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10年ぶりに戻ってきたスラッガーが、ポストシーズン進出の切り札に!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホリデイは2007年のNLCSでMVPを受賞した Oct 15, 2007(写真:ロイター/アフロ)

 コロラド・ロッキーズのラインナップに、マット・ホリデイが戻ってきた。8月23日の試合に「5番レフト」として出場。クアーズ・フィールドの観客は、10年ぶりに帰ってきたホリデイを、スタンディング・オベーションで迎えた。

 2004年のメジャーデビューから、2008年のオフにトレードされるまで、ホリデイはロッキーズでプレーした。2006~08年の3シーズンに記録した打率.329と出塁率.400は、このスパンの3位と9位(1500打席以上)に位置し、平均31.7本塁打は16位ながら、44.3二塁打は誰よりも多かった。つけ加えると、平均16.3盗塁も決めている。ロッキーズを去った後の6シーズン(2009~14年)も、打率.298と出塁率.385、平均23.8本塁打と37.3二塁打を記録し、打者天国だけのスラッガーではないことを証明した。

 だが、2015年は故障に泣かされ、その後は成績も下降。昨シーズンの終了とともに、キャリアを終えるかとも思われた。7月29日にロッキーズとマイナーリーグ契約を交わしたものの、38歳の年齢を考えると、再びメジャーリーグでプレーできるかについては疑問符がついた。

 それでも、ロッキーズはホリデイを昇格させた。AAAの15試合で打率.346、出塁率.452、3本塁打、4二塁打を記録したことも大きいが、理由はそれだけではない。ホリデイは右打者だ。ロッキーズの外野には、10年前にホリデイと交換に加入したカルロス・ゴンザレスを含め、左打者3人が揃う。ベンチにも左打者しかいない。

 復帰戦は3打数0安打に終わったが、ロッキーズはサヨナラ勝ちを収めた。ワイルドカード・レースの2位に浮上し、地区首位のアリゾナ・ダイヤモンドバックスまで1ゲーム差に迫っている。

 11年前、ロッキーズは162試合を終えた時点で、当時は1枠だったワイルドカードの座にサンディエゴ・パドレスと並び、ポストシーズン進出をかけて、ワンゲーム・プレーオフを行った。その試合で、ホリデイは5回裏の同点タイムリー・ヒットに続き、13回裏にも同点に追いつくタイムリー三塁打を放った。そして、ジェイミー・キャロルがライトへライナーを放つと、三塁から必死に走り、最後はヘッド・スライディングでホームインした。そこから、ロッキーズは球団初の――現時点では1度きりの――ワールドシリーズ進出を果たした。ホリデイはリーグ・チャンピオン・シリーズでMVPを受賞した。

 なお、当時も現在もロッキーズにいるのは、ホリデイだけではない。2006~11年にロッキーズでプレーしたクリス・アイアネッタが、今シーズンから戻ってきている。ホリデイの復帰に際し、35歳のアイアネッタはこうツイートした。「起きてツイッターをチェックしたら…チームの最年長ではなくなっているのを知った気持ちは…ありがとうマット!」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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