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2年連続首位打者が年俸調停に敗れる一方で、本塁打王から2年続けてマイナス5本以上の選手は勝利

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルイス・アライズ(マイアミ・マーリンズ)Apr 18, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 年俸調停の結果、ルイス・アライズ(マイアミ・マーリンズ)の年俸は、1060万ドルに決まった。アライズが申請していたのは1200万ドルなので、マーリンズの申請した金額が通り、アライズは「敗れた」ということになる。

 一方、ブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)は、年俸調停で「勝利」を収めた。こちらの年俸は、1990万ドルだ。ブルージェイズの申請額は、1805万ドルだった。

 彼らは、どちらも、2019年にメジャーデビューした。最初の3シーズンの年俸はほとんど変わらず、2021年は61万1000ドルと60万5400ドルだったが、年俸調停の申請権を得てからは、差がついている。アライズの年俸は、212万5000ドル(調停回避)→610万ドル(アライズの申請額)→1060万ドル(マーリンズの申請額)。ゲレーロJr.は、790万ドル(調停回避)→1450万ドル(調停回避)→1990万ドル(ゲレーロJr.の申請額)だ。

 金額の開きは、パワーの有無が関係しているのだろう。過去3シーズンのトータル・スタッツは、アライズが打率.324と出塁率.376、20本塁打、OPS.802。ゲレーロJr.は、打率.283と出塁率.362、106本塁打、OPS.869だ。2人とも、守備はセールス・ポイントではない。

 ただ、アライズのシーズン・スタッツは、打率が.294→.316→.354、出塁率が.357→.375→.393、ホームランが2本→8本→10本、OPSは.733→.795→.861だ。いずれも上昇していて、2022~23年は、ミネソタ・ツインズからマーリンズへ移った昨年1月のトレードを挟み、2シーズン続けて首位打者のタイトルを獲得した。

 ゲレーロJr.は、打率が.311→.274→.264、出塁率が.401→.339→.345、ホームランが48本→32本→26本、OPSは1.002→.818→.788だ。サルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)と本塁打王のタイトルを分け合った2021年から、ホームランは2シーズン続けて減っている。それぞれ、マイナス16本とマイナス6本なので、2023年の本数は、2021年より22本も少ない。他のスタッツも、2021年→2022年がダウン、2022→2023年はほぼ同水準、といったところだ。

 それでも、今オフの年俸調停で、アライズは敗れ、ゲレーロJr.は勝った。アライズの申請額が高すぎた――例えば、1200万ドルではなく、1100万ドルや1150万ドルで申請していれば、ゲレーロJr.と同じくアライズも勝っていた――ということなのかもしれない。年俸調停の結果は、選手の申請額と球団の申請額のどちらかになる。

 ちなみに、2023年のスタッツは、打率、出塁率、OPSのみならず、WARもアライズがゲレーロJr.を上回っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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