野生化するイエネコ問題~写真展で問題定義、ケースケ・ウッティーさん

紀元前1500~前1300年ごろ、古代エジプト人により家畜化されたリビアヤマネコを祖先とする「イエネコ」。ペットとして不動の人気を誇るイエネコですが、飼育されてきたイエネコたちが捨てられて「ノラネコ」や「ノネコ」になるという問題は後を絶ちません。ノラネコ問題に関心を集め、解決に向かうことを目指して、イエネコ写真展を開催する日本自然科学写真協会会員で野生動物写真家のケースケ・ウッティーさんに話を伺いました。

◆イエネコの種類

ノラネコの寿命は飼いネコよりも10年短いという
ノラネコの寿命は飼いネコよりも10年短いという

イエネコは、特定の飼い主がいる「飼いネコ」、特定の飼い主が居らず、生活の一部を人間に依存している「ノラネコ」、人間に依存せず自然界でも生きていける「ノネコ」に分類できます。

鳥獣保護法では飼いネコとノラネコは、野生動物に含まれませんが、ノネコは野生動物とされ、狩猟対象になります。しかし、動物愛護法ではイエネコはすべて愛護動物と設定されているなど、法律によって判断基準が曖昧だという問題があります。

同じ種でありながら、人間の都合で再分類されるイエネコたち。ウッティーさんはノラネコ問題についてもっと注目すべきだと訴えます。「ノラネコは自由で気楽だなんて言いますが、彼らの生活は飼いネコと違って過酷です。寿命は飼いネコで10年以上、野良ネコは3年~5年程です」。

◆ノラネコ問題とは

ネコは、飼い主の敷地以外にも躊躇なく入り込む習性があります。そのため、特に住宅地において、ノラ化したネコにゴミ捨て場を荒らされる被害や、糞尿などによる衛生被害、ノミや寄生虫などの感染被害、アレルギー被害など様々な問題が発生し、それらは総称して「ノラネコ問題」と呼ばれています。ネコは1年に数匹から十数匹の子猫を産むため、一度ノラネコ問題が起こるとなかなか解決が難しいといわれています。

それらの問題に加えて、「ノネコは、日本元来の生態系に影響を及ぼす存在だ」とウッティーさんは指摘します。実際、国の天然記念物に指定されているアマミノクロウサギやトゲネズミなどの希少動物を捕食するため、鹿児島県奄美市など5市町村では、飼いネコの登録を義務付ける条例を制定しています。

◆撮影のルールは「撫でない、話しかけない、エサをやらない」

大型類人猿やヒグマなど、野生動物を撮影し問題定義を続けるケースケ・ウッティー氏
大型類人猿やヒグマなど、野生動物を撮影し問題定義を続けるケースケ・ウッティー氏

「 ネコが耳を緊張させてジッとしてるときは、その先に何かの存在を見つけた時です。耳だけ見ていると、物凄く動いていることがわかります」。イエネコの本能には野生が色濃く存在する、というウッティーさん。「撫でない、話しかけない、エサをやらない」というルールを作ったところ、自然な表情や暮らしぶりが見えてきたといいます。「水を飲むシーンにしても、喧嘩をしているシーンなどは撮影したいと思っても直ぐに撮影できるものではありません、彼らの事を常に気にかけて撮影の準備をしていないと」。

今回展示する作品は3~4年かけて撮影した、無責任な飼い主によって捨てられ、その生活の一部を餌やりボランティアの人に依存しているノラネコ達。過酷な環境に生活するノラネコ達を野生動物と同じスタンスで、見つめ続けることで、どんな現実が写し出されているのでしょうか。

「ノラネコ問題は、私たち人間が作りだした社会問題です、生き物を飼う全ての人に、どんなことがあっても最後まで責任を持って飼ってほしい」。ケースケ・ウッティー写真展『イエネコの野生』は2015年11月20日(金)~11月25日(水)11:00 ~ 19:00 (木曜休館、最終日15:00 まで)オリンパスギャラリー東京(JR新宿駅西口より徒歩5分)にて。入場無料。ネコ好きかどうかに関わらず、多くの人にノラネコ問題を身近に感じられる機会になることが期待されます。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE・教養の未来研究所)

■関連サイト

ケースケ・ウッティー オフィシャルサイト