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【F1】最も柔らかいC5タイヤ使用のオーストリアGP。前回Q3進出、角田裕毅のアタックに期待!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
角田裕毅(写真:ロイター/アフロ)

F1は新型コロナウィルス感染拡大によるカレンダーの変更を受けて、オーストリアのレッドブルリンクで2週連続のグランプリを開催する。6月27日決勝の第8戦・シュタイアーマルクGPに続き、7月4日決勝の第9戦は「オーストリアGP」だ。レース距離は同じだが、ピレリが持ち込むタイヤのコンパウンドが1段階柔らかくなるのが大きな違いとなる。

観客を入れて開催するレッドブルリンク
観客を入れて開催するレッドブルリンク写真:ロイター/アフロ

ホンダ得意のサーキットで4連勝

前線のシュタイアーマルクGPではマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がハミルトンに圧勝し、ポールトゥウイン。アゼルバイジャンGPのセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)の優勝を含めるとホンダはモナコGPから4連勝。ホンダにとっては、1991年にアイルトン・セナ(当時マクラーレン・ホンダ)が開幕4連勝を飾って以来、実に30年ぶりの快挙だった。

優勝したマックス・フェルスタッペン
優勝したマックス・フェルスタッペン写真:ロイター/アフロ

2週連続、同一サーキットで開催される「オーストリアGP」でもレッドブル・ホンダの強さは揺るぎないだろう。ただ、高地にあるサーキットのため、天候が変わりやすく、気温の変化も起こりやすく、ライバルにとってはそこが逆転のチャンスとなる。

昨年の延期された開幕戦、第2戦も今回同様のレッドブルリンク2連戦だったが、この時は2戦で使用するピレリのタイヤコンパウンドが同じものだった。コロナのロックダウン前のテストではレッドブルの好調が伝えられていたものの、蓋を開けてみるとレッドブルが圧勝。開幕戦はバルテリ・ボッタス、第2戦はルイス・ハミルトンがそれぞれ優勝し、両レースともに1-2フィニッシュを飾っている。

2020年はメルセデスが爪を剥き出しにして1-2フィニッシュした。
2020年はメルセデスが爪を剥き出しにして1-2フィニッシュした。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

今年はピレリが持ち込むタイヤが異なる。前回のシュタイアーマルクGPがハード=C2、ミディアム=C3、ソフト=C4だったのに対し、オーストリアGPではハード=C3、ミディアム=C4、ソフト=C5となる。C5は現行のF1タイヤでは最も柔らかいコンパウンドのタイヤであり、アタックでどれだけのタイムが記録されるか楽しみだ。

シュタイアーマルクGPで優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、2位のルイス・ハミルトン(メルセデス)、3位のバルテリ・ボッタス(メルセデス)ともに、C3(ミディアム)→C2(ハード)という戦略。ハミルトンは最後にファステストラップ狙いのC4(ソフト)への交換を行ったものの、セオリーは1ストップ作戦だった。

セルジオ・ペレス
セルジオ・ペレス写真:ロイター/アフロ

そんな中で戦略を変え、C4(ソフト)→C2(ハード)→C3(ミディアム)の2ストップ作戦に出たのがセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)。ピット作業でのロスが響き、3位表彰台は逃した。それ以上にチームメイトに対して大きな差がついた。その理由についてペレスは「ソフトタイヤが思ったよりもよくなくて、最初のスティントの終盤にかけてそれが痛手となりました」と振り返る。C4タイヤはオーストリアGPではミディアムタイヤとして使用される。

レッドブルリンクのレースでは通常1ストップ作戦がセオリーだが、柔らかいコンパウンドになるオーストリアGPでは2ストップ作戦も考えられる。そんな中、フェルスタッペンとペレスが作戦を変え、異なるデータを収集していたことが活きてくるかもしれない。

ポイント獲得の角田は予選にも期待

シュタイアーマルクGPでは4台ともに予選Q3進出を果たしたホンダのパワーユニット勢。角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)の今季2度目のQ3進出は非常にポジティブな結果だった。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーは予選6番手、角田裕毅は自己最高位タイの8番手と素晴らしい予選になったものの、角田はQ3のアタック後にボッタスの走路妨害をしたと判断されて3グリッド降格のペナルティ。11番手からスタートし、10位で今季3度目のポイントを獲得した。一方でガスリーは序盤に接触があり早々にリタイアに終わる。

不運があり最良の結果は得られなかったものの、アルファタウリ・ホンダのシュタイアーマルクGPは速さという意味でポジティブな方向性を示した週末だった。

角田裕毅
角田裕毅写真:代表撮影/ロイター/アフロ

そんな中、今回の注目は角田裕毅の予選アタック。角田はシーズン開幕前のテストで最も柔らかいC5タイヤを装着し、F1ルーキーながら堂々とそのタイヤを使いこなして株をあげた経緯がある。その後はクラッシュが相次ぎ、ルーキーとしての洗礼を受けながら、批判にさらされるようになってしまったが、シュタイアーマルクGPではミスなく、マシンをポイントフィニッシュへと導いた。少し安定感が出てきた今だからこそ、周りを興奮させるパフォーマンスも見せておきたいところだろう。

プレシーズンテストで好パフォーマンスを見せた角田
プレシーズンテストで好パフォーマンスを見せた角田写真:ロイター/アフロ

角田にとってレッドブルリンクは昨年のF2で初のポールポジションを獲得したサーキットであり、ヨーロッパのサーキットの中では経験が多いコース。しかもF1で1戦を走りきっているだけに今回は気持ちを攻めの姿勢にして良いレースを見せて欲しいものだ。

予選が課題になっている角田。オーバーテイクが難しく、シュタイアーマルクGPで見られたようにDRSのトレインが形成される展開になりがちなレッドブルリンクで、まずはしっかりQ3進出を果たし、今季ベストのグリッドを獲得できればシーズン中盤戦の流れが一気に変わるだろう。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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