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渋谷母娘刺傷事件:学校は家庭は地域はどうすべきか:スクールトラウマと子供たちの心のケア

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:事件とは無関係(写真:イメージマート)

■渋谷母娘刺傷

渋谷で親子が刺され、埼玉県戸田市内の中学3年の少女が逮捕されたました。報道によれば、「母親と弟を殺すための練習として刺した」と供述しています。

全国の注目を集める事件。連日の報道が続いています。地元の学校は苦悩していることでしょう。

■学校はどう対応すべきか

少女が通っていた学校はもちろん、市内の全中学校が同様していることと思います。その中で、夏休みが終わり学校が再開されます。学校はどう対応すべきでしょうか。

報道によれば、戸田市教育委員会も、市内の子供たち全体の心のケアについて対応する必要があると述べています。

■生徒たちの心のケアのために

まずは、全校集会で校長がきちんと話すことでしょう。もちろん、逮捕された個人を特定するようなことは言えません。

今わかっている事実、今話せる事実を、校長先生が全校生徒に向けて冷静に話をします。校長先生のしっかりとした落ち着いた態度が、生徒たちの心を支えまます。

逮捕者を出した学校は、学校名が公表されることはなくても、大きな混乱が起きるでしょう。校長先生が冷静さを保ち、しっかり仕事ができるように、関係者一同で校長を支えたいと思います。

逮捕された生徒の担任、あるいは別室登校担当者は、特に辛い思いをするでしょう。学校全体で支えましょう。

校長が全校生徒に話した後は、各教室で、今度は担任が話をすることになります。担任は、一人ひとりのことがわかるはずです。一人ひとりの顔を見ながら話します。

このような事件が起きると、特に不安定になる生徒がいます。事件の当事者と近い生徒が不安定になるかもしれませんし、当事者とは無関係でも不安定になる子はいます。

1997年神戸連続児童殺傷事件で、当時中学3年生14歳の男子生徒が逮捕されたとき、私の知り合いの娘で中学3年生だった子は、事件とは遠い町で暮らしていたのに、ニュースを見ながらがたがた震えていたそうです。

個人差はとても大きいのですが、ショックを受ける子供たちもいます。

担任がクラスみんなに話しながら、特に心配な子には個別対応をすることになります。

■スクールカウンセラー、養護教諭、外部からの応援カウンセラー

多くの市町村でスクールカウンセラーは、週一日勤務の非常勤ですが、教育委員会も工夫と調整をして、各校のスクールカウンセラーが動きやすくしてほしと思います。

各カウンセラーも、週一日勤務とはいえ、それぞれのその学校のカウンセラーですから、責任をもって学校を支える一助になるべきです。

生徒たちの中で特に心身の不調を訴える子がいれば、養護教諭やスクールカウンセラーの出番です。

場合によっては、教職員が不安定になることもあります。子供をケアするために、担任を支えることも大切です。管理職やスクールカウンセラー、養護教諭など担任を持っていない教職員(いわゆる「4年部」)が各担任を支援します。

緊急の出来事が起こると、教育委員会から応援のスクールカウンセラーが追加で派遣されることがよくあります。

ただ、見ず知らずのスクールカウンセラーが突然来ても、なかなかその人に相談できないでしょう。応援カウンセラーは、本来は、外部対応のお手伝いをして、他の教職員が働きやすくなるように支援できればと思います。

■家庭内でできること

同じ市内の(同じ学校内の)女子生徒が人を切りつけ逮捕された。ショッキングな出来事です。

家庭内では、子供の話を聞くことが基本だと思います。興味本位でなく、説教でなく、子供自身が思っていること、話したいことを、聞いてあげましょう。

子供の心のケアのためには、周囲の大人の心の健康が必要です。父、母、祖父母、教師、地域の人々が、助け合いながら、弱っている人を支えながら、子供のケアをしていきたいと思います。

■学校と地域の傷つき:スクールトラウマを越えて

大きな事件が起きる。自分の町や学校が、暗い話題で報道されます。人々は傷つきます。しかし、その学校や地域が特別悪いわけではありません。

どの町でも、どの学校でも、起きる可能性があることでしょう。深刻な事態ですが、地域の皆様、どうぞ笑顔で街の中学生たちを見守ってください。

逮捕者が出た学校は、公表はされませんが、ネット上でさらされるかもしれません。市内では、うわさになるでしょう。ネットで学校名を知った人が、いやがらせのメールや電話をかけてくることも、残念ながらよくあることです。

子供たちは動揺し、不安になるかもしれません。学校全体が傷つきます。これを「スクールトラウマ」と言います。

事件が起きても、学校は続きます。授業を行い、部活を行い、体育祭を行います。そのような日常的な活動を続けることが、子供たちの癒しにつながります。

そして、肩身の狭い思いをした生徒たちと学校全体が癒されるように、スクールトラウマが癒されるように、もう一度、自分の学校に誇りをもてるように、支援体制を作っていきたいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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