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就職・採用活動解禁:キー・コンピテンシーを身につけさせよう

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
就活シーズン本格化 幕張メッセで合同説明会20190301(写真:森田直樹/アフロ)

■就活シーズン本格化

今日3月1日、2020年春に卒業予定の大学3年生らの就職・採用活動が解禁されました。2019年の就職状況に続き、今のところ「売り手市場」が続いています。

早い段階から積極的に就職活動を始め、より良い就活を始めている若者は、安心です。でも、マスコミに登場する積極的で有能そうな若者ばかりではありません。就職を怖がり、就活に積極的になれない学生も少なくありません。

全く就活できない学生は少数だとしても、1、2箇所就職試験に落ちると、もう就活できなくなる学生もいます。就職したい気持ちは強くても、苦労はしたくないと思う学生も大勢います。だきるだけ早くできるだけ楽に就職を決めたいと考えます。指導する側からすれば、この売り手市場なのだし、もっと上を目指して良いと思う学生でも、早々に就活をやめてしまう学生もいます。

■現代の子供若者の問題点

もうずいぶん以前から言われています。現代日本の子供若者は、意欲が低下していると言われます。学習意欲も、労働意欲も、金を稼ぐ意欲も、社会貢献する意欲も低下していると指摘されます。さらに、現代の子供若者は、一見偉そうな態度を取っている人でも、自信がないとも言われています。

もちろん、優秀でやる気にあふれた学生もいます。そんな良い学生は、すぐに何社からも内定をもらいます。こんな良い学生は多くはありませんから、引っ張りだこです。

せっかく良いところに就職しても、すぐに辞めてしまう若者もいます。仕事でミスをした後、そのまま無断欠勤し、挨拶に来ることもなく退職する。そんな新入社員の話も、あちこちで聞きます。

しかし、現代の子供若者を嘆くだけではいけません。そんな子供若者を作り出したのは、大人たちであり、この豊かな現代社会です。

そこで、学校ではキャリア教育に力を入れています。小中高の図書室にはたくさんの仕事紹介の本(「なるには」本)が並び、中高では職場体験が行われています。中学校では、ほとんどの学校で実施しています。

「キッズニア東京」も、子供たちが大人の仕事を体験できる場所で、人気の施設です。中学生も、緊張しながらも職場体験を楽しみ、少し成長して帰ってきます。

人々が働くことは、社会を維持する上で欠かせないことです。しかしそれだけではなく、一人ひとりの人生の充実や、心の健康のために大切なことです。私たちは、心の底では、世のため人のために活躍し、人生を輝かせたいと願っているのです。

本心ではそうなのに、うまくいかない子供若者には、何が必要でしょうか。大学3年生4年生への指導も大切ですが、もっと幼い頃からの教育も大切です。

■キー・コンピテンシー

コンピテンシーとは、心理学では「有能感」と訳されています。環境に対する適応能力をさす概念です。また、労働分野においては、「コンピテンシーとは、職務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人特性である」とされています。

コンピテンシーには、様々な面の有能さが、そのキーとなるものがあるとして経済協力機構(OECD)が提唱した考えが、キー・コンピテンシーです。働くための能力の主要な部分であり、鍵となるものです。

キー・コンピテンシーとは、「単なる知識や技能の習得を超え、ともに生きるための学力を身につけて、人生の成功と、良好な社会を形成するための鍵となる能力概念」です(子供若者をしっかり就職させる方法:キャリア教育の心理学:Yahoo!ニュース個人有料)

ただ、英語や数学ができるだけではなく、その知識や技術を応用し活用できる力、自分とは異なる人たちと協力できる力、そして自律して正しく自己主張できる力が、キー・コンピテンシーです。

能力全般が低いよりは高い方が良いでしょう。でも、学校の優等生が仕事でうまくいかないのは、キー・コンピテンシーが足りないからです。キー・コンピテンシーなどという言葉を知らなくても、そのような力がないと感じていいる若者は、就職に不安を感じるのでしょう。

一つの能力が高いだけで仕事ができるほど、世の中は単純ではありません。逆に、最初は能力的に足りなくても、職場でぐんぐん伸びていく人もいます。そんな人は、キー・コンピテンシーの種があったのでしょう。

子供若者にキー・コンピテンシーを身につけさせたいと思います。今、就活に不安になっている若者には、君にも小さなキー・コンピテンシーのもとはあるのだと、自覚させましょう。

若者本人のためにも、社会のためにも、しっかりと就職させたいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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