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睡眠の質が低下しがちな熱帯夜、女性は要注意

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
熟睡中のねこ・筆者撮影

睡眠時間は足りているけどすっきりしない

急に気温があがったこの数日、寝苦しい夜は睡眠の質も低下しがち。睡眠時間は不足していないはずなのにすっきりしない、という場合は睡眠の質が低下していると思われる。深い眠りがカットされ眠りが浅くなっている状態だ。こうした睡眠の質の低下は特に女性には要注意という報告がアメリカの医学学術誌Journal of American Heart Associationに先日発表された。この調査研究はコロンビア大学医学センターの研究者たちによる研究で323名の20-79歳までの女性を対象として行われた。その調査結果によると、睡眠時間は不足していなくても、寝つきが悪く、入眠するまでの時間が長かったり、眠りが浅いという軽度の睡眠障害がある場合、女性では血圧が上昇しやすくまた心臓血管障害の大きな要因である血管内皮の炎症が起こりやすくなる可能性があるという。血圧をコントロールし、動脈硬化による心血管疾患を予防する為に特に女性の場合は軽い睡眠障害でもケアして睡眠の質をよくすることが大事ということのようだ。睡眠時間は足りているはずなのに睡眠の質が悪いと感じている方は睡眠の質を改善することが必要といえる。

睡眠の質を高めるために寝る前の準備をしていますか?

さてこのところの暑い夜、睡眠の質を上げるためにまず寝る前の準備をしてほしいと思う。というのは私が診療で寝つきが悪い方の話を聞いていて感じるのはほとんどの方が身体的な疲労度と精神的な疲労度のバランスが取れていないからである。つまりいろいろ考え事をしたりパソコン作業をしたりで脳の前頭葉をフル回転している一方身体は動かしていない、という状態である。寝る前にはそのバランスをシフトすることが大事。寝る前の準備が大事なのでそのいくつかを紹介しよう。

1.脳と身体の疲労バランス

フル回転した脳を夕方休めて身体を動かす、これがいい眠りのための準備になる。例えば座りっぱなしの仕事のあと15分程度歩いたりストレッチするなどで軽く汗ばむ程度に身体を動かしておく。

2.寝室対策

寝具は夏場はシーツをこまめに洗い感触を心地よくしておく。ベッドに入ったときほっとできる触覚もリラックスの大事な要素である。

3.ブルーライト対策に鼻呼吸

スマホやPCのブルーライトの覚醒作用で寝つきが悪くなる。寝る前1時間くらいは作業をやめたいもの。とはいっても忙しい毎日で寝る前ぎりぎりまで仕事する方はベッドに入る前10分、自律神経を副交感神経優位に整えること。それには鼻呼吸で吸う息の長さの倍の長さで吐く呼吸法がいい。まず右の鼻をおさえ左の鼻から3数えながら息を吸う。次に左の鼻をおさえ右の鼻から6数えながら息を吐く。これを数回繰り返す。次に同じように右の鼻をおさえ左の鼻から4数えて息を吸い、左の鼻をおさえ右の鼻から8数えながら息を吐く。それが出来たら5数えて吸い10数えて吐く。吸った息の長さの倍の長さで息を吐く呼吸をしばらく続けると緊張が緩み副交感神経優位となり眠りの準備に入れる。鼻呼吸はヨガでもちいられる自律神経調整法だが私はこの「倍呼吸」を診療現場でストレスで緊張状態が続く方にお教えしたりする。

4.眼精疲労対策

目の周りの筋肉を和らげて眼精疲労を軽減するために蒸しタオルを作る。(小型タオルを水で濡らしラップで包んで電子レンジでチンをする。やけどをしないように程よい温度になるまで待つ)10分程度目の周りを温めると身体全体が緩み眠りに入りやすくなる。市販の蒸気アイマスクなどを使用してもいい。

5.ナイトキャップ

アルコールは眠りの質を低下させる。深い眠りをカットし、眠りを浅くしやすい。また利尿作用で夜中にトイレに行くことにも。寝る前のアルコールはやめてカモミールティーなど天然のハーブティーなどにする。

個人的に時々私がしているのは足浴(洗面器にお湯を入れ10分ほどくるぶしまでつける)とアルガンオイルに天然のラベンダーの精油を数滴混ぜて足裏のマッサージをすること。どちらも神経を使いすぎた後の身体の緊張をほぐすのに役立ちます。夜、空の星をながめるひと時など時には作りたいものです。

これらを参考にご自分なりに睡眠の質をよくする対策を立ててはいかがでしょう。

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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