なぜ田沢純一と高校生を同じドラフトにかけるのか!? 帰国時にこそ必要な「逆・田沢ルール」

ボストン時代のチームメイトだったタズ。2013年の世界一は良い思い出だ。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 うれしいはずのニュースに、どこか違和感が拭えない。

 10月26日に開催される今年のプロ野球・ドラフト会議。日本のドラフトを拒否して海外挑戦した選手を対象に帰国後、一定期間(高校卒業は3年、大学・社会人出身は2年)ドラフト指名を凍結する通称「田沢ルール」が撤廃された。ルールができたきっかけとなった当事者で、今季途中から日本のルートインBCリーグ「埼玉武蔵ヒートベアーズ」でプレーする田沢純一投手にもNPB(日本野球機構)入りへ門戸が開かれた。私自身、「田沢ルール」撤廃を強く訴えていた立場だったので、レッドソックス時代の同僚でもあるタズ(田沢)がどの球団から指名されるのか楽しみな面もある。

 一方で、NPB入りするプロセスとして、なぜタズをドラフトにかけないといけないのかが疑問だ。根拠はNPBの野球協約に基づいて制定される「新人選手選択会議規約」にある。第1条で新人選手について、要約すれば「日本の高校や大学などに在籍したことがあり、NPB球団と契約していない選手、日本国籍を持つ選手」と規定されている。そして第2条で新人選手との契約にはドラフト会議での指名が必要と定められている。通常のルーキーにあてはめれば当然の仕組みだ。しかし、メジャー通算388試合に登板し、メジャーのFA権も取得したタズも例外にならないことが違和感の要因だ。タズが本当に18歳の高校生と同じ土俵に上がらないといけない選手なのか。本音では誰もが答えをわかっている。

 タズは社会人の新日本石油ENEOS(現ENEOS)を経て2009年からレッドソックスでプレー。マイナーリーグの2Aからスタートし、バスで11時間近い移動を経験したと聞いた。過酷な環境、激しいサバイバル競争に勝ち残らなければ、メジャー昇格の扉は開かれない。私も含め、日本のプロで実績を積み、FAやポスティングシステムで最初から「メジャー待遇」が用意されている選手とは待遇も違う。タズははい上がった。2013年には一緒にレッドソックスのブルペンを支え、ワールドシリーズ制覇の歓喜の瞬間を共有した。こんな選手が新人選手なのだろうか。過去にもマック鈴木氏や多田野数人氏がメジャーリーグでプレーした経験がありながら、NPB入りする際に「新人選手扱い」でドラフト会議での指名を経て球団と契約している。ただ、今後は、メジャーでFA権を取得した選手など一定の実績を積んだ選手は新人ではなく、NPBでもFA扱いとし、12球団で獲得したい球団と条件面も含めて契約できるようにしたほうがいいと考えている。メジャー挑戦の入り口を制限した「田沢ルール」ではなく、帰国したときにこそ例外的なNPB入りを認める「田沢ルール」を設けるべきだ。

 タズには過去の実績だけでなく、これからの日本球界でも若手たちに参考になる経験値がある。先日、YouTubeチャンネル「上原浩治の雑談魂」の収録でタズが所属するヒートベアーズの練習場所まで出向いた。このとき、日本では中継ぎ陣が試合序盤から肩を作り始めることに驚いたという話をしていた。私も巨人に戻ってきて同じ感想を抱いた。中継ぎ陣が5回までにみんなブルペンで投球練習をしていたのだ。メジャーでは序盤で先発が崩れるケースを除いて5回まで誰も動かない。試合状況を確認しつつも、コーヒーを飲んだりしてリラックスして待機していた。タズともよく雑談をしていた。先発が好投しているのに、ブルペンで肩を作り出したら「俺を信用できないのか」と怒り出す投手もいるだろう。もちろん、日本とメジャーのどちらが正しいということではない。求められるのは試合での結果。メジャー式の調整法のほうがしっくりくる投手がいれば、タズから学ぶことができる。こうしたことも含めて、やっぱりタズは新人ではない。

 今年のドラフトで例外が認められることはない。だから、まずはタズがどの球団から指名される瞬間を待ちたい。即戦力の中継ぎが必要な球団からの指名が濃厚だろう。タズは「指名されたら、色んな人と相談したい」と話していた。私自身は、どこでプレーしてもずっと応援したいと思っている。現在34歳。私がメジャーに挑戦したシーズンが同じ34歳だった。現役人生は人それぞれだが、私はそこから巨人復帰も含めて44歳までプレーした。タズにも1年でも長くユニホームを着てほしい。26日のドラフト会議で「新人・田沢純一」を指名するのはどの球団か。