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短縮夏休みの過ごし方【#コロナとどう暮らす

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:夏休みは楽しいな(写真:アフロ)

<今年の夏休みは、短い。しかもコロナのせいで、いろんな行事も中止。いったいどうやって子供を楽しめさせたらよいのでしょう。大丈夫。あなたにもできます。>

■短縮夏休み

突然の休校から始まった今年度。それでも、やっと夏休み。でも報道によれば、全国の95パーセントの学校が、短縮夏休みです。中には、たった4日間の夏休みもあるほどです。

Yahoo JAPANの「みんなの意見」では、短縮夏休みのアンケートアンケートをとっています(学校の夏休み短縮、どう思う?)。

この調査によれば、夏休みの短縮に賛成の人は、約7割。反対の人は、約2割です(8月2日現在)。

春には長い休校があり、授業日数を確保するためには夏休みの短縮も仕方がない面もあると思うのですが、それでも2割の人がいつもどおりの長さの夏休みを望んでいます。

みなさんからのコメントを見ると、夏休みの短縮に賛成の人も、「賛成というか、しょうがないよね」といった意見も寄せられています。また「勉強に励んでいただきたい」という意見もあります。勉強の遅れを気にするのも当然です。

現場の先生からのコメントの中には、行事を厳選して授業時間数を確保しつつあり、10月には取り戻せるので「夏休みを減らす必要は全くない」と言う人もいます。地域や学校によっても、事情はさまざまなのでしょう。

夏休みに、

勉強する子もいる、

遊ぶ子もいる、

休む子もいる。

何であれ、夏休みは、やっぱり大切です。

夏休みにリフレッシュすることが、秋からの充実した学校生活にもつながります。

■いつもと違うコロナ夏休み

夏祭りも花火大会も中止です。子供向けの様々な行事、プログラムも軒並み中止。海水浴場も開かれない地域もあります。里帰りも、どうなるかわかりません。お父さんお母さんの収入も不安です。

報道によれば、夏休みの旅行や帰省をしない人は66%です。いくと決めている人は、14%だけです(夏休み、今年は我慢? 「旅行・帰省しない」66%:8/2(日)朝日新聞)。

そしてもちろん、感染予防も気をつけなくてはいけません。

けれども、それでも子供たちは楽しい夏休みを期待しています。

いったいどうすれば良いのでしょうか。

■夏休みとは

夏休みには、「普段学校では体験することの出来ないことへの児童・生徒の挑戦」が期待されています(学校教育法施行令)。

ドラえもんののび太たちも、普段は情けないですが、夏休みの映画では大冒険の大活躍です。これぞ夏休みですね。

とは言え、今年の夏休みは、いつものようにはいかないでしょう。

■ピーク・エンドの法則

心理学には、ピーク・エンドの法則と呼ばれる法則があります。物事の印象は、そのピークと、その最後の印象で変わるというのものです。

夏休み全部を楽しいことでいっぱいにしなくても良いのです。

でも、何かひとつぐらいは、夏休みのピークとなるような出来事を作りたいと思います。

平時なら、それは海水浴や里帰りやディズニーランドかもしれません。でも今年の夏休みは、どれもだめかもしれません。ただ、だからといって何もない夏休みでは、寂しいでしょう。

今こそ、腕の見せどころ、アイデアの出しどころです。それは、ハイキングかもしれません。サイクリングかもしれません。いつもなら自動車で行くところに、みんなで歩いて行く家庭内「完歩大会」かもしれません。

普段なら小さく切って食べるスイカを、大きなままかぶり付くことかもしれません。その時くらいは、多少贅沢しても良いでしょう。Tシャツが、スイカの汁でびしょびしょになったって良いでしょう。

家族みんなで、スイカのタネの飛ばしっこは、いかがでしょうか。もちろん優勝者には、豪華賞品つきです。豪華賞品と言っても、ジュース1本、袋菓子一袋で、オッケーです。それもご愛敬。

普段ならそんな下品なことをしないご家族も、夏休みらしく、ちょっとはめを外しましょう。夏休みは、私たちの心を、自由に、ワイルドにするのですから。

スイカを食べなくてはいけないわけではありません。それぞれのご家庭の工夫です。大掃除ですら、ゲーム感覚で楽しくできるかもしれません。

(提供:写真AC)
(提供:写真AC)

そして夏休みの終わりに、小さなサプライズがあっても良いかもしれませんね。夏の終わりの花火は、いかがでしょう。夏の終わりのアイスクリームパーティーは、いかがでしょう。

パーティーと言っても、アイスクリームを食べるだけでも良いでしょう。大きな子なら、食べ放題も良いかもしれません。小さな子なら、アイスクリームの上にトッピングで何かをちょっと乗せるだけでも、大喜びかもしれません。

そうして今年のちょっと短かった夏休みを思い出を語り合えると、良いでしょう。夏休みのピークの演出と、最後のまとめさえ上手くできれば、それはもう最高の夏休みです。

■子供も大人も頑張ってきたから

コロナ騒動のこの数ヶ月。子供も大人も頑張ってきました。子供も大人もストレスがたまっています。

大人としては、ただでさえ遅れている勉強を取り戻せさせたいと思うのも無理はありません。けれども子供たちも頑張ってきました。疲れもたまっています。

ネット上にさまよう「疲れた」「だるい」という子供の言葉も例年以上に多くなっています。子供の心のSOSが聞こえて来るようです。だから、無理をさせないことも大切です。

【#しんどい君へ】「疲れ」「だるい」ツイート急増 4億件調査 前例のない夏を前に「若者を見守って」:読売新聞社とYahoo!ニュースの連携企画

大人だって疲れているのですから、無理な夏休みプログラムを立てなくても良いでしょう。子供たちにとっては、夏休みに何もせず、ぼうっとしていることも、退屈することもまた大切なのです。

「夏休みの本質は、ぼんやりすること、ほうけることだと思う。ふだんとは違うことをやって、ぼーっとする。そのことが夏休みの価値である」(脳科学者、茂木健一郎)。

複数の心理学者・教育学者が、子どもに対して「退屈の勧め」を説いています。〜「退屈は、真の創造性をもたらし得る『内在的な刺激』を発達させるのに不可欠なものである」〜「退屈する能力は、子どもの成長の成果である」〜

出典:子どもは夏休みに退屈な方が健全に成長できる:Gigazine

その上で、ほんの少しだけ無理をして、チャレンジしてみましょう。

今までのコロナ禍も、この夏休みも、思うようにいかないことは多いでしょう。コロナストレスがたまることもあるでしょう。

でも、たとえば同じように渋滞にはまりこんだ自動車の中で、怒鳴り合い、いがみ合う家族もいれば、みんなで楽しくしりとり歌合戦をする家族もいるでしょう。

車内でどんなに怒っても車は前に進みません。子供が泣くだけです。一方、到着は遅くなったけど、いつもはできない長時間の家族しりとり歌合戦が、大人になっても覚えている今年の夏休み一番の思い出になるかもしれません。

必要なのは、ほんの少しの心の余裕と遊び心です。

どうかあなたの家の夏休みが、2020年ならではの、思い出に残る素敵な夏休みなりますように。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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