アロンソがインディ500でまさかの予選落ち!しかし、まだアロンソには出場の可能性がある?

フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・レーシング)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

世界三大自動車レースの一つ「インディ500」の予選で、まさかの事態が起きた。5月18日(土)、19日(日)の2日間、米国・インディアナポリスモータースピードウェイで開催された公式予選で、2度目のインディ500挑戦を行なった元F1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン/シボレー)が決勝へ進出できる33台の中に入れず、バンプアウト(予選落ち)となったのだ。

世界自動車レース三冠を目指したアロンソ

2005年、2006年のF1ワールドチャンピオンであるフェルナンド・アロンソ(スペイン)。マクラーレン・メルセデスに乗った2007年にF1モナコGPを制し、トヨタ・ガズー・レーシングから参戦した2018年のル・マン24時間レースでは初挑戦ながら優勝を果たした。

F1モナコGP、ル・マン24時間が含まれる「世界三大自動車レース」の中で、アロンソが勝っていないのは「インディアナポリス500マイルレース」(=インディ500)だけ。2017年にトップチームであるアンドレッティ・オートスポーツから初挑戦し、一時首位を走るもエンジントラブルでリタイアの憂き目に。今季は英国のマクラーレンがアロンソのためにスペシャルチームを用意し、1972年に同社の車体でインディ500を優勝したマーク・ダナヒューが纏ったカラーリングで参戦した。

昨年をもってF1から事実上の引退をしたアロンソは、今年は6月のル・マン24時間レースまでのWEC(世界耐久選手権)にトヨタから参戦すると共に、グラハム・ヒル以来の「世界三大自動車レース」全制覇=トリプルクラウンを目指し、インディカーシリーズの最も重要なレース「インディ500」に挑んでいた。スポット参戦が可能なインディカーシリーズには「インディ500」のみへの参戦だった。

クラッシュから不運続きで予選落ち

フェルナンド・アロンソの悲劇は5月15日(水)に行われたプラクティス(練習走行)2日目から始まった。この日、アロンソはターン3でコース外側のウォールにクラッシュ。まるでピンボールのように反対側にマシンが飛ばされ、コース内側ウォールにもヒット。怪我は免れたものの、マシンは大きなダメージを受けた。

(動画:アロンソのクラッシュ/インディカー公式YouTube)

アロンソはプラクティス初日も電気系トラブルで満足に周回できず、流れの悪さはここからすでにあった。クラッシュ翌日の5月16日(木)のプラクティス3日目はマシンの修復が間に合わずに走行なし。ターボブースト圧が予選を想定した1.4バールへと引き上げられる5月17日(金)のプラクティス最終日(ファストフライデー)には出走できたものの、ライバルに対して大幅な遅れをとって挑まなくてはならなかった。

そして、2日間に渡って行われる公式予選初日となる5月18日(土)は31番手のタイムを記録。36台が出走した今年のインディ500には33台が決勝に進出するが、今年は初日に上位30台の決勝進出が確定し、5月19日(日)に最後の3台の枠をかけて争う「ラストロウシュートアウト」(最終列予選)が開催されるという方式に変更されていた。すなわち、アロンソは5月19日(日)の最終列予選で6台中3位までに入れなければ予選落ちという危機に陥っていたわけだ。

不運はさらに続いた。5月19日(日)は当初から雨予報。インディ500は雨が降ると走行ができなくなるが、アロンソの練習中に雨が降り始め、またも満足に走行できず。スケジュールはディレイし、雨が止むのを待つことに。雨が止み、コースオフィシャルが路面を乾かし、現地時間の16時30分に最終列予選が始った。

アロンソは1台1台がアテンプト(予選アタック参加)をしていく予選で6台中3番手につけるも、最終アタッカーのカイル・カイザー(フンコス/シボレー)の平均時速がアロンソを上回り、アロンソは6台中4番手でバンプアウトされた(=予選落ち決定)。

甘くないインディ500の洗礼を受けた

アロンソの2度目のインディ500挑戦はまさかの結果になった。しかし、当初から今年のインディ500はそう甘くないという予想がされていたのも事実。それはアロンソの今季の体制にあった。

英国のマクラーレンと契約するアロンソは華々しく「マクラーレン・レーシング」からインディ500伝統のカラーリングと72年の優勝ナンバー「66」で参戦を発表したものの、実際の中身の運営を担うのはインディカー経験が少ない英国のレーシングチーム「カーリン」であった。

同チームではかつて佐藤琢磨がイギリスF3時代に所属したジュニアフォーミュラの名門で、F1参戦が噂されたこともあった英国モータースポーツ界のビッグネームだが、インディカーでの経験はまだ2シーズン目というチーム。今季はパトリシオ・オワード(メキシコ)が8位フィニッシュを果たしたものの、それ以外はマックス・チルトン(イギリス)も含めて上位争いに加わることは少なく目立たない存在だった。

市街地コースや通常のサーキットで開催されるロードコースと違い、チームが持つ特殊な技術力、ノウハウが鍵となるオーバル(楕円形コース)で経験不足の「カーリン」は苦戦。スピードも厳しいものがあり、トラブルシューティングやクラッシュしたマシンの修復を含めて、今大会最大級のビッグネーム、アロンソを迎え入れるには体制が厳しいものだったと言える。

経験不足の「カーリン」に頼らざるを得なかったそもそもの始まりはF1の「マクラーレン・ホンダ」で生まれたホンダとの不仲。2017年にアロンソが挑戦した時はホンダエンジンの「アンドレッティ・オートスポーツ」からの参戦だったが、アロンソはシボレーエンジンでの参戦を選択。シボレーのトップチームでかつてマクラーレンが70年代に組んだ名門「ペンスキー」は5台体制の大所帯であり、アロンソを受け入れる枠はなく、名前は「マクラーレン」でありながら非強豪チームからの参戦だった。

そして、今回の予選方式変更は「ラストロウシュートアウト」(最終列予選)を開催することで、最後に決勝グリッドを争う緊張感を演出すると共に、決勝レースで最後列のドライバーが奇跡的にトップを争うというドラマチックなシナリオを作ろうという、主催者の意図も垣間見れるものだった。そこで最後尾でもアロンソが決勝進出を獲得していればドラマの始まりだったのだが。

まだある?アロンソ決勝進出の道

予選落ちの憂き目にあったフェルナンド・アロンソだが、過去にも多くの有名ドライバーが予選落ちを喫した例はある。

1958年にはF1ワールドチャンピオンのファン・マニュエル・ファンジオが予選落ちを喫したという記録があるし、2002年には現在はF1解説者を務めるジョニー・ハーバートも予選落ちしている。

ビッグネームにも決して甘くはない「インディ500」だが、実はアロンソには決勝レース出場の道はある。

他のレースでは考えられないことだが、「インディ500」では予選落ちを喫したドライバーが決勝進出を果たしたドライバーのシートを得ること(または買うこと)ができるのだ。

その理由は「インディ500」の予選はドライバー単位の予選ではなく、クルマ(マシン)単位の予選であるということから、こういうことができるのだ。つまり決勝レース進出を果たしたのは33人のドライバーではなく、33台のマシン。決勝レースまでは5月24日(金)のカーブデー(最終プラクティス)しか走行チャンスがないが、決勝進出ドライバーのマシンを得て、決勝に出ることも可能なのである。

これは「インディ500」では昔からの伝統で、予選を別のドライバーで戦い、決勝だけレギュラードライバーが乗るということも過去にはあった。また、怪我で欠場のドライバーが途中から別のドライバーにシートを譲るということもできる。近年では、2011年に予選落ちしたライアン・ハンターレイ(アンドレッティ・オートスポーツ)がブルーノ・ジュンケイラ(A.J.フォイト・エンタープライゼス)のシートを買い取り、最後尾から決勝レースに出場した例がある。ルール上、認められているが、観客からはブーイングも当然起こるものだ。

ただ、今回ばかりは厳しい。なぜなら予選落ちを喫したのはフェルナンド・アロンソマックス・チルトンパトリシオ・オワードという「カーリン」系の3台。同じ「カーリン」のチャーリー・キンボールが20番手で予選通過を果たしているが、アメリカ人ドライバーであり、当然スポンサー付きのスポット参戦であるため、アロンソがここにマクラーレンカラーで乗るのは考えにくい。

大きなスポンサーがついていないマシンでも、流石にホンダエンジンのマシンには乗れないし、新規チームでカーブデーから参戦して優勝できるほど「インディ500」は甘くない。アロンソの第103回「インディ500」挑戦は終わったと考えられる。

マクラーレン・レーシングのツイッターは「チームにとってタフな週末になりました。私たちのファンにブリックヤード(インディ500のコース)で応援するチャンスを無くしてしまい申し訳ないですが、サポートありがとうございました」と綴り、更新が止まっている。