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F1は初開催!MotoGPではおなじみのムジェロサーキットはどんなコース?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
イタリアGP(モンツァ)を走るシャルル・ルクレール(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)のミラクルな優勝となったイタリアGPの興奮冷めやらぬ中、F1サーカスはイタリアを少し南下し、トスカーナ州にあるムジェロサーキットで「トスカーナGP」を開催する。

イタリアGPで優勝したガスリー(アルファタウリ)【写真:本田技研工業】
イタリアGPで優勝したガスリー(アルファタウリ)【写真:本田技研工業】

新型コロナウィルス感染拡大の影響でカレンダーが大幅に変更され、同一サーキットで2週連続のレース開催もあった今年のF1だが、ここからのシーズンの折り返しはチームもドライバーも見守るファンも未知の要素が増えていく。

その際たるものが、F1初開催コース、ムジェロでのレースだ。

MotoGPイタリアグランプリの舞台

ムジェロというサーキットがある地名はF1以外のモータースポーツも見るファンなら一度は耳にしたことがあるかもしれない。

F1チームがテスト走行を行うサーキットとして知られていたし、ムジェロは何より2輪ロードレースの世界では最高峰イベントの「MotoGPイタリアGP」を毎年開催しているサーキットである。

ムジェロを走るマルク・マルケス【写真:本田技研工業】
ムジェロを走るマルク・マルケス【写真:本田技研工業】

2輪レースの人気が高いイタリアではミサノサーキットのサンマリノGPと並んで年に2回MotoGPが開催されている。かつてはミサノ、イモラ、そしてムジェロで順番にイタリアGPが開催されていたが、1994年からイタリアGPはムジェロに固定されている。

ヴァレンティーノ・ロッシ(現ヤマハ)が7年連続でムジェロでの勝利を飾るなど、地元イタリア人ライダーが強いコースで、黄色い発煙筒を焚いたロッシファンの熱い応援でお馴染みだ。今年はMotoGPではなく、F1を開催するというコロナ禍ならではのハプニング。F1トスカーナGPではサーキットのオーナーである「フェラーリ」が3000人程度の観客を招待することになっている。

そう、トスカーナGPはフェラーリのF1参戦1000レースを記念するレースでもあるのだ。フェラーリはトスカーナGP限定でF1参戦初期を彷彿とさせるワインレッドのスペシャルカラーで戦うことになっているなど気合いは十分。しかし、今季は現状ランキング6位と厳しいレースが続いており、自社サーキットでその流れを変えられるかどうか、注目が集まる。

フェラーリはワインレッドの特別カラーでトスカーナGPを戦う【写真:Ferrari】
フェラーリはワインレッドの特別カラーでトスカーナGPを戦う【写真:Ferrari】

オーバーテイクは厳しい?

ムジェロサーキットはフィレンツェに近い丘陵地帯にある。今年、急遽F1開催が復活することになったイモラサーキット(エミリア・ロマーニャGP)とは70kmほどしか離れておらず、日本でいうとツインリンクもてぎ(栃木県)と筑波サーキット(茨城県)の距離感に位置する。

1周は5.245kmで、高低差が41m。メインストレートで一気に丘を駆け上がって、コーナーリングしながら降りてくるというイメージのコースだ。MotoGPではターン1で限界ギリギリのブレーキング勝負が見どころになるが、F1ではDRSゾーンがメインストレートに設定されているので、やはりターン1が最大のオーバーテイクポイントになるだろう。

ムジェロのコースレイアウト【写真:PIRELLI】
ムジェロのコースレイアウト【写真:PIRELLI】

他にオーバーテイクポイントがあるか?というとF1ではちょっと厳しいかもしれない。ムジェロは1974年からコースレイアウトが変わっておらず、何よりコース幅が狭いクラシックコースだ。ターン1以降のダウンヒルは右、左と続くコーナーの連続。マシンをバンクさせながら走る2輪レースでは迫力満点だが、ダウンフォースがたっぷり効いたF1マシンでは高速で駆け抜ける複合コーナーとなる。

コーナーリングのGフォースもかなりキツイものになると考えられ、ドライバーは体力的にかなり厳しい戦いを強いられるだろう。もちろん、それはタイヤに関しても同じで、路面の攻撃性を含めて負担が大きいコースだ。MotoGPでは1分45秒台がコースレコードだが、コーナリングスピードの速いF1はとんでもないラップタイムが記録されるだろう。

ムジェロを走るマルク・マルケス。MotoGPでもハイスピードコースだ。【写真:本田技研工業】
ムジェロを走るマルク・マルケス。MotoGPでもハイスピードコースだ。【写真:本田技研工業】

そんな刺激的なコースだが、どちらかというと2輪レース向きのコースレイアウトであり、4輪のトップカテゴリーでは2008年にDTM(ドイツツーリングカー選手権)が開催されたのが最後だ。

初開催レースに強いのは?

F1初開催で、4輪レースのデータがほとんど無いというのは、新開催地のストリートコースや改修後に復活開催となったコースでの初レースの時と同じようなドキドキ感を味わえる。

未知の要素が多い分、誰がフリー走行でイニシアチブを取れるか興味深い。ホンダのパワーユニットを積むレッドブルのポジションは?フェラーリは速さを取り戻せるのか?やはりメルセデスは強いのか?など、これほどフリー走行から気になることが多いグランプリは久しぶりだ。

当初の予定では年間22戦に膨れ上がり、新開催サーキットも増えているF1だが、初開催コースという意味では2018年のフランスGP(ポールリカール/復活開催/レイアウト変更)以来、2年ぶり。全くの初開催という意味では2016年のヨーロッパGP(バクー市街地)以来4年ぶりとなる。

伏兵になり得るか?メルセデスのバルテリ・ボッタス【写真:Daimler】
伏兵になり得るか?メルセデスのバルテリ・ボッタス【写真:Daimler】

近年では他にも2015年メキシコGP、2014年ロシアGPなどが初開催のレースだったが、2014年のパワーユニット規定になってから上記の4グランプリでは全てメルセデスのドライバーがポールポジション、優勝を飾っている。やはりどんな条件であってもメルセデスは盤石だ。

ホンダにとっては地元イタリアが拠点のアルファタウリが奇跡的な優勝を果たして勢いに乗っている状況。その一方でマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)にパワーユニットのトラブルが発生し、リタイアとなり、ランキングを下げてしまった。

MotoGPではホンダは最強メーカーであるが、実は意外にもムジェロは勝利数が少ないサーキットで、MotoGPクラスでの優勝は2014年(マルク・マルケス)以来無い。ちょっと相性は良く無い感じだが、それを跳ね除けるレースを期待しよう。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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