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ノーヒッターから3登板でトミー・ジョン手術。3年近くを経て、再び快投は…。1年200万ドルで契約

宇根夏樹ベースボール・ライター
スペンサー・ターンブル Feb 24, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 スペンサー・ターンブルは、フィラデルフィア・フィリーズに入団するようだ。ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンによると、契約は1年200万ドル。そこに、最高200万ドルの出来高がついているという。

 今オフ、ターンブルは、デトロイト・タイガースにノンテンダーとされ――契約を提示されず――FAになった。2021年の夏にトミー・ジョン手術を受け、昨年4月に復帰したものの、先発7登板で防御率7.26。5月初旬に首を痛め、7月下旬から投げたマイナーリーグでも、先発8登板で防御率6.23に終わった。

 メジャーリーグでシーズン60イニング以上は、2019年の先発30登板で記録した148.1イニングしかない。この年の防御率は4.61だった。

 ただ、サンプル数は多くないものの、2020~21年は、先発20登板の106.2イニングで防御率3.46を記録している。2020年は56.2イニングで防御率3.97、2021年は50.0イニングで防御率2.88だ。2021年5月18日には、ノーヒッターを達成している。その後、3登板したところで、肘を痛めた。当時、ターンブルはブレイクしつつあった、という見方もできる。現在の年齢は31歳。ドラフト順位は、10年前の2巡目・全体63位だ。

 また、4シームの球速は90マイル台前半ながら、スピンが効いている。スタットキャストによると、2020年の平均スピン(回転量)は2500RPM(回転/分)、2021年は2497RPM、2023年は2458RPMだ。昨年、500球以上の4シームを投げた151人のなかに、平均2500RPM以上――4シームのみの数値――は12人しかいなかった。

 ターンブルは、奪三振が多いわけではないが、打球の半数前後はゴロになっている。フィリーズの本拠地、シチズンズ・バンク・パークは、ホームランが出やすい。

 トミー・ジョン手術直前のスタッツ、4シームのスピン、ゴロの多さを併せて考えると、フィリーズが、マイナーリーグ契約ではなく、メジャーリーグ契約を提示したのも頷ける。ローテーションに入るかどうかはわからず、可能性はそれほど高くなさそうが、その候補となり得るターンブルに、200万ドルの「投資」は高くない気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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