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普段のシンガポール市街地F1サーキットを歩いてみた

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
シンガポール市街地サーキット 【写真:PIRELLI】

9月20日(日)に決勝レースを迎えるF1世界選手権・第13戦「シンガポールグランプリ」。大都市の市街地で開催されるナイトレースとして、F1カレンダーの中ですっかり定着したシンガポール市街地コースのレースも今年で8回目となる。キラキラと輝く街の風景とF1の走行シーンは何度見ても美しい光景だ。

しかし、フェンスに囲まれて、さらにナイトレースということもあり、オンボード映像ではシンガポールの町並みは若干わかりづらいもの。今年6月にシンガポールを訪れる機会があったので、コース施設設営前のシンガポール市街地サーキットを1周歩いてみた。

いつでもコース全域を歩いて回れる

シンガポール市街地サーキットはシンガポールを訪れる機会があれば、ぜひウォーキングを楽しんで欲しい。なぜなら、このコースは全域に渡って徒歩で周ることができるからだ。車で周ろうなんて考えはちょっと甘い。マリーナベイエリアの美しい光景をゆっくり楽しみながら歩いてみよう。

まず、スタート地点となるのが観覧車の「シンガポールフライヤー」のすぐ近くにある「F1 Pit Building」という場所。ピットウォール、観客席は無いが、前年のレースのままピットは残されている。スターティンググリッドやお気に入りのドライバーのピットの前で写真を撮るのも良いだろう。

ホームストレート&ピットロード
ホームストレート&ピットロード

スターティンググリッドから歩き始めたら、ピットロードの出口とコースが合流するターン1が現れる。そこから「リパブリック大通り」と交差するターン3部分を左折して南下する。リパブリック大通りは片側2車線の道。進んでいくと観覧車「シンガポールフライヤー」が見えてくる。ここまではあまり大きな道ではない。

テレビ中継でもお馴染みのターン1の光景。普段はとても地味だ。
テレビ中継でもお馴染みのターン1の光景。普段はとても地味だ。

そして「ラッフルズ大通り」に信号を渡って右折する。ラッフルズ大通りにはリッツカールトン、マンダリン・シンガポール、パンパシフィック・シンガポールなど高級ホテルが立ち並ぶ、マリーナ・ベイエリアを代表するメインの道路だ。こんな中心地をF1が走るというのに驚いてしまうかもしれない。パンパシフィックのブリッジ下の光景はオンボード映像でも見たことがある光景だ。

高級ホテルが立ち並ぶラッフルズ大通りのトンネル
高級ホテルが立ち並ぶラッフルズ大通りのトンネル

中心地からベイエリアへ向かう

「ラッフルズ大通り」と「ニコール・ハイウェイ」が交差するところを左折。ここがターン7となる。ハイウェイとは言っても高架ではなく普通の大通りの「ニコール・ハイウェイ」を南下すると「スタムフォード通り」と交差するので、ここを右折。ごく普通の街中のエリアという感じで、ここをF1が走るというのはなかなか想像がつかないかもしれない。ターン9となる「セントアンドリュース通り」で左折して南下する。ターン9からターン10は舗装しなおされていたが、市街地の道だけに蒲鉾型の路面になっていることがよく分かる。

ターン9から10のセントアンドリュース通り
ターン9から10のセントアンドリュース通り

そして、ターン10を市街地の通りに沿って左折すると次はターン11から12のS字上になったコーナー。普段はバスが頻繁に行き来する道路だ。そして、シンガポールGPの印象的な光景の一つである「アンダーソン橋」がやってくる。実に狭い橋であることに驚くだろう。1910年にシンガポール川を渡る橋として作られた鉄橋で風情がある。コースも半分以上来ているので、このブリッジを渡ったところにあるスターバックスに入り、フラペチーノでブレイクも良いかもしれない。

アンダーソン橋。出口側から撮影。
アンダーソン橋。出口側から撮影。

そして、橋を渡ると、さらに海の上を通る橋上の大通りが「エスプラネード・ドライブ」で、ここを左折。右にはマーライオン公園があるので見に行ってみると良いだろう。かなり長いストレートとなるので、暑い日は熱中症に注意。そして、マリーナ・ベイサンズを右に見て進むと「ラッフルズアヴェニュー」と交差するので、ここで右折。

マーライオンとベイサンズの見えるマーライオン公園の景色を楽しもう!
マーライオンとベイサンズの見えるマーライオン公園の景色を楽しもう!

後半区間の海沿いは最高の散歩スポット

下のラッフルズアベニューを進むと、大きなスタンドのような建物が現れるが、これがターン16の目印。右折して進むと海が見えるが左側にはスタンドが、そしてコースと反対側には海に浮かんだサッカーコートが現れる。海風が当たる気持ちいいエリアで、2008年、ネルソン・ピケJr.を故意にクラッシュさせた有名なクラッシュゲート事件が起きた。なるほどクラッシュした箇所にはスタンドがあり、処理するのに時間がかかるポイントであることはうなずける。もう、あんなファンを興ざめさせるクラッシュ事件は起こって欲しくないが。。。

左側がスタンド、右に海の上のサッカーコート。ここでピケJr.がクラッシュした。
左側がスタンド、右に海の上のサッカーコート。ここでピケJr.がクラッシュした。

そして、F1はこのスタジアムの下をくぐり抜ける。そしてスタジアムを抜けて出てくるスポットの普段の光景はF1が走るとは想像できない珍スポットだろう。

F1珍百景の一つ?この建物の下をF1は抜け出てくる。かなり地味な景色だ。
F1珍百景の一つ?この建物の下をF1は抜け出てくる。かなり地味な景色だ。

そしてすぐに右折し、しばらく進むとF1の縁石が見えて来る。これがターン20。再び海側に出て海沿いを歩くと最終コーナーとなるターン22とターン23になり、ホームストレートに戻ってくる。これで1周終了だ。

普段も残るコースの縁石や路面広告の一部
普段も残るコースの縁石や路面広告の一部

シンガポール市街地サーキットは歩いてみると実に面白いレイアウトを持ったコースだというのがよく分かる。F1サーキットとしても面白いコースでありながら観光名所近くもちゃんと通る。年間通じてのシティセールスもしっかりと考えられた設定になっている。観光エリアだけに生活感はほとんどないが、美しい光景を見ながら歩くのは実に気持ち良い。F1開催の時期ではない時にシンガポールを訪れる機会があれば、ぜひ朝の涼しい時間にウォーキングしてみてはいかがだろう?

それにしても、今週末のシンガポールグランプリは煙害の大気汚染が心配である。

最終コーナー
最終コーナー

2015年6月に撮影

シンガポール市街地コース・地図(Google Map)

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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