【PR】「サッカー五輪代表に金メダルなんか不要!」 サポーターの成熟と観戦力アップがチームを強くする

2020年、いよいよ東京でオリンピックが開催されます。

開催国としてのアドバンテージに加え、従来の競技人気の高さから、特に注目を集める種目の1つがサッカー。上位進出を期待するニュースばかりが連日報じられる中、「本当に金メダルを目指すことが、サッカー日本代表のためになるのか?」とあえて問題提起するのが、スポーツライターの杉山茂樹さんです。

サッカーワールドカップを10大会連続で現地取材、五輪も夏冬あわせ9度取材という豊富なキャリアを誇る杉山さんは、「サッカーらしさ」の追求をモットーに、ヤフーニュース個人にて既に600本以上の記事を執筆しているサッカー観戦のプロフェッショナルでもあります。

2013年5月から続く有料連載『たかがサッカー。されどサッカー』でも、刺激を求めたい・現状に満足していないサッカーファンに向け、スポーツとしてのサッカーの魅力を忠実に発信し続けることで人気を博している杉山さん。

今回は、五輪代表の目指すべきところやサッカー自体の本来の楽しみ方について、じっくりとお話を伺いました。

本当に「目標は金メダル」でいいの? 森保監督にもの申す!

五輪代表に対し楽観的な展望を語る専門家が多い中、あえてその流れに逆らうのが自分の「立ち位置」という杉山氏
五輪代表に対し楽観的な展望を語る専門家が多い中、あえてその流れに逆らうのが自分の「立ち位置」という杉山氏

――2020年の日本サッカー界は、五輪の影響で大いに盛り上がりそうですね。

杉山:もちろん僕も楽しみにしています。ただ、冷や水を浴びせるようで申し訳ないのですが、心配なのは森保監督が「金メダルを取る!」と繰り返し宣言していることです。

もともとサッカーは不確定要素が多く、勝ち続けることが非常に難しいスポーツです。さらに五輪は総当たり方式や長期に及ぶリーグ戦形式ではなく、短期トーナメントによる一発勝負。金メダル宣言なんて、何の根拠もない根性論・精神論と同じなんです。

そもそも日本はFIFAランキングも低く、過去に優勝経験もない国です。ブックメーカーの現在の倍率から考えても、金メダルを目指すというのはさすがに言い過ぎでしょう。

――盛り上がりだけが先行し、現実を直視できていない空気があるわけですね。

杉山:森保監督の代表監督としての適性にも疑問があります。サンフレッチェ広島を率いた5年間では3度のJ1制覇という抜群の実績を残していますが、クラブと代表は別物です。

登録メンバーは18名のみ、決勝まで6試合という短期決戦を、メンバーを固定するのではなく複数パターンの組み合わせでトーナメントを勝ち抜いていく能力が監督には必要とされます。

残念ながら森保監督は、これまでのキャリアを見ている限り、こういう選手のやりくりを苦手にしているタイプだと思います。

さらに五輪代表の選手選出には、オーバーエイジ枠の問題や、久保や堂安ら海外組を本番で本当に招集できるのかという不確定要素も多い。間違っても「金メダル」など口にしていい状況ではありません。

というより、そもそもオリンピックは負けても別にかまわない大会なんですから、勝ちにこだわる発言をすること自体がおかしいのです。

――負けても別にかまわない……! テレビなどではまず耳にすることができない意見ですね。

杉山:五輪で意味があるのは勝敗ではなく「将来ワールドカップで活躍できる代表選手を何人輩出できたか」という点だけです。勝つこと自体はもちろんいいことですが、金メダル=世界最強かというと、全く違います。

サッカー界における五輪の位置付けは、アンダーカテゴリーとよばれる若手のための1つの大会に過ぎません。

オーバーエイジ枠の選手を除けば23歳以下の選手しか出場できず、ヨーロッパや南米といった強豪地域の出場枠も少ない大会で勝つことに意味はありません。

大会後にA代表に数名送り込めたかという育成実績のほうが、五輪の勝利そのものよりよほど大きな価値ありますよ。

アンダーカテゴリーからA代表に昇格できるのは1年でせいぜい1〜2人ぐらいで、0人という年もありますから、五輪後に3人も送り込めれば期待以上の成果と言えるでしょう。

――日本における五輪代表に対しての期待値や位置付けはおかしい、というわけですね。

杉山:もちろん五輪という大舞台を経験してもらうこと、強豪国と戦うことで自分のレベルを高めるということは、長期的にみれば選手にとって大きな成長の糧となります。

ただ、大会自体の目的はあくまでもA代表のための若手育成の場です。だからこそ、メンバーを固定して戦う傾向が強い森保監督では、その目的が達成できないのでは、という懸念があるのです。

メディアも闇雲に金メダルや目先の勝利への期待をあおるのではなく、育成年代として正しく機能しているか、という目線で正しく評価をしなければいけません。

日本代表が本当に強くなるために必要なのは、サポーターの成熟だ

サッカー観戦のプロフェッショナルという自負があるからこそ、今の日本のサポーターには苦言を呈したい
サッカー観戦のプロフェッショナルという自負があるからこそ、今の日本のサポーターには苦言を呈したい

――今の日本サッカーにおける「サポーター」を、杉山さんはどう捉えてらっしゃいますか。

杉山:観戦の目的が「自分が楽しむことに寄りすぎている」というのは、日本のサポーターの非常に良くない面だと思います。

クラブの試合に行けば、ホームチームの応援歌を90分間歌いっぱなし。ゴールに絡むような場面ではさすがに歌も止まりますが、それ以外はまるで試合中に歌い続けることこそがサポーターの仕事と言わんばかりの雰囲気があります。

「You'll never walk alone」という応援歌で世界的に有名なリバプールのサポーターですら、スタジアムで歌うのは2回だけ。みんなで一致団結すること自体は悪くありませんが、もっと試合自体をじっくりと見て、チームの応援をしなければいけません。

――たしかに、サポーターといえばゴールネット裏で終始歌っている人たち、という印象が強いですね。

杉山:象徴的だったのは、去年の優勝争い大詰めの終盤で開催された「川崎フロンターレ対横浜マリノス」の一戦でした。ゴールに絡む場面で審判が微妙な判定を下したにもかかわらず、サポーターは抗議のブーイングを送るわけでもなく、ただ歌い続けていました。

もちろん審判の判定は絶対ですから、サポーターが騒いだところで覆るわけではありません。ただ一方で、審判も人間です。スタジアム全体からの抗議の空気が強ければ強いほど、次のジャッジがホーム側に有利に働く可能性はあります。

だからこそ、ここぞという場面できちんと圧力をかけられるサポーターがいるチームは、ホームゲームではめっぽう強くなるんですよ。

――それこそが、単なるファンではなく「サポーター」としてのチーム貢献になるわけですね。

杉山:はい。それがサポーターとして必要な「成熟」なのだと思います。一方でサポーターの年齢幅が広がっていることに加え、ただ騒ぎたいだけの一過性の観客が一時期に比べて明らかに減っていることは、日本サッカー全体にとって良い傾向だといえます。

明らかに外れたシュートでも叫びまくる、ゴール裏で無意味にジャンプを繰り返す、試合であればとにかく騒ぐ、というのが日本サッカーの観戦スタイルとして定着している感じすらありましたが、そこは最近では改善傾向にあります。

しっかりと試合自体を見て、展開に合わせて声援を送るという本質的な応援へと、ようやく観戦スタイルが変わりつつあるのです。

――杉山さんの考える「良い試合観戦のスタイル」とは、どういうものでしょうか。

杉山:ゴールネット裏での応援もいいですが、やはりピッチ全体を俯瞰できる高い位置から観戦した方が、サッカーそのものをしっかりと楽しむことができます。

サッカーは戦術の比重が極めて高いスポーツであり、俯瞰で試合を見ることによって、「あの選手はドリブルが得意だけど、無謀な突撃を繰り返し過ぎているな」「あのエリアで選手がボールを受ければ、試合は動くな」などの監督的な視点が培われていきます。

そして、試合をどう楽しむべきかよくわからないときは、人に聞いたり調べたりすることも大切です。ヨーロッパではスタジアムでもバルでも教え魔のような人が必ずいて、私もよく一方的に話を聞かされました(笑)。

でもその結果として、サッカーに関するいろいろな知識を深めることができました。

知識がないまま試合結果だけを追うスタイルと、知識があるからこそ流れそのものを楽しめるスタイル。どちらのスタイルがよりサッカー観戦を楽しめるかは、いうまでもありませんよね。

――たしかにサッカーの本場というだけあって、ヨーロッパの観戦スタイルは日本に比べてずいぶんと成熟している印象です。

杉山:日本のサポーター文化は、まだまだ未成熟です。Jリーグ以前の日本リーグ時代では、自社のチームの応援に社員が駆り出されていただけ。なんとなく太鼓をたたき、ディスコ的なイベントの延長としてゆるく参加する程度の位置付けのスポーツでした。

今も試合の日はみんな12時前に集まり、スタジアム周辺を憩いの場として丸一日を過ごしています。これはヨーロッパでは考えられません。日本のメディアはもう少し「サッカーらしい観戦スタイル」について発信をしていく義務があると思いますよ。

結果だけではない「本質的なサッカー」を学んだほうが、ずっと面白い

サポーターである私たちが本質的なサッカーを知ることによって、日本代表にもポジティブな影響をもたらすはず、と熱く語る
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――スポーツライターとしての杉山さんが、サッカーの情報を発信していくうえで意識されていることはありますか。

杉山: サッカーは、他のスポーツと比べれば何でも自由に書いていいという特色があります。例えば野球の場合、チームの批判を繰り返すような記者は、すぐに出入り禁止になってしまいます。でもサッカーであれば、取材NGという場合を除けば、どれだけ批判的な内容であっても自由に書いていいんです。

それでも日本のサッカー報道はまだまだ手ぬるいらしく、海外の同業者からは「日本のメディアは、わざわざ招へいした外国人監督が結果を残せないような場合でも、なぜ強く批判をしないんだ?」と不思議がられるぐらいです。

――ヤフーでは、杉山さんは主にどういう情報を発信されているのでしょうか。

杉山:ヤフー以外のメディアの場合は、「今回はこういうテーマで執筆してください」というお題を都度与えられるのですが、ヤフーの場合は全てを自分で選べるため自由度が高いんですよね。おかげで、とにかく自由にのびのびと書かせてもらっています。

森保一ではなくアンジ・ポステコグルーこそ日本代表監督にふさわしいという主張とか、他の媒体では載せてもらえませんよ(笑)。そして、そういった記事を楽しんでもらえる方には、ぜひとも有料版『たかがサッカー。されどサッカー』で連載している記事も読んで欲しいですね。

――無料で発信されている記事にはない、有料連載ならではの価値は、どういうものになるのでしょうか。

杉山:ひと言で言えば、マニアックな視点の提供でしょうね。試合観戦の粋な楽しみ方から、選手の利き足とウイングの関係性、サッカー用語として乱発される「フィジカル」の本当の意味まで。とにかく、より深くサッカーを楽しめるようになるための情報発信を心がけています。

ヨーロッパにはサッカーの歴史と文化とが深く根付いており、専門家でなくとも豊富な知識を持つ人が多いですが、日本はまだまだ黎明期という段階です。

ヨハン・クライフのような偉人もいなければ、サッカー大学のような学校もないので、私たちがもっとサッカーを楽しむためには、自主的に正しい知識を身につけていくしかありません。

だからこそ、僕の有料連載記事を読んでもらうことで、より生のサッカー観戦を楽しめるようになって欲しいですね。それによってサポーターとしての成熟度は高まり、その結果として、応援するチームや日本代表も強くなっていくはずですから。

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杉山茂樹(すぎやま しげき)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−4」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

『たかがサッカー。されどサッカー』

【この記事は、Yahoo!ニュース 個人の定期購読記事を執筆しているオーサーのご紹介として、編集部がオーサーにインタビューし制作したものです】