「攻撃的ゼロトップ」開花前に自滅。甲府に大敗/レノファ山口

17年9月以来の5失点=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは3月2日、維新みらいふスタジアム(山口市)でヴァンフォーレ甲府と対戦し、5失点で大敗を喫した。山下敬大が2ゴールを返したものの、ミスが絡んだ序盤の失点が重くのしかかった。5失点は17年9月の湘南ベルマーレ戦以来で、1年半ぶりの大量失点となった。

明治安田生命J2リーグ第2節◇山口2-5甲府【得点者】山口=山下敬大[2](前半10分、後半26分)甲府=ピーター・ウタカ[2](前半3分、同4分)、曽根田穣[2](前半17分、後半41分)、ドゥドゥ(後半2分)【入場者数】4001人【会場】維新みらいふスタジアム

堅守に立ち向かおうとした霜田戦術

スタメンは2人を入れ替え
スタメンは2人を入れ替え

 意表を突いたフォーメーションだった。

 レノファは開幕戦からスタメンを2人入れ替え、GK山田元気は17年8月以来の出場。ルーキーの小野原和哉も先発した。

 メンバー表だけを眺めれば、センターFWに山下敬大を置き、一つ下がったポジションから佐々木匠や三幸秀稔にパスを出させるというプランが思い浮かぶ。しかし、霜田正浩監督は山下を左ウイングに配置し、ストライカーではない佐々木を中央に置いた。実質的なゼロトップのフォーメーション。指揮官は「相手陣地でボールを握る時間を増やしたい」と狙いを紐解いた。

実質的なゼロトップとなった2日のフォーメーション
実質的なゼロトップとなった2日のフォーメーション

 小野原をアンカーに置き、前節そのポジションで先発していた三幸を一列前へ。さらに「ボール扱いのスキルに長けた」選手だと霜田監督が信頼する佐々木を、インサイドハーフではなく最前列に押し出した。三幸や佐々木などのボールを動かせる選手を物理的に高い位置に置き、5バックになる甲府の守備を揺さぶろうという策略だった。

 ゼロトップだからといって攻撃をしないというわけではない。佐々木自身がゴール前に飛び出すスピードやドリブルを兼ね備えるほか、周りが佐々木に預けることで高い位置で攻撃にアクセントを加えられる。希有な能力を生かして、センターFWに頼るだけではない攻撃のバリエーションを見せられるだろう。見かけのFWは0枚だが、敵陣で意識的にボールを動かせれば、3トップに劣らぬオフェンスは可能だ。

佐々木匠はテクニックや戦術理解度が高く、今節は前線の要を任された
佐々木匠はテクニックや戦術理解度が高く、今節は前線の要を任された

 ベクトルが前に向くゼロトップが機能したなら、レノファは違うスコアを手にしたに違いない。ところが、機能したかどうかを評価する前段階で、作戦は変更を余儀なくされた。

先手を取った甲府。後手のレノファ

 むろん甲府もレノファ対策を実践。準備してきた策で先に結果に繋げた。

 「三幸選手だったり、アンカーに入る選手に起点を作らせたくない。そこをしっかりケアした中で、センターバックやGKにプレッシャーを掛けて先手を取りたい。そういうところを自分たちの中で作り上げてきた」(甲府・伊藤彰監督)

 入念なゲームプランをベースに、甲府はレノファ守備陣のポゼッションに素早く対応する。

 その動きはジャブを効かすどころか、いきなりの先制パンチとなってレノファに襲いかかった。

 前半3分。GK山田元気のキックがピーター・ウタカにカットされ、そのまま跳ね返りがゴールイン。事故といえば事故のような形で、しかし甲府にしてみれば狙いとしたプレッシャーで引き金を引き、スコアを動かした。さらに1分後、甲府は縦パスにウタカが抜け出してGKと1対1の局面を作り、冷静に交わして連続ゴール。開始4分で2-0とした。

ヘディングシュートを決める山下敬大
ヘディングシュートを決める山下敬大

 早い時間に得点が入った試合は、得てしてスコアが続きやすいもの。試合が落ち着かない状態のまま、レノファは同10分、左のコーナーキックを獲得する。この好機にレフティーの吉濱遼平がアウトスイングのボールをペナルティーエリア内に供給。一度は跳ね返されるものの、拾った三幸から二次攻撃を展開する。再び吉濱がクロスを送り、タイミングを合わせた山下が1点差に迫るゴールを挙げた。

 レノファにとってはこれを反撃ののろしとしたかったが、立て続けに食らった2失点の影響からか動きが重く、攻撃がなかなか噛み合わない。足元で繋げる場面で簡単に蹴り出してしまったり、中盤の選手がパスコースを見つけ出せなかったりとリズムに乗れず、シュートレンジまでボールを運べなかった。

 「相手が5バックなのに蹴ってしまうところがあった。相手が前にそんなに人数を置いていなかったのに、サポートの人数が少なくて自滅した」(田中パウロ淳一)

 同17分にも左のクロスからあっさりと曽根田穣にゴールを割られ、点差はまたも拡大する。

山下はフル出場。反撃の2ゴール

 この時点でのスコアは1-3。レノファは最低でも2点を取らなければ勝ち点を得られないという状況に陥った。ボールを動かすだけではなく、「ゴールに向かって行かなければいけない」(霜田監督)という姿勢を鮮明にするため、前半28分過ぎから山下をセンターFWの位置に再配置。さらに後半のスタートから工藤壮人を投入し、ゴールを強く意識させた。

 だが、この日ばかりは勝利の女神がホームチームに微笑むことはなかった。後半開始早々、山田からのパスをカットしたドゥドゥが追加点を挙げ、4-1。点差はセーフティーリードとされる3点差に広がった。

シュートを放つ工藤壮人
シュートを放つ工藤壮人

 試合はほとんど決してしまったが、レノファは矢継ぎ早に高井和馬、高木大輔をピッチに立たせ、培ってきたコンビネーションを発揮。相手が守り切る体制にシフトしたことも作用して、高木が最終ラインの背後を突いたり、フリーキックの流れから工藤がヘディングシュートを放ったりと、ようやく攻撃のリズムが戻ってきた。

 後半26分には前貴之の斜めのクロスを、ファーサイドで山下が回収。「相手の前に入って先に触れば相手は付けないと思う。そういうところは常に狙っていた」とトラップが大きくなりながらも左足を振り抜き、この日2点目のゴールを手にする。

 息を吹き返したレノファはさらに同35分、前が左足で強烈なミドルシュート。GKの手を弾いてコーナーキックを獲得し、この流れから何度かチャンスを作った。それでも、次の1点を引き寄せることはできず、ゲーム最終盤にはまたしても甲府が追加点。レノファの守備陣が判断ミスを重ねて甲府に自由を与え、曽根田にも2点目となるシュートを許した。

難局こそ、チーム力をもう一度

 5バックのようになる相手に対して、攻撃的なゼロトップで対抗しようとしたレノファ。だが、真価を見せる時間を得られないまま、自滅的に失点を重ね、大敗を喫した。「サポーターには申し訳ないだけではなく、できれば入場料を返したいくらい」。試合後に行われた記者会見の冒頭で、霜田監督はそう吐露した。

 試合はGK山田のミスが絡んだ失点でスタートし、その後もGKや守備陣にミスが相次いだ。山田にとっては2年近いブランクがあり、試合感覚を戻せていなかった部分があったかもしれない。日本語が通じないドストンとの連係を高められないままに、試合に臨んでいた可能性も考えられる。山田だけが責めを引き受ける必要はなく、「たられば」になるが前半のうちに同点に戻すなど攻撃も噛み合っていれば、ことさら彼らがフォーカスされることはなかった。

 難しい試合こそ、ミスをカバーしあうチーム力が試される。

霜田正浩監督は「ケガがない限り山田を次も使う」と明言。ミスからの成長に期待を寄せた
霜田正浩監督は「ケガがない限り山田を次も使う」と明言。ミスからの成長に期待を寄せた

 霜田監督は「彼(山田)だけではなくて選手全員に、今日みたいな自滅のゲームでは人のせいにするなと(話した)。誰かが良かった、誰かが悪かったとか、戦い方がどうだったとか言える選手は一人もいない」と断言し、個人個人でプレーを省みるべきだと言葉を続けた。

 「出ていない選手も含めて、何が悪かったのかをちゃんと自分で考えて反省しなさいという話をした。もちろん一番反省しなければいけないのは、監督である僕。今日こういうゲームになってしまったことをもう一回振り返って反省したい」

 明るい要素ももちろんあった。守備の堅い相手から山下が2ゴールを挙げ、途中から出た工藤は右手の負傷がまだ癒えていないものの、競り合いからヘディングシュートまで持ち込んだ。守備陣はグループディフェンスははまらなかったが、守備でのラストプレーとなるシュートブロックは怠らなかった。

 それぞれの選手たちが5失点しようとも諦めずにプレーしていたのは、現状のレノファの誇りだ。ただ、頑張れば結果が出るというほど現実は甘くない。個人の熱をいかにチームの力にし、戦術的に戦ってゴールに向かうべきか。次節に向けての7日間のインターバルは今シーズンを左右しうる重要な1週間になるかもしれない。

 後半の45分間に出場した工藤は「ネガティブに捉えすぎても悪い方向にしか行かない」と強調。練習での立て直しを誓った。

 「開幕の2試合で悪いところが出たのをポジティブに捉えたい。残りの40試合、まだまだ巻き返せるし、順位的にもこれより下はない。上に向かって這い上がっていくだけ」

 道に躓きそうな石が転がっているなら、力を合わせて地を均し、声を掛け合い進まなければならない。次戦は今シーズン初のアウェー戦で、特徴あるチームの一つ、ジェフ千葉と対戦する。難所であればこそ、チームで乗り越えていきたい。