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エンジェルスを解雇されたアップトンを加え、マリナーズは「アップグレード」するのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャスティン・アップトン Jun 11, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月21日、シアトル・マリナーズは、ジャスティン・アップトンと契約を交わした。アップトンは、開幕直前にロサンゼルス・エンジェルスの40人ロースターから外され、4月8日に解雇となった。その後、「エンジェルスを解雇されたアップトンに、この球団が興味を示す。一方、アップトンが抜けた外野は…」で書いたとおり、ミネソタ・ツインズが興味を示していたようだが、契約には至らないまま、1ヵ月以上が過ぎていた。

 マリナーズでレフトを守っているジェシー・ウィンカーは、昨シーズンまでシンシナティ・レッズにいて、過去2シーズンはいずれもOPS.930以上を記録した。だが、今シーズンのOPSは.614に過ぎない。

 ライトのミッチ・ハニガーは、新型コロナウィルスに感染し、4月16日から28日まで欠場したのに続き、復帰した4月29日の試合で右足首を痛め、再び故障者リストに入った。復帰までは、1ヵ月前後を要しそうだ。代わってライトを守っていたジャレッド・ケルニックは、今シーズンもトップ・プロスペクトの資質を発揮できず、5月13日にAAAへ送られた。

 アップトンはセンターを守れないが、センターのフリオ・ロドリゲスを含め、他の外野手たちも打てていない。また、DHは日替わりに近い。そのうちの一人であるエイブラハム・トロは、5月21日の試合でアダム・フレイジャーと交錯し――それぞれ、ライトと二塁を守っていた――左肩を痛めた。

 34歳のアップトンは、すでに全盛期を過ぎている。過去3シーズン(2019~21年)のOPSは、いずれも.725未満だ。もっとも、その前の3シーズン(2016~18年)に連続30本塁打以上のパワーは、完全に失われたわけではない。過去2シーズンの計131試合で打ったホームランは、26本を数える。

 アップトンがマリナーズのラインナップに加われば、少なくとも、現在の状況よりは上向くのではないだろうか。マリナーズからすると、アップトンが打てなかったとしても、失うものは少ない。アップトンに支払う金額は、最低年俸70万ドルを日割りにした残り分、約55万ドルだ。一方、エンジェルスは、残る契約の年俸2800万ドルから約55万ドルを引いた分を、アップトンに支払う。

 今シーズン、マリナーズとエンジェルスは、まだ対戦していない。6月16日以降に、19試合で顔を合わせる。そこで、アップトンが活躍してマリナーズに勝利をもたらせば、エンジェルスは、大枚を支払うアップトンによって黒星を喫することになる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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