新・全日本最高峰チャンピオン決定戦!鈴鹿・MFJグランプリで年間王者に輝くのは誰か?

中須賀克行(左下)が5年守ってきたゼッケン1番は誰の手に?

オートバイレースの全日本ロードレース選手権の最終戦「MFJグランプリ」が11月4日(土)5日(日)の2日間、鈴鹿サーキット(三重県)で開催される。今年も同選手権の全クラスが開催され、前戦・岡山で水野涼が王座を決めた「J-GP2」(600cc)クラスを除き、チャンピオンが未決定。メインレースとなる最高峰「JSB1000」クラスは今年も恒例の2レース制でチャンピオンを決する戦いだ。

新時代のJSB王者候補は6人

2017年、排気量・約1000ccの通称「スーパーバイク」と呼ばれるJSB1000クラス(以下、全日本JSB)は一つの時代の転換期を迎えている。ヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキの国内4大メーカーによる対決の舞台となっている同レースで、今年はスズキ(GSX-R1000)、ホンダ(CBR1000RR SP2)がニューモデルを導入し、各社のマシンが新世代バイクに移行を完了した。

電子制御デバイスが多用されたニューモデルの開発競争がいよいよ本格化し、その戦いは夏の「鈴鹿8耐」に向けてどんどん激化。3年目の熟成を重ねたヤマハ(YZF-R1)が今年も8耐を制することにはなったが、その後も来年に向け、全日本JSBを舞台にその競争は続いている。

また、今年は全日本JSBのタイヤが世界のスタンダードに合わせる形でホイール径17インチサイズに統一(FIM世界耐久選手権の鈴鹿8耐だけは同選手権の規定で、従来通りの16.5インチホイール用のタイヤが使用できた)。そのタイヤの変化が全日本JSBの勢力図に大きな波乱をもたらすことになり、なんと全日本JSBを5連覇中の中須賀克行(ヤマハ/YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が3戦も転倒リタイアを喫し、チャンピオン争いから脱落してしまった。

ボーナスポイント3点を含み2レース制で開催される最終戦「MFJグランプリ」でチャンピオン争いに残っているのは6人。ランキング首位の津田拓也(スズキ/ヨシムラスズキMOTUL)、2位の高橋巧(ホンダ/MuSaShi RT HARC PRO)、3位の渡辺一馬(カワサキ/Kawasaki Team GREEN)、4位の藤田拓哉(ヤマハ/YAMALUBE Racing Team)、5位の野左根航汰(ヤマハ/YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、6位の濱原颯道(スズキ/ヨシムラスズキMOTUL)という平均年齢25.3歳のメンバーによる王座争いだ。誰がチャンピオンを獲っても新王者ということになる。

可能性が高いのは上位の3人

最終戦「MFJグランプリ」は2レース制で開催されるが、今年も第1レースは極端に短い8周、そして第2レースはタイヤのマネージメントが必要な距離の20周で争われる。イケイケドンドンな速さも、緩急つけた走りと駆け引きが求められる最高峰クラスのテクニックも両方求められる最終戦。6人ともに新王者候補というフレッシュな面々のチャンピオン争いに相応しい設定になっている。

候補は6人居るとはいえ、ランキング上位の3人、津田拓也(155点)、高橋巧(149点)、渡辺一馬(144点)はポイント差がかなり接近した状態であり、この3人がチャンピオンになる可能性が高いライダー達だ。しかしながら、首位の津田拓也、3位の渡辺一馬は今季まだ未勝利。緊張感とプレッシャーにさいなまれる王座決定戦に「1勝もできずにチャンピオン」というあまり嬉しくない称号だけは欲しくないだろう。当然、優勝を狙って全力プッシュしてくるはずだ。

チャンピオン争いからは脱落したものの、今季最多の3勝をあげているのは中須賀克行(ランキング7位)。17インチタイヤとのマッチングに苦戦し、転倒リタイアを3度も経験するトラウマ寸前の状態から立ち上って勝利してきた中須賀が目立つことなくシーズンを終えるとは考え難い。鈴鹿・最終戦を2勝すればランキング4位まで浮上できる可能性があるからだ。

逆転チャンピオンを狙うライダー達にとって鍵となるのは中須賀が走るポジション。津田拓也(155点)と高橋巧(149点)の点差は6点。高橋巧は2連勝すれば文句なしにチャンピオン獲得となるが、決勝順位ごとのポイント差が一番多いのは1位(28点)、2位(25点)の3点差で、この3点の差をモノにしなければ、チャンピオンの可能性はより厳しくなる。ランキング3位の渡辺一馬(144点)にとってはなおさらだ。絶対的にレースでトップを走る可能性が高い中須賀を上回る速さで優勝してこそ、目の肥えた全日本のファンに認められる新王者になれるのだ。ある意味、いつも以上にスリリングな最終戦になる予感がする。

新チャンピオンには価値がある

シーズンを通じて速さを見せ、今季も軸になってきた中須賀の王座争い脱落は非常に残念なことだった。6人の新王者候補たちも中須賀のスランプでチャンピオンになったと言われたくはないだろう。レースを見る側はシラけてはいけない。いかにリタイアせずに、ミスをせずにプッシュし続けるかがバイクレースの最大の難しさだからだ。さらにニューマシンの開発という未知の事象も多く起こる重責を担い、ポイントを重ねてきたライダー達は胸を張っていいファイターたちといえよう。

振り返ってみると、2010年代のキング、中須賀克行が初めて全日本JSB王者に輝いた2008年(もう9年も前!)もそうだった。当時の中須賀は27歳という若手。最近でこそ27歳は中堅といえる年齢だが、その時代はグランプリを経験した伊藤真一、岡田忠之らのベテランがトップチームで走っていたのだ。伊藤真一は中須賀の初のチャンピオンをかけた最終戦「MFJグランプリ」(この年は岡山での開催)のレース1で優勝していたくらいだ。ビッグネームから受けるプレッシャーは相当なものだったであろう。

さらに2008年のシーズンを席巻したのは当時、「ヨシムラスズキ」で参戦していた秋吉耕佑。前年の8耐ウイナーでもあり長年のテストライダーキャリアで引き出し豊富な秋吉は速さとレースのバトルで中須賀を凌駕していた。そんな中、中須賀はポイントをコンスタントに重ね、凄まじいプレッシャーの中で3位と6位で「MFJグランプリ」をフィニッシュし、初の栄冠を勝ち取っている。その後の彼の活躍はご存知の通りだ。

チャンピオンになることで周りの目は変わる。自分のキャリアの流れが変わる。偉大なる7度の全日本JSBチャンピオンの先輩がちゃんと証明してきた道なのだ。その道を開くのはスズキの津田、濱原か、ホンダの高橋巧か、カワサキの渡辺か、ヤマハの藤田、野左根か?新世代バイクに、新しいタイヤ、その中で誕生する新チャンピオンの姿をぜひサーキットで讃えて欲しい。