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愛情あふれるしっかり者の危険性:共依存の心理

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ)(写真:アフロ)

がんばっているのに上手くいかない家族。そこに、共依存の問題が潜んでいるかもしれません。本当に愛しているなら、相手を自立させなくてはいけません。

■支えることは美しいこと? だめなこと?

支えあう夫婦、親子、兄弟姉妹。美しい人間関係です。片方が、困難を抱えていることもあります。アルコール依存やギャンブル依存、借金や暴力、不登校や引きこもり。社会生活が上手くいきません。家族親族だから、一生懸命支えます。でも、とってもがんばっているのに、問題はむしろ悪化する。その理由の一つに、「共依存」(あるいは過剰な責任感)の問題があります。

愛をこめて、心から相手に尽くしている、しっかり者のあなた。その愛と努力が無駄にならないように、逆効果になならいように。そんなふうにもがいている善人たち、問題を抱え込んでいる人たちを、支援するために。ご一緒に考えていきましょう。

■共依存とは

格差社会と言われる現代。特に「家庭」は、実に様々なです。家族としての機能を失っている家庭もあります。安らぎの場でもなく、家庭教育も行われていない家庭もあります。

たとえば、父親がアルコール依存症で父親としての役割が果たせない。その父を支えようとしているのだが共依存関係に陥ってしまっている母親。そんな家庭で成長した人たちを、アダルト・チルドレンと言います。

アダルト・チルドレンとは、簡単に言えば、心の中に傷ついた子供の心を抱えたまま大人になった人です(アダルト・チルドレンも、共依存も、精神科的な診断名ではありません)。

母親は、必死で夫と子供を支えているのですが、文句を言いつつ、夫に酒代を渡しています。一見すると、夫が妻に依存して生きているように見えるのですが、妻もまた夫を支えることが生きがいとなってしまっている状態。これが、共依存という考え方のはじまりでした。

妻は夫の被害者であることは事実なのですが、妻の行動で、夫のアルコール依存症はさらに治りにくくなっています。さらに、子供に対して自分を支えることが当然だと、無言のうちに伝えている母もいます。母は決して悪意はないのですが、共依存関係が家族問題を複雑にするとされます。

このようなアルコール依存症者の妻の問題から、共依存はさらに広い場面で使われるようになっていきました。また、共依存という言葉が被害者者である妻を責めているニュアンスがあることを嫌う人は、妻の「過剰な責任感」といった言葉を使うこともあります。共依存という言葉も、決して誰かを責めるためのものではないのですが。

支える人の動機は愛です。妻はしばしば「良妻」です。しかし、共依存に陥っている人の愛と判断力と行動は、混乱しているのです。良い妻、良い母、良い兄姉になろうとして、さらに問題は悪化します。

問題を抱える息子。心理的に逃げてしまって関わらない父親。そんな中で、母と子がまるでカプセルの中に入ってしまったように二人で今日依存関係の中で生きていることもあります。

■本当の意味の支援とは

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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