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学校最後の一日に何が行われたか:私たちが「同じ思い」で危機を乗り越えるために

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:それぞれの学校でドラマがあったはず(写真:アフロ)

<学校最後の一日に何が行われたか。記事になり、ネットでの発言があります。現場は、がんばっています。>

■学校最後の一日

地域、学校によって違いがありますが、今日2月28日が、突然今年度最後の一日になった学校もあるでしょう。

全員、マスク姿で「保護者の出席がない卒業証書の授与」…『休校要請』に、関西の学校で混乱 8カンテレY!2/28

この記事の中では、和歌山県の一つの高校が登場します。その高校は卒業式が中止になり、今日最後の授業日に、急遽3年生が体育館に集まって、卒業証書が渡されました。

記事の見出しには「混乱」とあるのですが、ヤフーコメントにはこんな意見もあります。

「映像にはまったく混乱が生じていないんですけど・・

学校の機転を利かせた判断は正しいし生徒の思いはあっても粛々と式は行われてます」。

私も、そのように感じました。正式な「卒業式」ではないのですが、それでも、ちょっと素敵な「卒業式」です。

この記事のヤフーの見出しと、記事内の文章の中には、「笑うしかない 」とありました。この文字を見ると、ネガティブな感じがします。

しかし、実際にこの言葉を言っている高校生の映像を見ると、決してネガティブではないと感じました(記事中の映像をぜひご覧ください)。

「心の中ではきょうがみなさんにとって卒業式だと思ってください」。そう語る校長の心と言葉が胸に響きます。

高校生たちも残念な思いはあるでしょう。しかし、その校長の思いが高校生たちににも伝わったからこそ、そのあとのインタビューで、社交辞令ではなく、高校生たちは語っています。

「体育館でみんなで集まることはできないと思っていたので、そこはうれしかった」(女性生徒)

「友達、クラス全体がそろうのが、これで最後だと思うと、切ない思いと複雑な感情でいっぱいになった」(笑うしかない発言の男子生徒)

記事の中では、続いて大阪の小学校の様子が紹介されました。

担任の先生が、今回の休校の意味を、一生懸命小学生に説明しています。

そのあと、校長先生がインタビューに応じています。

「みなさん、思いは同じやと思うんですよ」「普通の卒業式もしたいし、学校も続けたいし」「でも感染を防ぐためにはやむを得ないのかな、いたしかたないのかな」

「同じ思い」で、教師も親も地域も、子供たちを守れたらと思います。

■それぞれの学校で

この記事のヤフーコメントでは、それぞれの学校の様子も語られています。急遽卒業証書が渡された学校は、他にもあるようです。

「うちも中学3年生の子供がいて、今日、最後の学校でした。

急にきまったにも関わらず、各先生は思い出のスライドを見せてくれたり、いつもと違う授業をしてくれたり、1人1人にメッセージを言ってくれたりと、その思いは十分に伝わった様子で帰ってきました。」

「小学六年生の母です。

本日六送会が急遽ありました。

先生は泣いていました。こんな形でって。

親同士で話し合い、大急ぎで先生に渡す色紙を用意しています。

必ず卒業式をしてくれると子供達と約束して下さったと聞きました。

別れは突然やってくる、だから今の一瞬を大切に。子供にそう話しました。

どうか成人式で笑って話せますように。」

「緊急で決まった臨時休園に年長さんが「お友達と小学校離れてしまうの〜」と泣いてしまっていて…

不覚にももらい泣きしてしまった…」

「息子がこの学校で、今日卒業証書いただきました。混乱の中、先生方ありがとうございました」

「まさに今日、息子の卒業証書授与式に出席して来ました。

朝の9時半にメールで今日の15時から行いますと。。

仕事早退出来たから良かったものの、早退出来ず、やむ終えず欠席の親御さんもいた。

学校を責める事も出来ないし、安倍総理に色々言いたいが、子供達のたった一度の卒業式ももう出来ない。

忘れられない卒業式になったね!って、思うしかない。」

「うちも急遽、今日でした。

簡易的すぎて、気持ちが追いつかず涙もない卒業式でした。今でも実感が湧きませんが、仲間は一生。コロナが落ち着いたらみんなで集まって、「卒業おめでとう!」の乾杯をしたいなと思っています。」

そして、こんな意見も寄せられています。

「もう決まった事なんだから、ごじゃごしゃ言わんでいいのでは?

マスコミのマイナス報道にはうんざりや。

子供にはどんな状況でもそれなりに乗り越える人に育って欲しい。」

■私たちの態度:危機を好機に

危機的状況では、適切な「リスク・コミュニケーション」が必要です。ウイルス感染を防ぎ、人々の心身の健康を守るために、適切なコミュニケーションが必要です。

「同じ思い」と言えるような相互信頼関係がコミュニケーションの土台です。批判も攻撃も必要ですが、ただ、今それが必要かどうかを考えることも、リスク・コミュニケーション上で必要なことです。

目の前の子供たちを守りたいと思います。

「危機は、私たちの心と行動で、好機にもなるのです」(危機の中の心理学:コロナウイルスで緊急事態宣言がなされる今の生き方:Yahoo!ニュース個人有料)。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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