全ての選手にフェアじゃない…「菅野智之、巨人残留」で考えるスッキリしないポスティング移籍の違和感

(写真:ロイター/アフロ)

 ポスティングシステムを利用して米大リーグ(メジャー)挑戦を表明していた巨人の菅野智之投手が、新たなシーズンも巨人に残留することが決まった。日本時間8日朝に交渉期限を迎えたポスティングは不成立に終わった。

 智之(菅野投手)に関する日米メディアの報道を全て鵜呑みにすることはできないが、新型コロナウイルスの感染拡大などで不透明な要素も多くある中、「条件に見合うオファーがなかった」ということが不成立の要因なのだろう。

 巨人がポスティングによる移籍を容認し、昨年12月8日に手続きが申請されて以降、智之は誠実に心境を発信してきたと思う。「残留」の選択肢も示していた。実際に米国入りしたことも報道されており、真剣に考えた末の結論だったのだろう。だからこそ、智之自身が下した決断を私も含めて〝外野〟がとやかく言う権利はない。

 ただ、ポスティングに関する違和感は指摘したい。

 以前のコラムに目を通してくれた読者には繰り返しになってしまうが、「FA(フリーエージェント)とポスティングシステムは違う」という前提があいまいになってきている。

 ポスティング申請は球団に主導権があり、FAは選手が主導権を持つ。(海外)FAになった選手は自由な立場でメジャー球団と交渉することができ、交渉が不調に終わったときには残留も含めて国内のどの球団とも交渉ができる。ポスティングは海外FA権の取得を待たず、球団に「お願い」する形でメジャー移籍を容認してもらう。だからこそ、移籍が大前提というのが持論だ。私自身がかつて巨人にポスティングを訴えたときは認めてもらえなかったが、もしも認めてくれていたなら、どの球団のどんな条件のオファーにも応じる覚悟だった。

 当時は最高額で落札した球団のみが独占交渉権を獲得できたが、現在は対価となる「譲渡金」が日本の所属球団に入ることは変わらないものの、応札するメジャーの全ての球団と条件交渉が行える。譲渡金の有無を除けば、FAとの違いがないように映る。

 以前のコラムでポスティングシステムの申請を海外FA権取得の1年前(1軍登録日数が8年)と定め、選手が希望すればどの球団もポスティングを認める統一ルールが必要ではないかと書いた。

 選手はドラフト会議で指名された球団でプレーする。逆指名制度もいまはない。にもかかわらず、現状では、ソフトバンクはポスティングを容認しておらず、他の球団も「希望すれば何年で認める」などの指標は公にはなっていない。入団したチーム、その時のフロントの方針などによってポスティング申請の可否が分かれることは全ての選手にフェアとはいえない。これが、12球団で統一されたルールになっていないという指摘の根拠だ。

 ポスティングシステムの統一ルール化がいいのか、私自身のそもそもの持論でもあった制度自体の廃止へ舵を切り、その上で、海外FA権の取得条件を短縮したほうがいいのか。報道レベルで目にしただけだが、智之の交渉過程を見ていると色々と考えさせられた。

 ポスティングが廃止されれば、メジャーからの譲渡金を選手補強に回せなくなるというデメリットが日本の球団には生じる。ソフトバンクのように譲渡金よりも「世界一の球団」を標ぼうする豊富な資金を持つ球団と、譲渡金が入るなら中心選手のメジャー移籍を容認する球団の「格差」をどう解消するかという課題が生まれる。一つを変えれば、また一つ歪みが生まれる。だからといって、思考を止めていいとも思わない。ポスティングシステムをとっても、現状の日本球界には解決すべき課題があることが浮き彫りになった気がする。