ先に教えなければならないのが、教育現場ではないだろうか。

 その教育現場に、スマホを持ち込むのはいいが、使わせないというのだから、信じがたい。スマホはコンピュータではないのか?

 日本の教育現場は、ICT教育に大きく遅れてきた。いまだに、多くの学校で黒板とノートで授業が行われている。ICT教育をするためには、電子黒板、タブレット、PC、スマホが必要だ。これがなくてはプログラミング教育も、アクティブラーニングもできない。

 となれば、スマホは必需品ではないだろうか?

 いずれ、ネットと人間の脳が接続される「ブレイン・マシン・インターフェース」がやってくる。人間は「ポストヒューマン」になる。そんな時代を、いまの小学生、中学生は生きていかなければならない。なのに、「学校ではスマホは電源を切りカバンのなかにいれておくこと」なんてバカな話があるだろうか?

 フランスやスウェーデンでは、学内でスマホを使うのは禁止されている。しかし、ICT教育は進んでいる。アメリカではほとんどの州でスマホ持ち込みは自由だし、ICT教育はどんどん進んでいる。子供たちはタブレットで宿題、予習、復習をやっている。

 要するに、問題はスマホにあるのではない。スマホをはじめとするコンピュータをどう使いこなすかを、これから育っていく子供たちに教えなければならない。

 このままでは、日本の教育は、子供たちの将来を奪うだけではないか。

 すでに日本でも、一部の私立校や一部の県で、ICT教育が進んでいる。都立高校では2020年からスマホを解禁し、個人のスマホを授業で活用するという。また、和歌山県では一部のモデル校でプログラミング教育が始まろうとしている。しかし、日本の多くの学校はWiFi環境すら整備されていない。

 このようにICT教育を進めているところと、おバカな教育員会がスマホ解禁をいまだに議論をしているところとは、今後、大きな差がつくだろう。

 

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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