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『ロンドンハーツ』『アメトーーク』の作り方(3)~仕上げの流儀~

てれびのスキマライター。テレビっ子

『ロンドンハーツ』や『アメトーーク!』では、ドッキリでもスタジオトークでも「ガチな」リアクションを撮るために様々な仕掛けをしていくプロデューサーの加地。

そのために重要なことのひとつは番組の”空気”だ。そのために企画会議からこだわるのだと『はい!テレビ朝日です』で語っている。

「『アメトーーク』に関しては深夜番組で悪ノリメインみたいなところがあるので、最初から会議もダラっと。会議室で15人くらいでやるんですけど、まず最初にお菓子を食べるってところから始める(笑)。ケーキとか和菓子をADが買ってきてそれをダラダラと食べながら雑談からそのまま会議に入るみたいな。それが番組の空気。会議室の空気がわりと番組の空気に近いんじゃないかなって。意識的にそういう空気を作ってます」

そうやって生まれたリアルな“空気”を撮り逃さいために「台本を読まない」という辻。「ディレクターとの打ち合わせ重視」しているからだ。そうすることで柔軟なカメラワークを生んでいるのだ。ちなみに、辻が凄いのは、自分のカメラワークよって、その後、編集で加えられるであろうSE(効果音)が頭の中で流れているというのだ。

その編集に加地は「最終的な仕上げなので、一番慎重にやらなければいけない部分」だから時間をかける。

スタジオトークの場合、基本的には収録は2~3時間。それを1時間の放送枠に収めなくてはならない。

まずは当然だが、面白い部分を使う。そして全体の流れを重視する。

「あと、トークを使う使わないの選択はそれを使うことで芸人さんが損したりしないかな、とか。(略)出てるみんながやっぱり悪く思われたくないんで。ま、ちょっとしたことんんですけどキツイ一言言った後に『ニヤ』っと笑ったら、その『ニヤ』までちゃんと使ってあげないと、キツイこと言って他の人のリアクションに(カメラが)行っちゃうと『アイツ嫌なやつ』になっちゃう。でも実は冗談で言ってたりするから、そこで笑っているところまで使ってあげるかあげないかで、やっぱり印象が違ったりとか

『ロンドンハーツ』や『アメトーーク!』で出演者が決定的な悪者にならないのはこのためだ。

加地は「本当の芸を見せて欲しい」という視聴者の意見に少しだけ語気を強め反論する。

芸の幅が広がっていると思うんで色んな芸があっていいと思うんで。もちろん立川談志師匠のような芸も素晴らしいですし、それはそれで凄いと思うんですけど、今僕らの番組に出てくれているような中堅芸人と呼ばれる人たちの話術・フリートークの力ってホントに凄いと思っていて、個人的な意見で言えばトークの力は今の世代が一番強い。それはひとつの芸だと思ってます。ネタが得意な芸人さん、トークが得意な芸人さん、リアクションが得意な芸人さん。今テレビはいろんな番組があるんでそういうところでどのタイプの芸人さんが求められているかで、色んなタイプの芸人さんがいても僕はいいと思います」

『ロンドンハーツ』や『アメトーーク!』はプロデューサーの加地、カメラマンの辻ら、芸人愛、お笑い愛にまみれたプロフェッショナルなスタッフによって支えられ作られているのだ。

テレビ朝日は昨年開局以来初めてプライムタイム平均視聴率の年間トップの12.5%を獲得した。加地はそんな視聴率について以下のように語っている。

「(視聴率は)あくまで結果論なんで、その結果を踏まえて反省して次のまたOAの時にいかせばいいだけであって。やっぱり結果を求めるとどうしてもビビってしまうので思ったことをできなくなってしまって、どんどんどんどんこじんまりした番組になってしまう。個性のない番組になる。結果、見てもらえない。ホントは視聴率獲りたいのに獲れない。だったら獲ろうとしないほうがいい

<関連>

『ロンドンハーツ』『アメトーーク』の作り方(1)~プロデューサー加地倫三の流儀~

『ロンドンハーツ』『アメトーーク』の作り方(2)~カメラマン辻稔の流儀~

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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