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スマートパーキングとこれからの街づくり

上山信一慶應大学名誉教授、経営コンサルタント、大学院至善館特命教授
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最近、タイヤ止め(フラップ板)がないコインパーキングや出口に遮断機のない駐車場が増えている。入出庫時にナンバープレートを読み取り、料金の支払いもキャッシュレス(スマホアプリやクレジットカードへの請求)で済ませる。商業施設のほか、街中のコインパーキング、空港、市役所などの駐車場で少しずつ導入されている。

〇利用者、テナント、駐車場の3社にとってメリット

このような駐車場のスマート化(スマートパーキング)のメリットは大きい。利用者は、入場時にいったん停止し窓を開けて駐車券を受け取る手間がなくなる。慣れないと窓から手を伸ばしても発券機に届かない、雨で手や券がぬれるなどのストレス、車を縁石やポールにぶつける等の事故のリスクが消える。さらに病院などでは高齢ドライバーがブレーキとアクセルを踏み間違える事故の例もある。

もちろん、出庫時にも同じく窓を開けて券を入れて支払いが必要だが、その手間も消える。出庫前に精算できる機械がある場合でも、支払いを待つ行列があるとストレスだ。また、スタジアムや企業の事務所では決まった時間に入出庫が集中して渋滞が起きやすいが、これも緩和される。

スマート化は利用者に対して、(1)遮断機(フラップ板)レス、(2)駐車券レス、(3)出入り口停車レスの3つのレスをもたらし、買い物等のストレス軽減につながる。

駐車場事業者にとってのメリットも大きい。出入り口に遮断機や駐車券発行機を置かなくても済むので駐車台数が増やせる。出入り口付近の車と機械の接触や追突などの事故が減る。入出庫がスムーズになると、駐車場内での出庫渋滞、場外の路上での入庫待ち渋滞が減る。ひいては現場に待機させる保安要員の数も減らせる。

駐車場の多くは商業施設に併設されており、その9割がサービス券等を使えば実質的には無料である。施設テナントにとってはどうか。従来は、来店客が駐車券やサービス券をしばしば紛失して、その対応に人手がかかっていた。それが不要になる。また券を紛失するリスクがなくなると来店客のストレスが減り、来店意欲が高まるそうだ。スマート化はテナントにとっては来店者の増加や売り上げ増への布石となる。

さらに万引き抑止にも役立つ。特に車で団体で来て逃走する窃盗団による被害が激減する。全日本駐車協会の会報『PARKING』(2022年1月号)によると、大阪市のヤマダデンキLABI1なんば店ではスマートパーキングを導入した結果、盗難点数が22.8%減少(前後6カ月間の比較)した。関係者に話を聞くと、窃盗団は画像で車の出入りの様子やナンバーを記録されることを警戒するので、駐車場がスマート化された商業施設を避ける傾向がみられるそうだ。

〇スマート化のリスクは?

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慶應大学名誉教授、経営コンサルタント、大学院至善館特命教授

専門は戦略と改革。国交省(旧運輸省)、マッキンゼー(パートナー)を経て米ジョージタウン大学研究教授、慶應大学総合政策学部教授を歴任。アドバンテッジ・パートナーズ顧問のほかスターフライヤー、平和堂等の大手企業の社外取締役・監査役・顧問を兼務。東京都・大阪府市・愛知県の3都府県顧問を歴任。著書に『改革力』『大阪維新』等。京大法、米プリンストン大学院修士卒。これまでに世界119か国を旅した。オンラインサロン「街の未来、日本の未来」主宰 https://lounge.dmm.com/detail/1745/。1957年大阪市生まれ。

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