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8回裏のメルトダウン。打たれたのはシングル・ヒット1本だが、3人を歩かせて2人にぶつける

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェフ・ブリガム(ニューヨーク・メッツ)Jun 25, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月25日、ニューヨーク・メッツは、8回表が終わった時点で6対3とリードしていながら、その裏に4点を取られ、フィラデルフィア・フィリーズに逆転負けを喫した。

 1イニング4失点は、それほど珍しいことではない。ただ、このイニングは、メルトダウンと形容するのがふさわしかった。

 まず、2イニング無失点のグラント・ハートウィグに代わって登板したジョシュ・ウォーカーが、四球、ヒット、四球で無死満塁とした。ここでウォーカーと交代したジェフ・ブリガムは、アレック・ボームを三塁ゴロに討ち取った……と思いきや、ブレット・ベイティの二塁送球が少し逸れ、ボールはジェフ・マクニールのグラブからこぼれた。引き続き、無死満塁だ。

 そこから、ブリガムは、四球、三振、死球、死球により、塁上にいた走者を3人とも生還させた。無死から1死になったとはいえ、依然として満塁だ。ブリガムと代わったビニー・ニットーリが、対戦した2人をアウトに仕留め、ようやく、イニングは終わった。

 1イニングに、3人の投手が計10人の打者に投げ、より正確に言えば、最初の2投手が計8人の打者に、被安打1、与四球3、与死球2。1失策も絡み、4点を取られた。

 一方、9回表のマウンドに上がったクレイグ・キンブレルは、カイル・シュワーバートレイ・ターナーが続けてぶつけられたことに対する報復なのか、先頭打者のピート・アロンゾを死球で出塁させた後、三振、三振、外野フライでセーブを挙げた。

 メッツでは、勝ちパターンのリリーバー3人、ブルックス・レイリーアダム・オッタビーノデビット・ロバートソンが、いずれも、前日の試合に登板した(4対2で勝利)。レイリーは前々日から2連投、オッタビーノは26球、ロバートソンは1.2イニングだ。もっとも、バック・ショーウォルター監督は、このなかの誰かに多少無理をさせても、6月25日の8回裏に投げさせるべきだったかもしれない。

 メッツは、29勝27敗で5月を終えた。3億ドルを超える年俸総額――どこよりも高い――で貯金2は、満足できる結果ではないものの、ナ・リーグ東地区では首位のアトランタ・ブレーブスと4ゲーム差の2位タイにいて、ワイルドカード・レースにおいては、マイアミ・マーリンズとともに2番手に位置していた。ポストシーズン進出圏内にいたということだ。

 だが、今月に入ってからは、6勝15敗。シーズン全体では、35勝42敗だ。地区首位とワイルドカードの3番手、ブレーブスとロサンゼルス・ドジャースとは、それぞれ、15ゲームと8ゲームの差がある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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