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汚いプレーをする汚い選手が、最高の大型契約をゲットする!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マニー・マチャド Oct 27, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフのFAビッグ3は、外野手のブライス・ハーパー、内野手のマニー・マチャド、先発左腕のパトリック・コービンだろう。彼らはいずれも、大型契約を手にするはずだ。

 ちなみに、昨オフにFAとなった選手のうち、1億ドル以上の新契約は3人。エリック・ホズマー(サンディエゴ・パドレス)が8年1億4400万ドル、ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)が6年1億2600万ドル、J.D.マルティネス(ボストン・レッドソックス)は5年1億1100万ドルの契約を手にした。

 ハーパーとマチャドの新契約は、昨オフのホズマーとダルビッシュを合わせた2億7000万ドルを上回り、そこにJ.D.も合算した3億8100万ドルを超えてもおかしくない。2人の合計額ではなく、それぞれの契約が、である。コービンについては、ダルビッシュの契約がベースになると思われる。

 実力と実績もさることながら、ハーパーとマチャドは、FAとしては並外れて若い。2人とも、来シーズンの開幕を26歳で迎える。コービンは29歳。また、今シーズンの開幕時、ホズマーは28歳ながら、ダルビッシュとJ.D.はすでに30代だった。球団が選手と長期契約を交わすにあたり、年齢は大きなファクターとなる。例えば、ダルビッシュの場合、契約最終年の開幕時は36歳だ。それに対し、同じ6年契約であっても、ハーパーとマチャドは31歳で最終年を迎える。

 2人のうち、より大型の契約を手にしそうなのは、ハーパーだ。ここ3年の打撃成績を比べると、パワーはマチャドが少し上ながら、トータルではハーパーが勝る。マチャドが三塁と遊撃を守るのと同じように、ハーパーもライトだけでなく(レフトはもちろん)センターもこなす。

 ただ、MLBネットワーク・ラジオのスティーブ・フィリップス(元ニューヨーク・メッツGM)は、今月に入り、ニューヨーク・ヤンキースはハーパーと契約する気がないと報じている。欲しがる球団が減れば、競争の原理からして、金額も下がる可能性が生じる。

 一方、マチャドは今年のポストシーズンで、「ダーティ・プレーヤー(汚い選手)」と称された。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第4戦の10回裏、遊撃へゴロを打ったマチャドは、一塁を駆け抜ける際、左足で、ベースについていたヘスス・アギラー(ミルウォーキー・ブルワーズ)の右足を引っかけた。送球はそれより前にミットに収まり、マチャドも全力疾走していたわけではなかった。アギラーに文句を言われ、マチャドが言い返すと、乱闘にはならなかったものの、その場に両チームの選手が駆けつけた。これについて、クリスチャン・イェリッチ(ブルワーズ)は試合後に「ダーティ・プレーヤーによるダーティなプレー」とコメントした。

 前日の試合でも、マチャドはこんなプレーをしている。二塁で封殺されたスライディングが、チャレンジの結果、ベースではなく野手に向かっていたとして、打者もアウトのダブル・プレーとなった。マチャドのスライディングが物議を醸したのはこれが最初ではないし、ワールドシリーズ第4戦でも、マチャドは一塁を守っていたスティーブ・ピアース――2人はボルティモア・オリオールズでチームメイトだっただけでなく、ピアースはマチャドの結婚式に出席した――の右踵を踏みつけた。

 また、ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールが10月中旬に発表した記事のなかで、マチャドは、全力でプレーしないことがあるという批判について、「変わるつもりはない。自分はジョニー・ハッスルと呼ばれるタイプの選手ではない」と語っている。

 もっとも、マチャドのこういった言動が、契約に影響を及ぼすかどうかは不透明だ。フィラデルフィア・フィリーズをはじめ、マチャドを欲しがっている球団は多く、そのなかにはヤンキースも含まれているらしい。もしかすると、今オフ最大の、そして史上最高総額の契約を手にするのは、ハーパーではなくマチャドかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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