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人はなぜ誕生日に自殺するのか

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真:アフロ)

■<自殺>誕生日は1.5倍「サポート必要」

誕生日は自殺の危険性が高まると報道されています。

誕生日に自殺する人は、他の日の1.5倍になるとする研究結果を、大阪大の松林哲也准教授(公衆衛生学)らのグループがまとめた。グループは「自殺の恐れがある人には、誕生日の前後は周囲のサポートを強化するなどの予防策が必要だ」と指摘している。~

誕生日には交通事故死や転落死なども増える傾向がみられた。

出典:<自殺>誕生日は1.5倍「サポート必要」 阪大准教授ら  毎日新聞 6月2日

■人はなぜ誕生日に自殺するのか

人は、本来なら楽しいはずの日に寂しいと、強く孤独感を感じます。

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そのために、誕生日の自殺が多くなることも考えられます。

またこの報道では研究の詳細はわからないのですが、自殺者の多くは中年から高齢の人です。高齢者の自殺の特徴のひとつとして、「記念日自殺」があります。

高齢者は、覚悟の自殺が多いのですが、人々の記憶にとどまりたい思いからか、記念日に自殺する多くの人がいます。これまでの研究でも、敬老の日に自殺する人が多いことがわかっています。

誕生日も、敬老の日も、記念日であり、そして本来なら大切にされる日なのに孤独だと、死への思いが強くなるのでしょう。

誕生日の自殺に関しては、「延期仮説」(誕生日までは我慢する)や「誕生日ブルー仮説」(誕生日に憂うつになる)などの用語でも説明されています。

■誕生日にはなぜ事故死も多いのか

いつもとは異なる行動をとるために事故が多いとも考えられます。一方、一般に自殺が多くなるときには事故死も多くなるという研究もあります。

自殺は、一目でわかる自殺方法から、自殺か事故しかわからない方法まであるからです。あるいは、自殺する具体的な気持ちではなくても、死にたい気持ちで乱暴な行動をとっていると、結果的に死亡事故につながることもあります。

■自殺研究を活用するために

すべての人の、すべての時の自殺を予防したいと思います。しかしそう考えるだけでは、対策が薄くなってしまうでしょう。どのような人が自殺の危険性が高いのか、どのような場所が危険なのか、そしてどのような日に自殺の危険性が高まるのか。そのような傾向をしることで、的を絞った自殺予防活動ができるでしょう。

日本の自殺率は近年低下したとはいえ、それでも、毎日約70人の人が自殺しています。それは、交通事故死の約6倍です。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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