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【中学受験】受験校や進学校をどう選ぶか?-入試問題で相性を確認する

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
(写真:アフロ)

首都圏の中学受験が佳境だ。筆者のところにも受験生達から様々な声が届きはじめているが、そのなかで気になるのが「問題」の印象についてだ。思考力入試や適性検査型入試など、特殊な入試が増加する中、一般入試の問題にも新傾向のものが混ざりはじめている。入試問題から分かることについて考えてみたい。

相性を「問題」で確認する

学校に足を運んで、場や人ととの相性を確認することは何よりも大事である。しかし、実際にその「先生」が担当するのかは分からないし、どんなクラスメイトと同窓になるかも分からない。面接を実施せず、ペーパーテストで合否を決める多くの学校において、どんな人格の生徒が入学してくるかは運である。もちろん、たった一度の面接で本質を見抜けるわけでもないので、面接があったとしてもよっぽど言動が個性的でない限り、偏差値で測れる学力が似通っていることくらいしか想定できない。ある有名進学校に通わせる保護者は、「まさか、いじめとかそういうことがあると思っていなかった。本人もショックを受けている」という。「担任の先生と全く合わなかった」という理由で不登校になった生徒も少なくない。理由は様々あれど、不登校になる生徒は公立でも私立でも、また偏差値にも関係なく存在する。そして最も多い理由が「人間関係をうまく構築できない」「授業が面白くない」「学校の思想やスタイルに合わない」という三つである。

そういう意味でも、私は入試問題との相性を確認することをお勧めしている。問題が面白いと思えるかどうかは、その学校の学びのスタイルとの相性を判断する基準になる。面白くない問題を必死に解けるようにトレーニングして合格したところで、その面白くない問題を出題する先生達の授業を6年間受けることになる。一方、面白いと思う問題であれば、当然解けるようになりたいという前向きなモチベーションで学べるし、探究的にアップデートしている実感があるため、合格に届かなくても充実した受験経験として成長のプロセスにしていくことができる。

学校の混乱は問題に出る

改革期の今こそ、その思想や混乱は問題に表れる。もしテーマや言葉遣い、問いの内容に違和感を覚えたなら、それは学校に対する違和感だとも言って良い。問題が混乱している学校は、筆者が知る限り職員室や授業も混乱している傾向がある。

実際、2月1日に受験してみて「がっかりした」という意見も耳にした。説明会で先生が言っていたような学びを目指しているのであれば、「こんな問題出すはずがない」というのだ。私も問題を見て、なるほどその通りだなと思った。思考力を大事にしていると言っているのに、内実はテーマに関連した「算数」の問題と、知識を問う問題が大半だった。その生徒は問題への違和感が学校への違和感に直結して、すぐに第一志望を変更し、無事に3日で入試を終えた。直前までネットで出願ができる学校が増えたことは、判断力のある受験生や家庭にとってはかなりのメリットだと言える。

多様化が進む学校ごとの入試に対応する統一模擬試験は現実的に不可能である。だから、偏差値などに左右されず、相性のいい出題をする学校に出会って、それに向けて学習することで自分に合った学びができると考える。受験生には、ぜひ、多くの学校の問題に触れて欲しい。もちろん、本番の入試での出題が今現状の学校を表している。迷っている受験生は、受験した感覚を、本気で問題に取り組んだときの感覚を大事に、進学先を選んで欲しいと思う。(矢萩邦彦/知窓学舎教養の未来研究所

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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