2015年のモータースポーツを振り返る。人気回復の真価が問われるのは2016年か?

SUPER GT

2015年はモータースポーツ界にとって話題が多い1年となった。ようやく活気が本格的に戻ってきたと感じる年だったと感じるが、読者の皆さんはどうだろうか?年の瀬ということで、2015年のモータースポーツを総括していきたい。

国内レースは各サーキットで観客増!

とにかく今年は様々なレースイベント会場で「お客さんが増えてきた」と感じる1年だった。増えてきた、というよりは「戻ってきた」と表現する方が正しいかもしれない。何にせよ、明るい雰囲気がどのイベントにも漂い、あらゆるレースイベントで数字上でも観客動員数が前年比増となった。

国内レースイベントでは人気の「SUPER GT」でゴールデンウィーク開催の第2戦(富士)で予選、決勝合わせて91500人の観客動員があり(前年は89400人)、「SUPER GT」はついにトータル9万人の観衆を集めるイベントに成長した。接戦のチャンピオン争いが見られた最終戦(ツインリンクもてぎ)でも、観衆はトータル5万人となり、前年の47500人を上回った。2015年はレース開催時期を変更したサーキットもあったため動員数が一部では減少したが、熱心なファンのトーンは昨年以上と言っても過言ではなく、近年はレース本番だけでなく公式合同テスト走行も多くの観衆を集める一大イベントと化している。

一方、長く人気低迷が続いていた「スーパーフォーミュラ」は元F1ドライバーの小林可夢偉の参戦もあり、全体的に注目度が増した1年となった。最終戦(鈴鹿)の決勝日の観衆は16000人で、前年比4000人増と30%以上の観客動員増加に。

スーパーフォーミュラ 前のマシンが小林可夢偉
スーパーフォーミュラ 前のマシンが小林可夢偉

街にモータースポーツが進出

今年は既存のレースイベントだけでなく、8月には六本木で電気自動車レースの「フォーミュラE」のマシンが、11月には大阪・御堂筋でフェラーリF1マシンが公道を使ってのデモ走行をするなど、街中でモータースポーツの魅力を体験できるイベントが増加し、テレビなどでも大きく報道された。

さらに「スーパーフォーミュラ」を主宰する日本レースプロモーションなどが各地のイオンモールでレーシングカーを持ち込んだイベントを積極的に実施。イオンモールはモータースポーツの振興に協力的で、イオンモール木更津に続いて、愛知県にオープンしたイオンモール常滑にもレンタルカートが楽しめるサーキットが新設され、モータースポーツの魅力を味わうチャンスが増えつつある。

かつては山奥にあることが多いサーキットまで足を運ばなければ見れなかったレーシングカーやレースバイクの走行を近年では街中で楽しめるようにもなってきた。既存のファンのためだけでなく、魅力を伝えることで新しいファンを作り出す試みは各メーカーも積極的で、今後さらに増えていくことになるだろう。

期待はずれだったマクラーレン・ホンダ

2015年のモータースポーツで最大の話題といえば「マクラーレン・ホンダ」のF1参戦であった。だが、ご存知の通り、1年目となった2015年の最高位は5位と大いに苦戦。コンストラクターズ(製造者)ランキングも10チーム中9位という低迷ぶりにファンは落胆した。Yahoo!ニュースのコメント欄にも期待していたファンからの辛辣なコメントがどの記事でも見られ、マクラーレン・ホンダの話題はいつもアクセスランキング上位を占めていたように感じる。やはり、それだけ「マクラーレン・ホンダ」という名前のインパクトは大きいということだろう。来季はパワーユニットを刷新し、今年の経験を活かして改善を狙うマクラーレン・ホンダだが、2月に始まるテスト走行の結果が気になるところだ。

マクラーレン・ホンダ
マクラーレン・ホンダ

また、F1全体では今季も「メルセデス」の独走劇が続き、世界的に見てもF1人気がトーンダウンし、マイナスな話題がニュースサイトに踊った1年だった。ファンの興味を惹きつける話題が豊富だった国内4輪レースに比べて、F1はガッカリ感満点のトピックスが目立ったと感じる。ホンダのF1参戦でF1日本グランプリ(鈴鹿)の観客動員数は9000人増の8万1000人となったが、日本人F1ドライバー不在、マクラーレン・ホンダの低迷などで劇的な人気回復とならなかったのは残念なことであった。

今年も地上波F1中継の放送は深夜のダイジェスト番組が放送されただけとなり、報道もほとんどがインターネットの専門ニュースサイトによるものであり、マクラーレン・ホンダが復活してもF1を目にする機会は極端に少なかった。毎戦の地上波テレビ中継が復活しないことには人気回復は難しいだろう。とにもかくにも、来季はマクラーレン・ホンダの真の復活に全てがかかっている。

2輪は人気復活の兆し

一方で、世間一般を巻き込むところまでは至っていないものの、人気復活が顕著だったのは2輪レース。最高峰の世界選手権「MotoGP」では大スターのバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)がチャンピオン争いをリードし、クライマックスを迎える10月に開催された日本GP(ツインリンクもてぎ)の観客動員数は3日間合計で8万5000人を記録(前年は約7万人)するなど劇的な回復となった。

また、夏の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)には元世界王者のケーシー・ストーナーの電撃的な復帰参戦や、ヤマハワークスチームが現役のMotoGPライダーを起用したこともあり、4日間合計で12万人と前年よりも9000人の増加となった。単に動員数の増加だけでなく、高額チケットの売れ行き好調も顕著だったという。

8耐に参戦したケーシー・ストーナー
8耐に参戦したケーシー・ストーナー

バイク人口の減少もあり長く低迷していた2輪レースだが、ロッシのチャンピオン争い、MotoGP人気ライダーの参戦による観客増を見ると、2輪レースファンは正直だなと感じる。4輪レースに比べて選手の技術力の違いが解りやすく、魅力でもある2輪は、スター選手の参戦、活躍により、復活の兆しを見せている。そういう意味では、今後さらなる人気回復のためには日本人選手の活躍も不可欠で、スター性のある選手の育成は急務である。かつての阿部典史(ノリック)、加藤大治郎のような実力ある若手の登場があれば、今年のラグビーのように人気のV字回復も夢ではない。

抜本的な変化が必要

特に国内レースに関しては話題が豊富にあり、モータースポーツに対する社会の理解も相まってトーンが上向きになったと感じた1年だったが、観客動員増は明るい傾向とはいえ、数字上は微増したにすぎない。国内の景気回復によるイベントの増加を考えれば、劇的な上昇とは言えない現状だ。

仮にF1でマクラーレン・ホンダが活躍してくれていたなら、また再びモータースポーツへの関心が高まる可能性があったが、4輪、2輪含めてすぐにブームが来そうな気配は今のところ無い。国内に関しては自動車メーカーの国内販売が低迷しており、景気は回復したものの、プロモーションに対する予算が増えるかどうかは微妙な情勢だ。

だからこそ2016年は大事な1年だ。来年も好景気は続くであろうから、レジャーとしてのサーキット観戦を楽しむファンは増えるだろう。しかし、そこにあぐらをかいていては、既存のファンの興味だけに頼っていてはV字回復の機会を失ってしまうのではないかとさえ感じるのだ。既存のファンも、今年とは違う「変化」を求めている。そう、ワクワクする何かが無ければいけないはずだ。2016年、モータースポーツは真価が問われる正念場を迎えるのではないだろうか。関係者の努力、そして日本のメーカー、チーム、選手の活躍が世間の興味を惹きつける1年になることを切に願う。