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星空はなぜ心を癒すのか:癒しと希望の心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真は七夕の星空イメージ)(ペイレスイメージズ/アフロ)

季節季節の星座。七夕やお月見の行事。流星群や月食などの天体ショー。私たちは、星空を見上げます。星空は、私たちの心を癒し、希望の明かりを灯してくれます。でも、なぜ星空にはそんな効果があるのでしょうか。

■夜の癒し

夜は、副交感神経系が働き、心身が休む方向に変化します。夜は、昼間よりも静かになります。夜は、仕事も学校も終えています。夜の暗闇と静けさは、物理的にも心理的にも、雑音を消してくれます。

■星空を見に

星空を見るということは、テレビから離れます。家事から離れます。大自然の中に行かなくても、ちょっとベランダに出るだけでも、それはほんの少しの、日常からの解放です。

ほっと一息つき、日常の雑務から離れ、私たちは星空を見に蛍光灯の下から離れます。

星を見るとき、私たちの体から力が抜けています。体のリラックスが、心のリラックスにもつながります。

■星空を見上げて

「見上げてごらん、夜の星を」(作詞:永六輔)。星を見るためには、見上げます。目を上に上げると、人は元気になります。心が行動を作りますが、行動も心を作るのです。

ごろんと横になって星空を見ることもあるでしょう。それは、とてもリラックスするポーズです。

星空を見るということは、遠くを見ることです。遠くを見ると、目の筋肉がリラックスします。頭痛も肩こりも良くなって、体も心もリラックスできそうです。

■星明かりと星の瞬き

真っ暗闇では心が不安になりますが、暗闇に輝く光は、心を落ち着かせ、希望の思いを起こさせます。どんな暗闇も、光には打ち勝てません(聖書:ヨハネ1章5節)。光は希望の象徴です。

じっと光を見つめると、心から雑念が消え、心がすっと集中します。昔の催眠術ショーで、「はい、この時計を見てください」と言って、目の前で懐中時計を揺らすシーンがよくありましたが、何かをじっと見つめさせるのは、催眠療法で使う手法です。

星明かりは、静かに、そして不規則に瞬いています。人は、機械的で規則的な音や光の変化と繰り返しを嫌います。何だか、イライラします。ところが、揺らぎのある音や景色は好みます。

川のせせらぎ、海のさざ波、風鈴の音、ロウソクの炎、心臓の鼓動、木漏れ日、蛍の光。これらは、「1/fゆらぎ」と呼ばれ、心を癒すとされています。星の瞬きも、心を癒します。

■星空を見つめて

私たちは、夜空の星の一つひとつが、惑星や構成だと知っていますが、昔の人はそんなことは知りません。現代人にとっても、理屈ではわかっていますが、実際に見えるのは暗闇に光る小さな光の点です。川や山のような意味のある景色ではありません。でも、だからこそ、そこに人の様々な心が投影されます。

意味のない光の集まりに、人は意味をつけようとします。光の点と点を結びつけ、星座を作ります。さらに星座ごとの壮大な物語を作り上げました。

私たちも、星空に自分の心を映しこみます。何もない夜空だからこそ、自分の心が映ります。私たちは、星空を見つめながら、自分の心を見つめます。心を見つめ、変えられないことを受け入れ、変えられることを変える勇気を願います。

■星に願いを

7月7日七夕には、短冊に願いを書きます。クリスマスツリーの一番上にには星を飾り、神に祈ります。大昔から、人々は星空を見上げ、星に願いを捧げてきました。

西洋文化でも、流れ星に願いを捧げる風習がありますね。「夜空の星に願いをかける」(ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌)と。「流れ星が流れている間に3回お願いすると、願いが叶う」と。

古代人の間には、流れ星は神が地球の様子を見るために天の扉を少しだけ開けた時の光だとする考えがありました。だから、この時にお願いすれば、神に届くと考えたのでしょう。

流れ星が流れるほんの一瞬に3回もお願いするのは、とても難しいでしょう。でも、星空を見上げながら、手を合わせ一生懸命願い、流れ星を見つける幸運を見つけ出そうとする。この思いが、願いの実現につながるのだと思います。

■星に見守られ

愛する人が亡くなった時に、その人はお星様になったのだと言う人もいます。星になって、いつも君のことを見守っているよと。私たちは星を見上げますが、星はいつも私たちを見ています。私たちがどこへ言っても、月はついてくるように。

星空は、いつも私たちを見守っている。それは、神仏に見守られている感覚につながります。だから星空は、癒しであり、私たちの願いが叶う希望にもなるのでしょう。

■大宇宙の中の私

古代人にとっても、天文学の知識を持っている私たちにとっても、星空はとても広く、大きな存在です。あの小さな光の点も、何億光年も離れた巨大な星かもしれないと私たちは知っています。

私たちは、日常生活の中でストレスを貯めていきます。人間関係で悩みます。けれども実は、世界から見れば小さなことなのでしょう。100たてばみんな死んでいて、誰もその問題を覚えていないでしょう。

ストレスから解放され、新たな希望を持つためには、大きなことを忘れないことです。私たちは、日常生活の中で毎日一生懸命生きていますが、同時に、大宇宙の中の小さな存在なのでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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