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プロ野球の戦力均衡へ…切り札になりえる選手の『年俸公表』

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:ロイター/アフロ)

 米大リーグ、ヤンキースをオフにフリーエージェント(FA)になった田中将大投手について、メジャーの公式サイトが「日本の球団が強い関心を示している」と伝えたとの記事を目にした。実際、楽天の石井一久監督兼ゼネラルマネジャー(GM)がチームへの復帰を歓迎する姿勢を示したという報道がある。

 今オフのメジャーはコロナ禍で新たなシーズンの通常開催を危ぶむ声があり、FA市場は例年以上に停滞。選手との高額契約に二の足を踏む傾向にあるようで、田中投手も例外ではない。ヤンキースは昨季の首位打者ラメーヒューと6年契約、2度のサイ・ヤング賞右腕クルバーとも単年契約で合意。年俸総額が課徴税(ぜいたく税)対象に迫り、再契約は厳しい状況となっているようだ。マリナーズからFAとなった平野佳寿投手や、海外FA権を行使した澤村拓一投手らも契約締結に至っていない。

 田中投手の移籍に関しては、報道レベルの情報しかわからないが、希望額が年俸1500万ドル以上と報じられており、獲得に興味を示したとされるパドレスを含め、条件面で折り合う球団がまだないということだろう。こうした状況の中で、古巣の日本球界復帰が取りざたされている。

 疑問がある。田中投手が求めているのは年俸なのか、メジャーという舞台なのかという点だ。

 田中投手は楽天を日本一に導き、海外FA権の取得を待たずにポスティングシステムでメジャーに移籍した。それだけ、メジャーでプレーしたいという気持ちが強かったはずだ。

 いまはどうなのだろうか。もちろん、契約には代理人と球団の熾烈な駆け引きがある。簡単な二択ではないだろう。それでも、最終的に田中投手がメジャーでプレーしたいのであれば、条件は「二の次」ということになる。はっきりと言えば、どんな条件であってもメジャーという舞台を選択するはずだ。

 一方で、年俸を含めた条件面を優先するのなら、話は違ってくる。それでも、わからないのは楽天は、田中投手が求める条件をどれくらい満たすのかという点だ。巨額契約の可能性を指摘する報道もある。あるいは、田中投手はメジャーへと送り出してくれた古巣には特別な感情があり、メジャーで希望する条件に届かないのであれば、復帰を優先したい意向があるかもしれない。

 日本の球団は仮に契約を結ぶことになっても、メジャーと違って、年俸が公表されることがない。報道されている年俸額も「推定」であり、実際の年俸と大きな乖離があることも茶飯事だ。自分たちの時代のことを棚に上げるつもりはないが、時代は変わっている。12球団が統一して公表するルールを作ればいいと思う。

 各選手の年俸が明らかになれば、各球団の年俸総額も正確にわかる。そうすれば、ぜいたく税を課したり、ドラフト権の譲渡などで「戦力均衡」を図る施策を押し進めることも可能になると思うが、どうだろうか。毎年のように優勝チームが入れ替わるような状況になれば、連覇の価値も高まる。読者の皆さんは、日本球界も選手の年俸を公表するという点をどう思いますか。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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