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先発完投型は「絶滅危惧種」なのか? 巨人・桑田コーチが一石を投じる135球完投論

上原浩治元メジャーリーガー
現役時代はメジャーリーグでもプレーした桑田コーチ(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 巨人の投手チーフコーチ補佐に就任した桑田真澄さんの持論が反響を呼んでいる。TBSのスポーツ番組「S☆1」に出演した際、巨人OBで野球解説者の槙原寛己さんとの対談の中で「個人的に(先発投手は)中6日、7日の時代ですから、なぜ完投しないのかが僕はよくわからない」と疑問を呈したのだ。私自身も桑田さんの考えに100%賛同したい。

 自らの現役を振り返ると、先発時代は1イニングを15球で投げ、9イニングを135球で勝つことを理想としていた。以前のコラムにも書いたが、135球なら完投できると想定し、マウンドに立ってきた。桑田さんが語っていた「135球を目指してなげてもらいたい」との言葉とも合致する。

 もちろん準備は必要になる。オフや春季キャンプから投げ込んで「肩、肘のスタミナ」を養い、走り込んで下半身を鍛える。戦う土台を作るためだった。先発だった時代、私はキャンプの約1カ月で2000球近くを投げ込んだ。シーズンで完投するためには、それくらいは必要だと思っていたからだ。24日のNHK「サンデースポーツ」で桑田さんにインタビューさせていただいた様子が放映された。このときにも桑田さんは「投げないと、投げるスタミナはつかない」と強調し、「平地で投げていてはだめ。ピッチャーはマウンドという傾斜で投げる。ブルペンで1球でも多く投げてほしい。傾斜を制すれば、勝てる投手になる」と説いていた。巨人の現状についても「ランニングもこれじゃ足りないと思った。いまの選手は、ポテンシャルそのものは高い。(練習の)やり方を知れば必ずできる」と指導を楽しみにしている様子だった。

 最近は「投げ込み」「走り込み」が悪しき習慣のように指摘されるが、桑田さんも話されているように、投手ならではのスタミナは投球動作でしか培われない部分がある。体のケア方法も進み、アイシングやマッサージなどを活用すれば、負担を軽減できる。

 理論派と言われる桑田さんが「先発完投型」を求めることに面食らった読者もいるかもしれないが、桑田さんは「成長過程にある学童野球や学生には球数制限が必要」と区別を明確にしている。つまり、先発完投型はプロの話なのだ。高卒でプロに入れば、2軍でも完投する投球術、スタミナを培っていけばいい。最近は「大事に育てる」という言葉が独り歩きし、〝過保護〟に見えるケースもある。投げすぎ、走りすぎという「やりすぎ」は確かによくない。だけど、やらなさすぎというのも、よくないように思う。

 「上原だって、肘を痛めたじゃないか。酷使した影響じゃないのか」という指摘には反論したい。肘を痛めたのはメジャー移籍後で、アメリカの滑りやすいボールと硬いマウンドに対応できず、肘に負担が集中した結果だった。完投にこだわった代償ではない。

 完投数は先発投手の栄誉でもある沢村賞の重要な選考項目でもある。知識に裏打ちされた桑田さんの指導方針が、先発完投型が「絶滅危惧種」のように扱われる時代に一石を投じることを期待したい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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