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あの元F1ドライバーは今!? F1勇退後も現役で活躍するドライバーたち

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
WTCCで優勝した懐かしいドライバー 【写真:WTCC】

ハコ車使いの世界ナンバーワンを決める「WTCC(世界ツーリングカー選手権)」で、懐かしい元F1ドライバーが優勝した。ジャンニ・モルビデリ。90年代に活躍したイタリア人のドライバーで、彼の名前を聞くなんて、いつ以来だろう?というファンも多かったはずだ。

トップを走るジャンニ・モルビデリのシボレー 【写真:WTCC】
トップを走るジャンニ・モルビデリのシボレー 【写真:WTCC】

モルビデリは「ミナルディ」「フットワーク(アロウズ)」「ザウバー」などで活躍した。マイナーなF1ドライバーに見られがちだが、「フェラーリ」でテストドライバーを務め、1戦だけ「フェラーリ」から代役出場したほか、1995年には「アロウズ」で奇跡的な3位表彰台を獲得している。97年以来、F1から遠ざかっており、名前を聞く機会は少なかったが、長年に渡り、ツーリングカーレースに参戦を続けており、2006年にはアルファロメオのドライバーとしてWTCCをフルシーズン戦っていた。

モルビデリはF1サーキットでもあるハンガリーのハンガロリンクサーキットで、WTCC第3戦に出場。プライベーターのシボレー・クルーズを駆り、見事に世界選手権・初優勝を成し遂げた。

優勝したモルビデリ(中央)、左はこちらも元F1のモンテイロ 【写真:WTCC】
優勝したモルビデリ(中央)、左はこちらも元F1のモンテイロ 【写真:WTCC】

まだまだ現役で活躍する元F1ドライバーたち

モータースポーツの最高峰「F1世界選手権」はレーシングドライバーとして誰もが目標にするものだ。念願叶ってF1ドライバーとして走り、引退後は、自国のF1中継の解説者になる者も居れば、ビジネスを展開しながら隠居生活を楽しむ者も居る。世界で限られた数の人しかなることができないF1ドライバーだけに目標を達成した後は悠々自適に暮らすこともできるだろう。

また、日本人の中嶋悟、鈴木亜久里、片山右京、井上隆智穂、高木虎之介などのようにレーシングチームのオーナーや監督となり、国内外のレースで今も競争の世界に関わりを持ち続けるドライバーも居る。

そして、46歳のモルビデリのようにF1を離れた後もまだまだレースを続け、レーシングドライバーとしてスピードの世界に身を置いているドライバーも実は結構多い。

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WTCCでは3人の元F1ドライバーが活躍。さらに以前にもご紹介したが、日本の「スーパーフォーミュラ」では3人の元F1ドライバーが参戦している。

インディカーに参戦中の佐藤琢磨 【写真:Honda】
インディカーに参戦中の佐藤琢磨 【写真:Honda】

そして、F1引退後に元F1ドライバー達が活躍の場を求めるケースが多いのが、アメリカのオープンホイールレース「インディカーシリーズ」。過去の例で言えば、ナイジェル・マンセルがワールドチャンピオン獲得後にインディカー(当時はCART)に参戦し、同シリーズを制覇した。日本人の元F1ドライバーも数多く活躍し、現在では佐藤琢磨が参戦し、昨年ロングビーチのレースで優勝を飾ったことも大きなニュースになった。

その「インディカー」に、今年はF1優勝経験のあるドライバーが2人参戦する。ファン・パブロ・モントーヤジャック・ヴィルヌーブだ。2人とも元F1ドライバーという肩書だけでなく、F1進出前にインディカーでチャンピオンになり、「インディ500」でも優勝しているビッグネーム。F1ワールドチャンピオン経験者のジャック・ヴィルヌーブは「インディ500」にスポット参戦を予定している。ヴィルヌーブはインディカーへの参戦自体が19年ぶり。このようにワールドチャンピオン経験者やF1優勝経験者の中にも、いまだにレースを続ける者も居る。世界的な名声を得てもなお、彼らの情熱は留まるところを知らない。

元F1ドライバーの宝庫、WEC&ルマン

F1のような単座席のレースを戦ってきたレーシングドライバーたちは可能な限り、単座席やスプリントレースで戦い続けたいもの。ただ、フォーミュラカーのレースでF1のスピードに近いレースとなると「インディカー」か「スーパーフォーミュラ」くらいに限定されてしまう。しかも、タイヤが剥き出しのフォーミュラカーレースでは、タイヤとタイヤが接触した時にはマシンが宙を舞う可能性があり、身に降り掛かるリスクも大きい。一方で、GTなどのハコ車やタイヤがカウルに覆われたレーシングスポーツカーの耐久レースはそういうリスクが少なく、ベテランらしいスキルや経験も要求されるので、新たな挑戦として耐久レースに挑戦する例が増えている。

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「ルマン24時間レース」を中心としたWEC(世界耐久選手権)では今年、実に19人の元F1ドライバーが参戦、またはルマンだけにスポット参戦を予定している。ルマンへの出場はまだまだ増えるかもしれない。

最も多く元F1ドライバーを起用しているのが、悲願のルマン24時間総合優勝を狙う「トヨタ」。最新マシンTS040が2台出場するが、6人のドライバーのうち5人がF1出走経験者。実に気合いの入ったラインナップは今年、開幕から2連勝を飾るトヨタの大きな原動力として結果にも表れている。

元F1ドライバーを多く起用するトヨタはスパ6時間でも優勝! 【写真:WEC】
元F1ドライバーを多く起用するトヨタはスパ6時間でも優勝! 【写真:WEC】

また、トヨタとアウディが戦うLMP1-Hクラスには今年からポルシェが参戦。昨年まで「レッドブル」でF1を走っていたマーク・ウェバーが起用されている。開幕から2戦の6時間レースでは元F1ドライバー中心のトヨタが2連勝したが、24時間レースとなるルマンでは「耐久のプロ」が多く起用されたポルシェがどんな戦いを見せるか興味深い。

日本人ドライバーとしては「モナコGP」「インディ500」そして「ルマン24時間」の世界三大レースに出場経験がある中野信治がLMP2クラスにエントリーし、今年も24時間レースを戦う予定だ。これだけ多くの元F1ドライバー達が戦うルマンは長年のF1ファンにも親しみやすいレースになるに違いない。

過去記事:元F1ドライバーが3人も参戦!今年の「スーパーフォーミュラ」はツワモノ揃いで何だかスゴイ!!

【関連リンク】

WTCC(世界ツーリングカー選手権)ドライバーラインナップ

TOYOTA RACING 日本語サイト

インディカー公式サイト ドライバーリスト(英語)

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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