バーニー・サンダースは、若者、キッズを魅了する74歳

ほとんどの人がTシャツなど「バーニー・グッズ」を身につけている

「肌がつるつる、つるつるの子ばっかり集まっているのよ」

「今、つるつるって、2回も言いましたよ」

と、一緒に食事をしていたジャズピアニストの大江千里さんに指摘された。

それぐらい、民主党の大統領指名候補を狙うバーニー・サンダース上院議員(74)が開いた選挙集会の参加者は、圧倒的に若者が多い。4月13日夕、彼はニューヨークのダウンタウン、ワシントン・スクエア・パークで集会を開いた。ニューヨーク市立大学のキャンパスに囲まれ、集会の参加者の過半数はおそらく10~20代の若者。日本やほかの候補者の集会では見られない光景だ。

こんな光景を見るのは、2011年秋に突然湧き上がった若者中心の格差反対運動「オキュパイ・ウォール・ストリート」以来だ。

19日に投開票があるニューヨーク州の予備選挙を前に、バーニーは必死に戦っている。 これまでに獲得した代議員数では、ライバルのヒラリー・クリントン前国務長官が1761人、バーニーが1073人と、ヒラリーが圧勝。しかし、バーニーはニューヨークのブルックリン生まれ。直近の予備選挙は、ヒラリーに対し7勝で、超リベラル市民が多いニューヨークで勝てば、代議員数の差を縮めるモメンタムがつくに違いないからだ。

13日現在、ツィッターで見つけたニューヨークの予備選挙の勝算は、ヒラリーが52%、バーニーが40%だ。

バーニーを近くで見るには、会場に早く行って並んで前の方に陣取るしかない。会場オープンは午後5時、前座開始が7時、バーニー登場が8時とフェイスブックに出ていた。私は午後2時から並ぶことにした。

パークの南側に着くと、友人のフォトグラファー、ポーレ・サビアーノが、バーニーのTシャツやバッジを売っているテキヤにカメラを向けていた。日本の原爆の被爆者を地道に撮り続けているが、この日は雑誌の仕事だ。

「どこに並んだらいい?」

「列は、パークの凱旋門の真南と南西角にあるよ。でも、バーニーの演台は凱旋門の真下だ。だから、南の入口に並んだ方がいいよ。列の前の方に面白いTシャツを着て、”フリーハグ”の看板を持った男の子がいるから、撮影しといたらいいよ」

と、てきぱきと教えてくれる。

列はまだ10メートルほどしかできていなかった。ラッキーだ。待ち合わせたイラストレーターで文筆家のNY金魚さんとも無事に会えた。金魚さんは、バーニーの大ファンで、ブロンクスとブルックリンの集会にも行ったツワモノだ。

「ケイコ!」

スーパーチューズデーの取材に行ったマサチューセッツ州ボストンに乗り合いバンでニューヨークから来て、戸別訪問のボランティアをしていたエイダにもばったり再会した。彼女と友人の女の子は、ジャンプスーツやコート全身に、自分たちで作ったバーニー・バッジを付けて販売していた。たくさんいるテキヤと異なり、売り上げをバーニーに寄付するのだ。

「バーニーは勝つわよ。ヒューーーー」

とエイダが雄叫びをあげ、列に並んでいる人たちもわーっとそれに応じた。

金魚さんと私の前後にいる家族連れや若者はみな、この日に買うまでもなく、バーニーのTシャツやバッジを身につけていた。イケメン白人夫婦の二人の娘は、おそらく3、4歳だが、Bernie Sanders for Presidentと書かれ、白髪頭にメガネをかけたバーニーの可愛いイラストのピンクのTシャツを着ていた。子供サイズだから特注だろう。アメリカの有権者の候補者に対する「愛」には、いつも驚く。

ボストンで、ヒラリーの集会に行ったが、お手製プラカードを持ってきた人はいたが、ヒラリーTシャツを着ている人など見なかった。バーニー支持者は、ざっとみて8割ぐらいがTシャツかバッジ、手製プラカード、バーニーのお面など「バーニー・グッズ」を持っている。

この日朝、通信・携帯電話大手ベライゾンで労使交渉が決裂し、従業員がストライキに入っていた。ストを決行した米通信労働者協議会(CWA)が、赤いT シャツで、赤い看板を持って、列の周りを練り歩き始める。組合組織率が低下する中、ストという極めてまれな行動に出たCWAに、列の老若男女から「ヒューーーー!」「CWA! CWA!」と応援の歓声が上がる。こういうとき、ニューヨークはリベラル派の都市だと痛感する。

この日、前座バンドはVampire Weekend。活動家の女優ロザリオ・ドーソン(彼女はこの集会のあと、ワシントンで座り込みをして逮捕された)、そしてバーニーの紹介は、映画監督スパイク・リーだ。スパイクは「クール・ガイ」だが、この日完全にすべってしまった。観衆が彼の年とは40 歳ぐらい離れているのを計算していなかったのだ。

「いいか、みんな、ここをヤンキース・スタジアムだと思ってくれ。バーニー!サンダース!チャ、チャッ、チャチャチャ!」

しかし、10、20代の若者はヤンキースなんてあまり興味がない。拍手はバラバラに終わった。ヤンキース作戦を見限ったDJが大音響の音楽を鳴らしたのに合わせて、バーニーと妻ジェインが舞台に上がってきた。スパイクは「あれれ」という感じだが、キャーーーーと若者の黄色い声と熱狂が沸点に達し、スパイクはすたすたと舞台から去った。隣からは、「わー、バーニー!バーニー!」と言っている金魚さんの声が聞こえる。

2時から待つこと6時間超。8時21分、バーニーが少し割れた声で話し始めた。

“This campaign is about…!”

とたたみ掛けるような力強い構成。尊敬され、尊厳ある労働者階級を取り戻そう。全米の最低時給を15ドルに引き上げよう(ヒラリーは反対)。同性愛者の権利を認めよう。人口の1%が、残りの99%よりも富を持つのはおかしい、と彼のシグネチャーである政策を訴えて20分ほど経ったとき、彼は、ヒラリーとの「深く異なる」政策を話し始めた。

ボストンの集会では、ヒラリー批判はしなかった。金魚さんによるとブロンクスとブルックリンでもヒラリーにはあまり触れなかったそうだ。バーニーは必死だ、と感じてちょっとぐっときた。おそらく、支援者たちはもっとぐっときていたのではないか。

「政治資金団体Super PACを通して、コーポレート・アメリカ、金持ち、欲が突っ張った人物から選挙資金を集めるのは、民主主義ではなく、少数独裁政治だ」

「ゴールドマン・サックスから講演料25000ドルを得た。なぜ講演の原稿を公表しないのか」

「何百万人もの雇用を奪う貿易協定に賛成してきたのはなぜか」

「ブッシュ大統領がイラク戦争を始める際、なぜ賛成したのか」

「安全な水を脅かすフラッキングを後押ししている」

彼が主張をする度、支援者は配られた青いプラカードを振って、歓声をあげた。弱まることがなかった。

「父は、ポーランド移民として、17歳のときニューヨークに来て、ブルックリンにアパートを借りられた。それこそがアメリカン・ドリームだ。両親は一所懸命働き、私たち子供は、その恩恵を受けた。私たちは、そうしたアメリカの民主主義を絶えさせることはできないんだ」

演説は9時25分に終わった。ボストンのときよりも15分以上長かった。

さて、予備選挙の結果はどうなることか。女優のロザリオ・ドーソンが、前座でこう言った。

「あんたたち、選挙にはいかないつもりでしょう。ニューヨークの予備選挙の投票率は異様に低いのよ。若者は選挙にいかないっていうのが定説だしね~」

ロザリオの焚き付けに、若者らは「ブーーー」と言った。果たして、彼らは投票所に行くだろうか。