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WBCのアクシデント。メジャーリーグでは同じチームにいる正捕手と控え捕手が本塁で衝突し、正捕手が負傷

宇根夏樹ベースボール・ライター
サルバドール・ぺレス(右はチェスラー・カスバート)Sep 22, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

いつもは同じチームでプレーしている選手が、WBCにおいては敵味方として対戦する。日本がオランダを下した3月12日の試合では、東京ヤクルト・スワローズの2人が対戦し、秋吉亮ウラディミール・バレンティンを三振に仕留めた。

その前日(日本時間にすると当日の朝)に行われたベネズエラ対イタリアの試合では、こんなプレーがあった。9回裏、2点を追うイタリアは1点を入れ、なおも2死一、二塁とした。そこから、ヒットで二塁走者が生還し、一塁走者も三塁を回った。ボールはセンターから投手に中継され、そこで少しもたついた後に捕手へ。本塁の手前にいた捕手は、走者にぶつかられながらもボールをこぼさず、サヨナラ負けを防いだ。しかし、そのまま立ち上がれずに試合から退いた。

衝突した2人、捕手のサルバドール・ぺレスと走者のドルー・ビューテラは、どちらもカンザスシティ・ロイヤルズに在籍している。しかも、彼らは正捕手と控え捕手だ。昨シーズンは、ペレスが128試合、ビューテラが34試合でスタメンマスクをかぶり、ロイヤルズの全試合を占めた。他には、トニー・クルーズ(現サンディエゴ・パドレス)が4試合に途中出場し、計9イニングを守っただけだった。

ベネズエラが発表したリリースによると、MRI検査の結果、ペレスが痛めた左膝に大きな損傷はなかったという。今後のWBCは欠場するが、メジャーリーグの開幕には間に合う見込みだ。

大事に至らずに済みそうなことに、最も安堵しているのはビューテラではないだろうか。相手が誰であろうと、無事を願う気持ちに変わりないだろうが、それに加え、ペレスが長期欠場となった場合、ビューテラではその穴は埋まらない。

ペレスはメジャーリーグを代表する捕手の一人だ。過去4年とも、オールスター・ゲームに選ばれ、ゴールドグラブを受賞している。2015~16年は2年続けて20本塁打以上を放った。一方、ビューテラは控え捕手としてキャリアを歩んできた。昨シーズンの打率こそ.285ながら、それまでは1割台が6年続いていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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