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ジェネレーションギャップに悩む人へ〜世代の違う人とうまくコミュニケーションをとるための3つのポイント

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
(写真:アフロ)

就活支援や研修で最も需要が多い分野の一つが「コミュニケーション力」です。教育業界の場合、「勉強に対するモチベーションアップ」や「質問のしやすい場作り」が求められますが、最も王道的な解決法は、生徒との関係作りにかかっています。信頼関係を築くには対話によるコミュニケーションが欠かせません。そこで今回は、教育業界における生徒との関係を作るためのコミュニケーション方法を参考に、他分野で応用できるポイントを3つにまとめてみました。

●ジェネレーションギャップよりも個性に注目する

教育業界においても、よくジェネレーションギャップという言葉を耳にしますが、20歳離れていても、30歳離れていても特に感じないという講師もいます。しかし、こちらが感じていなくても、相手は感じているというケースは往々にしてあります。それこそがギャップの一類型と言えます。

また、世代にかかわらず、人はみんな違います。価値観はもちろん、それぞれが「常識」だと思っていることも違います。ですから、ジェネレーションギャップ自体が先入観として働かないように意識する必要があります。世代以前に個人として違うわけです。そういう前提で相手を理解しようとコミュニケーションを続けるうちにギャップ感を和らげることができます。乱暴にひとくくりにしたり、グルーピングやラベリングをしたりすることは、コミュニケーションの障害になります。

●最新のコンテンツに飛びつかない

2つ目のポイントはコンテンツベースで時流に乗ろうとしすぎない、相手に合わせようとしすぎないことです。

コミュニケーションは、お互いの価値観や考え方に基づき、慣れ親しんでいるモデルや言葉による情報の交換だといえます。また、その時代において最も使用されているモデルや言葉は、マスメディアの影響を受けていると考えられます。それを使うことでとりあえずのコミュニケーションはとれますが、時が流れれば主流もまた変わってきます。自分が最もテレビなどに触れていた時代のモデルや言葉を使い続ければ、当然コミュニケーションにズレが生じてきます。かつてのオヤジギャグを馬鹿にしていた「チョベリバ」などギャル語のモードなども、時がたてば同じように目も当てられないものになっていきます。最近の例ではもう「KY」なんて言っている方が空気が読めていません。

となると、最新のメディアに触れることがジェネレーションギャップを埋めるための対処法になりそうな気がしますが、そう簡単なことでもありません。たとえば小学生の生徒と仲良くするために特に興味もないのにジャニーズやAKBについて調べたり、『妖怪ウォッチ』や『アイカツ!』をチェックして無理矢理話題を合わせようとしたりして、失敗しているケースはよく見かけます。生徒からしたら「イタイ」感じです。

●普遍的なテーマを自分の言葉で話す

話題作りのポイントは、息の長い作品やテーマに触れることです。古典を読むべきだ、とまでは言いませんが、古典として残っているものはただ古いだけではなくて、今の世の中でも通用する普遍的な内容を含んでいます。無理に新しいものを取り入れようとするのではなく、今も昔もあるもの、自分が知っていることで相手も知っていることを選んで話題にすれば自然です。

また、話の広げ方としては、『ゲゲゲの鬼太郎』や『妖怪ウォッチ』ではなくて「妖怪」や「お化け」についてなど、『ドラえもん』『ガンダム』についてではなくて、「ロボット」や「未来」「宇宙」など、少し抽象化して相手に受容してもらえる幅を広げることです。世代によってそれぞれ知っているコンテンツが違っても、共通項はたくさんあります。その部分を話題の中心に置くように意識するわけです。当然のことながら、小学生でもアニメも見ないしアイドルにも興味のない生徒もいます。「小学生はアニメが好きだろう」「最近の若者は政治には興味が無いだろう」「ゆとり世代は指示待ちだろう」、というような決めつけもコミュニケーションを難しくしている一因です。また、あまり流行に寄った話をしすぎると、興味がない人には疎外感を与えかねません。

そういう話題を、正直な感情と自分自身の言葉で話すことから、少しずつコミュニケーションが円滑になっていくのではないかと思います。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE・教養の未来研究所)

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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